第1;大阪弁護士会が門真市議会を公式文書で厳しく批判した7/4事態でも浮かんだ本件懲罰の不当性

1;本件の根本たる3月14日付懲罰動議は、2001年3月議会での控訴人質問に関して、

 (1)市の幹部職員の業務実態を批判したことをもって「職員に対する人権侵害と誹謗中傷した」と決めつけ、
 (2)2001年12月の控訴人に対する不当捜索事件を議会で悪用して2001年2月1日発行の議会だよりに「家宅捜索を受けた市議は戸田久和議員」という人権侵害記事を載せて全戸配布した経過を取り上げて批判したことをもって、「議会の品位を汚し、その権威を失墜させた」と決めつけたこと、
 の2つの懲罰理由によって構成されている。

 これが全く不当であることは既に控訴人が十分に論証してきたところであるが、このうちの(2)の「議会だより事件」(甲第11号証@〜K、甲第35号証など参照)について、去る7月4日に大阪弁護士会の副会長及び人権擁護委員会委員長が門真市議会を訪れて、公式文書を門真市議会大本郁夫議長あてに提出し、控訴人の主張と同様に2000年12月議会での大本議長の議会運営と2001年2月の議会だよりの記述について厳しく批判するという特筆すべき事態が起こったことを、この事件を審理する裁判官諸氏にはぜひ重く受け止めて、精査していただきたい。

 この公式文書が、今回疎明資料甲第73号証@として今回提出した「2002年(平成14年)7月4日付けの、大阪弁護士会からの要望書」であるが、この事態は同弁護士会が同日司法記者クラブで記者会見まで行なって発表するだけの重みを持ち、翌7月3日の朝刊5紙(朝日・毎日・読売・産経・日経)にかなりのスペースで報道されるほどだった。
 (新聞各紙の報道は甲第73号証A参照)

2;この要望書は、控訴人が2001(平成13)年3月に同弁護士会の人権擁護委員会に人権救済を訴えたことを慎重に調査・審理した上での結論として出されたものであるが、全国3270の自治体議会の中で弁護士会から人権侵害問題で改善を要望されるような事例は滅多にあるものではない。ほとんど希有と言ってよいであろう。これを見ても門真市議会がいかに異常な状態にあるかが分かるはずである。
 以下に同要望書での問題指摘を抜粋引用するが、これを見れば控訴人が議会質問で指摘したことが全く事実に即した正当なことであって何ら懲罰されるいわれがなく、従って控訴人が懲罰事由がないのに懲罰を受けたことが一層明らかになるものである。
                    (以下に抜粋引用。太字下線は控訴人による) 


門真市議会議長  大本郁夫 殿

大阪弁護士会 会長 佐伯照道

  7/4要望書 要望の趣旨

 門真市議会におかれ、「議会だより」やホームページの「市議会−議会だより」欄に、情報を掲載するにあったっては、市民はもとより市議会議員その他の公人に関するものであっても、情報を断片的に提供したり、伝えるべきことを伝えないというようなことをされれば、読者が誤解し、不当な予断・偏見を抱く可能性があるということを十分に自覚され、人の名誉を不当に毀損することがないよう、また、本人のコメント等もあわせて掲載するなどして、市民が正確な事実にもとづいて的確な判断ができるよう、事実の内容・表現等に細心の注意を払われるよう要望します。

  要望の理由 3 配布及び掲載の経緯

  ・・・・その後、申告人は、家宅捜索が違法である旨を主張して、抗議文を作成するとともに、自らが開設するホームページにも抗議文を掲載しました。
 また、申告人方からの押収物はすべて還付され、その経緯についても、申告人のホームページ上に詳細に掲載しました。
 このホームページの掲載内容については、本件記事を掲載および配布する以前に、当時の市議会議長である大本氏もこれを閲覧して知っていました。
 同年12月20日の議会では、申告人方の家宅捜索の事実のみが確認され、申告人が家宅捜索は不当であることや押収物は還付されていることを発言しようとしましたが、申告人の発言は途中で遮られました。

  2 本件記事掲載についての違法性を阻却する事由があるかについて

  (2) しかし、次の諸点について慎重な考慮がなされるべきです。
 本件記事が実際に配布されたのは、その後2ヶ月も経った2001年2月1日であって、その時点においては、単に申告人が捜索差押を受けたという事実だけでなく、捜査機関がそれ以後申告人を捜査対象としておらず、差押された物が返還されたこと、申告人自身も事件には無関係であることを強く弁明していたなどの事実も出揃っていました。そのような状況下においては、本件記事をもってしては、市民に必要な情報を知らせたとはとうていいえず、むしろ、捜索後の事実経緯、特に本人のコメントをも紹介した記事にこそ公共性が認められるといわなければなりません。   ・・・本件記事掲載時点における本件記事の内容に公共性があるといえるかは疑問なしとしません。

  イ) さらに問題は、本件記事に公益を図る目的があったか否かという点にあります。
  ・・・大本氏が自認している事実についての認識から推すと、大本氏において、申告人が捜索差押を受けたという事実の指摘をしたうえ、故意に申告人の言い分を無視し掲載しないという、いわば消極的手法により、逆に申告人が事件と強い関わりがあるかのように印象付けようとしたとの疑いがぬぐえません。申告人が犯罪に関わったという印象を強く読者に与える結果になることを予期していたと認められます。・・
 本件のように、単に事実を事実として指摘するだけであっても、申告人が事件とかかわっていたことを一方的に断定してしまうおそれがある「捜索を受けたのは戸田議員」という表現方法は不適切であり、違法である可能性も否定できません。


3;門真市議会議長は、本件懲罰事件当時が大本郁夫議員、翌年度の冨山悦昌議員を経て、また今年度に大本議員となっている。(毎年5月臨時議会で改選するのが慣行)
 議会だより事件および本件懲罰事件当時にも議長だった大本郁夫現議長は、この弁護士会からの問題点指摘に何ら反論することもできず、「今後の参考としたい」とコメントするのが精一杯であり、大本議長および4会派側に非があったことを認めたも同然である。

4;しかし、そうでありながら、弁護士会から問題指摘と改善要望書を出されて新聞各紙で大きく報道され、門真市内外の人々を驚かせるという、議会としての不祥事にも拘わらず、大本議長はこの件について議会会派・議員に報告することも、事態把握に不可欠な資料としての「要望書」を配布することすらせず、会合を開くこともせずに時間が過ぎるに任せるという、不見識で異常な態度を本日段階までとり続けている。
 控訴人はこの対応を批判して、7月8日(月)に議長に対して「全会派・議員への要望書配布と事情説明、並びに全員協議会開催を求める申し入れ」を行ない、12日(金)夕刻までの文書回答を求めたが、議長からは未だに何の返答もない。(甲第73号証B)
 もちろん訴えの当事者である控訴人に対する陳謝も説明も何もない、という非礼さである。

 こういう無対応さは、今年2月の茨木市議会での「日の丸問題大量懲罰事件」(甲第74号証@〜H)に関して、3月に茨木市議会から門真市議会に対して「うちの議会での懲罰決定に戸田が抗議してきたのはけしからんから、今後、このようなことがないように、門真市議会でしかるべき対応を取れ」という、他議会へのとんでもない言論封殺行 動要請文(甲第74号証E)が来た時に、ホイホイと3/26議運で取り上げて、控訴人の話を全く聞こうともせずに4会派多数決で控訴人に「厳重注意」をすることを議決し、議長名で「厳重注意」を行ない、それを後日議会だよりに仰々しく掲載して全戸配布した(甲第74号証GH)ことに比べると、明らかにバランスを欠いている。
 この「茨木市議会からの申し入れ」が両市の与党会派間で連携して作成されたらしいことは、控訴人は茨木市の野党議員から報告を受けており、ある意味では門真市議会4会派の策謀色が濃厚であるが、それを措くとしても要するにこれは、控訴人への攻撃のためならば「他団体からこんな申し入れが来ている」と大騒ぎして処分を下すくせに、控訴人に有利で4会派に都合の悪いことならば、どんなにまっとうな事でも、社会的事件になっても無視をして、議会として協議しない、情報伝達すらしない、という恣意的な運営が4会派によって行なわれている門真市議会の実態を雄弁に示しているのである。

 本件懲罰事件が、そのような恣意的運営がされている門真市議会においてなされたものであること、懲罰事由がないのに懲罰された冤罪事件であることに裁判官諸氏がぜひ目を向けられ、事実審理を行なわれることをあらためて切望するものであります。