第2;門真市議会の非常識体質がまた露見した「伏せ字議事録情報公開」6/28降参事件

1;地方議会で起こった問題を考えるのに、「仮にも選良として一定レベルの良識や知識のある議員達で構成されているのだし、自治法や議会運営諸法規に精通した公務員たる議会事務局がいるのだから・・・」、というふうに考えるのはある意味では当然であるが、こと門真市議会に関しては、議員の圧倒的多数のみならず議会事務局までもが、最低限の良識や法規範意識を有していないのが現実の姿である。
 それはこれまでも十分に論証してきたところだが、今また新たにそれを示す格好の事態が発生したので、ここに紹介して裁判官諸氏のご注目を求めたいと考える。

2;本件懲罰事件に関わる本会議議事録が伏せ字だらけで公開されて、伏せ字部分の公開を議会が拒否した事件については、本件1審訴訟で「文書提出命令の申立書」を控訴人が出したことで、裁判所からの提出命令を恐れた議会側が「自発的に」裁判所と控訴人に提出したが、控訴人および一般市民から2001年7月に起こされた情報公開請求に対しては公開を拒んだため、同年9月に不服申し立てがなされて「情報公開審査会」で審理がなされていた。
 (甲第24号証、甲第60号証、甲第61号証、甲第62号証、甲第63号証)
 この不服申し立てはしかし、9ヶ月経っても答申が出されずメドも示されないため、控訴人が今年の6月定例議会の6月20日本会議一般質問で、<9ヶ月過ぎても答えの見えない情報公開審査会について>と題して市への追及を行なった。(甲第75号証@A)
 市から明確なメドを示す答弁はなされなかったものの(甲第75号証A)、大本議長は6月議会終了後に突然、「6月24日開示決定」を行ない、6月28日に「6/28見解文書」を添えて開示を行なった。(甲第77号証@AB)

3;これは状況からして明らかに、もうすぐ情報公開審査会で議長側敗北の答申が出されること必至と議長側が読みとって、その前に公開してしまうことで自分たちの非を公開されることなく、裁判に訴えられることもなく(公開されたら「裁判の訴えの利益」がなくなるため)事態を終わらせてしまおうという戦術であった。
 控訴人が「議長側必敗」となぜ断言できるかと言えば、議長側の主張が余りに非常識でとうてい審議会で容認されるはずのないものだったからである。
 すなわち、当時の冨山議長による「伏字議事録問題」10/12弁明書(甲第62号証)では、議長が単に「後刻速記を調査の上、必要により措置することにいたします」と発言したことが「発言取り消し命令を意味するのだ」というおどろくべきデタラメな主張をしているのであって、議長が「必要により措置します」と一言言えば議会終了後に自由自在  に議事録から発言削除してよいということであり、これでは多数派の思うがままに議事録が改竄されてしまい、議会審議の真実が闇に葬り去れらることになってしまう。
 「議会公開の大原則」も何もあったものではなく、情報公開の審査会委員の方々も「存在しない命令が発動された」と言われてさぞとまどったことだろう。こういう主張が審議会で認められようはずがないことは明白であった。

4;しかし問題なのは、こういう非常識な主張を4会派の議長がしただけでなく、議会事務局の役人達もこれを推進し、彼ら側の弁護士にも相談の上でこのような非常識な主張が平然となされている、という門真市議会の特異な状況である。
 だからこそ、今回控訴人に白旗を揚げて降参するも同然の公開決定をなしたとはいえ、「6/28議長見解文書」(甲第77号証B)の中で、「あえて情報公開制度を利用して公開を迫るというためにする請求であり・・、」という驚くべき悪罵を投げつけているのである。
 いったいどこの世界に、公開請求に対して「それはタメにする請求だ」と非難するような公機関があるだろうか? 世論を憤慨させた防衛庁ですら行なわない暴言である。
 さらに言えば同じ公開請求を一般市民もしているのだが(甲第77号証A)、その方に対しては「6/28議長見解文書」を出しておらず、当然「タメにする請求だ」と非難することもしていない。ということは、同じ公開請求をしたのに、控訴人に対してだけ「タメにする請求だ」と差別して非難したわけであり、この点でも公機関として許し難いことである。
 また、見解文中で「今日時点で・・不開示とする必要がないと判断した」として上げている全ての理由、すなわち、  「すでに貴殿の独断により貴殿のホームページ上で公表されている事」、「大阪地方裁判所へ議事録原本を提出した事」、「さらに議員である貴殿に対しては開示する旨伝えた事」は冨山議長の10/12弁明書(甲第62号証)提出時にはとっくにクリアされていることであり、また「10/12弁明書」での不開示主張は控訴人の「11/9反論文書」(甲第63号証)で完膚無きまでに論破されているのだから、今年6月末まで8ヶ月以上も不開示を延長させる何の理由もなかったことを逆に浮き彫りにするものに過ぎない。

 この悔しさまぎれに非常識とデタラメを書き連ねた「6/28議長見解」もまた、議長ら議員と中立たるべき議会事務局および法律の専門家たる議会側弁護士の合意の作として作成されたものである。
 彼らが控訴人に対して行なったことは、万引きを咎められた時に、「カネを払ったらええやろ」と居直るも同然のことであり、「審議会で不服申し立て審議中は裁判提訴ができない」ことを悪用して、通るはずもない非常識な不開示理由をでっち上げて開示を引き延ばし、審議会答申が出そうになると控訴人に謝罪するどころか、悪罵を投げつけなが ら公開しつつ、デタラメな理由を付けて責任逃れをすることだった。
 こういう悪質な非常識体質を今なお持って反省していないのが門真市議会の4会派であり、議会事務局の官僚達であり、彼らの側の弁護士であることを裁判官諸氏には十二分に踏まえて事実審理を願う次第であります。
 なお、議員に多少問題があっても議会事務局は毅然としてしっかりしている議会もあるが、門真市の場合2000年3月6日の出来事に見られるように、大本議員(当時議運委員長)に議会事務局長が職員や議員が見ている前で「アホンダラッ!、ボケッ!、なにしとんねん!、ちゃんと決めた通りにやらんかっ!」、と怒鳴りつけられても何にも言えない(1審第1準備書面8ページ中段F、甲第33号証《疎明資料リスト2で漏れてい  ましたが資料自体は甲33号証として提出済み、)ほど、古参議員が絶対的に強い立場を持って局長以下を従える体制にあることも付記しておくものである。

5:現代の日本社会に於いて、最も司法の光が当たらないのが地方議会であるという現実は、地方議会での多数派が最低限の良識を有していない場合、やりたい放題で誰からも咎められない、という現実を派生させることに直結し、門真市議会の事例のように他の公機関ではおよそ考えられないようなことが発生することになる。
 そういう異常事態を是正することができるのは、長い目で見れば有権者の批判的判断力であるが、直接的現実的な被害救済や是正の力としては、議会外部からの法的判断を措いて他にない。そしてまた議会内の非常識な多数派議員や官僚が最も脅威を感じ、自らの姿勢を改善しなければならないと感じるのもまた、議会外部からの法的判断なのである。
 なぜならば、彼らは「議会の内部のことは外部から法的な光を当てられない」ことを唯一の頼みとして、住民に対しても議会内少数派に対しても、自分達が権威あるかのように振る舞うことができているのであって、議会外の別の権威から法的光を当てられたらそれに太刀打ちすることなどとうてい出来ない内実しかないことを、実は意識してるからである。
 「議会外の法的権威」の最たるものは裁判所であるが、それのみならず弁護士会もそうであるし、まっとうな学識経験者や法律家によって構成された審議会などもそのひとつである。

  今回の大阪弁護士会からの改善要望も、議会内部での不誠実な対応とは別に、実際には門真市議会に強烈な衝撃を与えたことは間違いなく、2度と同じようなことはしなくなるだろうし、情報不開示への不服申し立てを審議して答申を出す「情報公開審査会」にも法的権威を感じているからこそ、4会派に不利な答申が出される前に情報公開してしまう、という是正行動を取ったのである。
 そして弁護士会や審議会が非常識な議会勢力に対して脅威となるのは、それらの背後に裁判所が見えているからに他ならない。弁護士会や審議会をステップにして裁判所に持ち込まれて自分たちの非行と非常識を司法審査されたら大変だ、と彼らが思うからこそ、不十分ながらでも彼らの行動が改められるのである。
 もしこれが、議会の決定と名が付くものは人権侵害であろうが情報公開であろうが、一切裁判所では取り扱わない、とされたらこういう効果は生まれないだろう。
 そしてまた、冤罪懲罰の被害議員が処分の取り消しを求めていけるのは、弁護士会でもあれこれの審議会でもなく、この日本社会でただひとつ、裁判所を措いて他にはない。
 控訴人が裁判官諸氏に本件の司法審査を求めてやまない理由がここにある。