第6;出席停止懲罰の損害は過小評価すべきでない

1;(1)控訴人が「準備書面(1)」で詳細に論じたように、控訴人は(1999年9月議会出席停止懲罰に続いてまたしても)「年に4回しかない定例議会の議決から排除された」のであり、「806億円もの規模の新年度予算案を始めとした29本の議案の審議・議決から排除された」のである。

 これは「正当に選挙された代表」たる控訴人が、有権者ら門真市民の「1年の計」はもちろん将来にも渡る住民生活の方向へも重大な影響を及ぼす多数の議案の審議・議決から不当に排除された大事件であり、議員たる控訴人の権能権限の蹂躙かつ有権者市民の選挙による付託の蹂躙であって、その影響を「実質的に1日の出席停止の効果を有したにすぎない」とか、「その効果はいまだ市議会内部での議員としての活動に関する部分的な制約にとどまる」、とした原判決の認定は全く誤っている。

(2)本件懲罰は「部長課長の名前を肩書きを示して不適切な行政行為を議会で指摘することが『職員の人権侵害・誹謗中傷』であって懲罰処分に該当する」という多数派の暴論に基づくものであり、議会での行政責任追求を迫害し、以て不適正な行政の改善を阻害して、その結果、市民社会に大きな損害を与える途を開くものである。
 原判決は、本件冤罪不当懲罰の放置が門真市の行財政と一般社会に与える害毒を全く認識していない点で誤っている。

(3)「出席停止処分は議員の除名処分のような議員の身分自体の喪失に関する重大な事項と違う」という原判決の判断は、懲罰処分の被害を議員個人の身分と経済利益という狭い範囲でしか捉えない過ちをおかしている。
 冤罪不当懲罰による名誉の毀損ということは措くとしても、原判決では「議員の最も重要で根幹的な活動は議会での質問や意見表明などの言論活動である」ということが正しく認識されていないと言わざるを得ない。だからこそ「議員の身分は保持されて報酬ももらえるのだから、出席停止にされても重大な問題ではない」という判断を行なうのである。

  門真市議会で最も活発に質問している議員である控訴人の質問内容を懲罰対象と決めつけた4会派22議員は、うち11人が2000年度本会議で1回も質問せず、さらに6人は2年連続質問せずであり、残りの議員にしても質問頻度は控訴人と比べて雲泥の差があるが、「議員活動の根幹」と市民に対する責任の重大性を認識していない点では、原判決はこれら4会派議員と通底する過ちを犯している。

2;被控訴人が3月議会最終日にあえて「出席停止5日間懲罰」を2つも重ねて「合計10日の出席停止懲罰」を発動しつつ、後になって「実質的に1日の出席停止」(=だから一時的な制限に過ぎない)と言いなす居直りについて、解明しておきたい。

  残り1日しか議会期日がないのに、実効的には意味のない「合計10日の出席停止懲罰」を科すのは、「議会の権威」を声高に叫ぶ与党4会派議員自身が、実は「議会の権威」をまじめに考えていない証左であると同時に、控訴人に対して「この次は除名懲罰だぞ」という強烈な威嚇と政治的意思表示を行なったものである。
 なぜならば、「除名懲罰」のすぐ手前の「出席停止懲罰」において、その最高限度が5日間であり、それを同一議会で同一議員に対して2つも重ねるというのは日本の議会史上例のない、まさに「究極の出席停止懲罰」にして、「除名懲罰に限りなく近い」処分であり、「除名相当なくらい悪いことをした議員」として控訴人にレッテルを貼りつつ「次は除名しかない」という雰囲気を広げるための政治的デモンストレーションだからである。

 まさに彼らの行為そのものが、本件懲罰が「比較的に一時的な制限」などではなく、「実質的に除名に等しい」ものとして行なわれたことを示しているのであって、訴訟を起こされたとたんに「実際には1日だけの出席停止に過ぎない」としてその重大性を隠ぺいしようと謀るなどは、与党4会派議員の不誠実さを示すと共に、「議会の権威」を自分達  の都合で弄んで市民の眼を欺いていること、議会に出席して質疑質問議決することの重大性を認識していないことを如実に明らかしたのである。
 この点を理解できず、被控訴人に同調してしまっている原判決の認識は誠に嘆かわしいことと言わねばならない。