不誠実・低レベルそのもの、9/11高裁棄却判決全文(下記に解説あり)
平成14年9月11日判決言渡・同日原本交付 裁判所書記官
平成14年(行コ)第20号 出席停止処分取消請求控訴事件
(原審・大阪地方裁判所平成13年(行ウ)第29号)
口頭弁論終結の日 平成14年7月26日
判 決
大阪府門真市新橋町12−18−207
控 訴 人 戸 田 久 和大阪府門真市中町1番1号
被 控 訴 人 門 真 市 議 会
上記代表者議長 大 本 郁 夫
上記訴訟代理人弁護士 安 田 孝
同 上 上 野 富 司主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
(一) 原判決を取り消す。
(二) 被控訴人が、平成13年3月26日、控訴人に対してした、同月14日付け懲罰動議にかかる出席停止処分及び同月16日付け懲罰動議にかかる出席停止処分をいずれも取り消す。
(三) 控訴費用は第1、2審とも控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
本件事案の概要は、後記2のとおり当審における控訴人の主張を付加し、1のとおり付加、訂正するほか原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決1頁21行目の「自らに対する」を「被控訴人が控訴人に対してした」と、同23行目を「2 前提となる事実(証拠(甲5の1ないし3、同6の2、甲17、18、同19の1、2、乙1)及び弁論の全趣旨により容易に認定しうる。)」と、同2頁8行目の「3月14日」を「同年3月14日」と、同11行目から12行目にかけての「実際に原告が出席停止となったのは、3月26日」を「控訴人が、本件各処分により実際に門真市議会に出席できなかったのは、同年3月26日」とそれぞれ改める。
2 当審における控訴人の主張
(一) 地方議会は、日本国憲法の議会制民主主義体制の基底を構成するものであって、一般市民法秩序と直接密接な関係にある団体である。また、本件のように、懲罰事由がなくても議会内多数派の意向によって特定議員を審議、議決から思いのままに排除できるとするなら、議会で多数派の意向に反した不正追求や問題指摘が許されないことになる。これは、有権者から付託された行政チェックの任務を阻害し、不正不適切な行政行為を看過することで一般市民社会に損害を与えるばかりでなく、議会では民主主義の法規範が通用せず、多数派に逆らったら懲罰されることを市民に見せつけるものであり、一般市民の法秩序意識に著しい害悪を及ぼすものである。
したがって、本件出席停止処分は、一般市民法秩序と直接の関係を有しない、地方議会の内部的な問題にとどまるものではなく、一般市民法秩序と極めて重大な関係を有するものである。(二) 控訴人は、本件出席停止処分により、年に4回しかない極めて重大な議案を扱う被控訴人の定例議会の議決から排除されたものであるから、同処分の影響は実質的に1日の出席停止の効果を有したにすぎないとはいえず、同処分の効果がいまだ門真市議会内部での議員としての活動に関する部分的な制約にとどまるとはいえない。
(三) 原判決は、出席停止処分は議員の除名処分のような議員の身分自体の喪失に関する重大な事項とは違うとするが、懲罰処分の被害を議員個人の身分と経済利益という狭い範囲でしかとらえておらず、議員の最も重要で根幹的な活動は、議会での質問や意見表明などの言論活動であることを正しく認識していない点で不当である。
第3 争点に対する判断
当裁判所は、控訴人の本件訴えは不適法であると判断するが、その理由は、後記(二)のとおり当審における控訴人の主張に対する判断をし、(一)のとおり付加、訂正するほか、原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」のとおりであるから、これを引用する。
(一) 原判決3頁20行目の「有しない」を「有しないものであって、」と改め、同22行目の「係争は」の次に「裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に当らず、」を付加し、同24行目の「地方議会には」を「地方議会に」と改め、同4頁6行目から7行目にかけての「部分的な」を「一時的な」と、同10行目冒頭の「議員」を「地方議会の議員」と、同行の「議会の自律権」を「地方議会の自律権」とそれぞれ改める。
(二) 控訴人は、当審において、本件各処分の適否は司法審査の対象となる理由をるる主張する。
そこで検討するに、地方議会は、住民自治及び団体自治を内容とする地方自治の本旨(憲法92条)を実現するために設置された意思決定機関であって(同法93条1項)、地方議会に、議員に対する懲罰権(地方自治法134条以下)を含む広範な自律権が認められるのも、憲法上の理念である地方自治の本旨を実現するためであると解される。そうすると、地方議会がその自律権の範囲内で決定した事項については、これをできるかぎり尊重し、当該事項が一般市民法秩序に直接関係する場合でない限り、司法審査の対象にならないと解することが憲法の趣旨に合致するというべきである。しかるに、前記引用にかかる原判決の判断記載のとおり、地方議会の自律件に基づいて行われた本件各処分は、その内容、程度等に鑑みても、いまだ地方議会内部の問題にとどまり、一般市民法秩序に直接関係するものとはいい難い。
したがって、本件各処分の適否は司法審査の対象にならないと解すべきである。この点に関する控訴人の主張は、独自の見解によるものであって採用することができない(なお、控訴人は、原審に審理不尽の違法がある旨主張するが、本件記録によれば、原審において裁判をするのに必要な審理が尽くされたことは明らかである。)。第4 結論
以上から、控訴人の本件訴えは不適法であるから却下すべきである。よって、これと同旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第4民事部
裁判長裁判官 武 田 多 喜 子
裁判官 小 林 秀 和
裁判官 青 沼 潔
〈 高裁判決での「原判決語句修正」部分の解説 〉
青字部分を意味するものは赤字で示した
高裁判決
第2 事案の概要
・・・本件事案の概要は、後記2のとおり当審における控訴人の主張を付加し、1のとおり付加、訂正するほか原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」のとおりであるから、 これを引用する。
◆1 原判決1頁21行目の「自らに対する」を「被控訴人が控訴人に対してした」と、
――これは要するにーーー
<原判決該当部分>
1 本件は、門真市議会の議員である原告が、自らに対する 出席停止処分の取消しを求めるものである。
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<高裁判決での修正>
1 本件は、門真市議会の議員である原告が、被控訴人が控訴人に対してした 出席停止処分の取消しを求めるものである。◆同23行目を「2 前提となる事実(証拠(甲5の1ないし3、同6の2、甲17、18、 同19の1、2、乙1)及び弁論の全趣旨により容易に認定しうる。)」と、
――これは要するにーーー
<原判決該当部分>
2 前提事実(争いのない事実及び証拠等により容易に認定できる事実)
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<高裁判決での修正>
2 前提となる事実(証拠(甲5の1ないし3、同6の2、甲17、18、同19の 1、2、乙1)及び弁論の全趣旨により容易に認定しうる。)◆同2頁8行目の「3月14日」を「同年3月14日」と、同11行目から12行目にかけての 「実際に原告が出席停止となったのは、3月26日」を「控訴人が、本件各処分により実際 に 門真市議会に出席できなかったのは、同年3月26日」とそれぞれ改める。
――これは要するにーーー
<原判決該当部分>
(4) 被告は、同月26日の本会議において、3月14日付け懲罰動議及び3月16日 付け懲罰動議につき、いずれも5日間の出席停止の懲罰を科する旨の処分(以下「本件各
処分」という。)を議決した。
(5) 本件各処分がされた日は前記定例会の会期最終日であり、実際に原告が出席停止となったのは、3月26日の1日限りである。
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<高裁判決での修正>
(4) 被告は、同月26日の本会議において、同年3月14日付け懲罰動議及び3月16日 付け懲罰動議につき、いずれも5日間の出席停止の懲罰を科する旨の処分(以下「本件各 処分」という。)を議決した。
(5) 本件各処分がされた日は前記定例会の会期最終日であり、控訴人が、本件各処分により 実際に門真市議会に出席できなかった原告が出席停止とな ったのは、同年3月26日の 1日限りである。第3 争点に対する判断
当裁判所は、控訴人の本件訴えは不適法であると判断するが、その理由は、後記(二)のとおり当審における控訴人の主張に対する判断をし、(一)のとおり付加、訂正するほか、原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」のとおりであるから、これを引用する。
◆(一) 原判決3頁20行目の「有しない」を「有しないものであって、」と改め、 同22行目の「係争は」の次に「裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に当らず、」を付加し 、 同24行目の「地方議会には」を「地方議会に」と改め、
――これは要するにーーー
<原判決該当部分>
第3 当裁判所の判決
1 争点(1)について
自律的な法規範を有する杜会や団体内部における当該規範の実現行為の適否の判断については、それが一般市民法秩序と直接の関係を有しない当該団体等の内部的な問題にとどまる限り、内部規律の問題として、その団体等の自主的、自律的な解決に委ねるのが適当であり、このよう内部規律に関する係争は裁判所の司法審査の対象とはならないものと解するのが相当である。
現行の地方自治制度においては、地方議会にはその運営等について広範な自律権が認められていることはいうまでもないから(地方自治法120条、134条)、
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<高裁判決での修正>
第3 当裁判所の判断
1 争点(1) について
自律的な法規範を有する杜会や団体内部における当該規範の実現行為の適否の判断については、、それが一般市民法秩序と直接の関係を有しないものであって、当該団体等の内部的な問題にとどまる限り、内部規律の問題として、その団体等の自主的、自律的な解決に委ねるのが適当であり、このよう内部規律に関する係争は裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に当らず、裁判所の司法審査の対象とはならないものと解するのが相当である。
現行の地方自治制度においては、地方議会にその運営等について広範な自律権が認められていることはいうまでもないから(地方自治法120条、134条)、◆同4頁6行目から7行目にかけての「部分的な」を「一時的な」と、同10行目冒頭の「議員」を「地方議会の議員」と、同行の「議会の自律権」を「地方議会の自律権」とそれぞれ改める。
――これは要するにーーー
<原判決該当部分>
本件各処分は、原告に対して実質的に1日の出席停止の効果を有したにすぎないのであって、そのために原告が予算案等の議決に参加することができなかったとしても、その効果はいまだ市議会内部での議員としての活動に関する部分的な制約にとどまり、一般市民法秩序に直接関係するものとはいえない。
したがって、本件各処分の適否は、司法審査の対象にならないと解すべきである。
議員に対する懲罰権の行使は、議会の自律権に基づくものであり、議員の自由な議論や正当な議員活動の妨害のために濫用してはならないことは当然であるが、・・・
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<高裁判決での修正>
本件各処分は、原告に対して実質的に1日の出席停止の効果を有したにすぎないのであって、そのために原告が予算案等の議決に参加することができなかったとしても、その効果はいまだ市議会内部での議員としての活動に関する一時的な制約にとどまり、一般市民法秩序に直接関係するものとはいえない。
したがって、本件各処分の適否は、司法審査の対象にならないと解すべきである。
地方議員に対する懲罰権の行使は、地方議会の自律権に基づくものであり、議員の自由な議論や正当な議員活動の妨害のために濫用してはならないことは当然であるが、・・・・・