第5;「一般市民法秩序と直接の関係を有しない団体の内部的な問題」とはとんでもない誤り

1;原判決が、本件懲罰処分を「一般市民法秩序と直接の関係を有しない当該団体等の内部的な問題にとどまる」と認定したことは、以下の点から全く誤りである。

(1)選挙で選出され、公金で運営される公機関たる地方議会が「一般市民法秩序と直接の関係を有しない当該団体等」に全く該当しないのは自明の理である。
 それどころか住民の直接選挙によって選出されて、首長が率いる行政機構のチェックを委ねられ、地方行政と住民生活のありようを決定する予算や条例規則を審議・議決する地方議会は、日本国憲法の議会制民主主義体制の基底を構成するものであって、「地方自治は民主主義の学校」と言われるほどに一般市民法秩序と直接密接に関係を有する団体である。

(2)昨今の報道を見るまでもなく、官僚や首長・議員の不正行為が後を絶たない現実社会にあって、本件のように懲罰事由がなくても議会内多数派の意向によって特定議員を議会の審議・議決から思いのままに排除できるということは、議会で多数派の意向に反した不正追及や問題指摘が許されないことになる。

 これは有権者から付託された行政チェックの任務を阻害し、不正不適切な行政行為を看過することで一般市民社会に損害を与えるとともに、本来なら公機関では最も法秩序が遵守されるべきであるにも拘わらず、「議会では民主主義の法規範が通用せず多数派に逆らったら懲罰される」ことを市民に見せつけるものであり、一般市民の法秩序意識に著しい害悪を及ぼすものである。
 従って、本件出席停止懲罰処分は「(地方議会の)一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる」ものでもなく、逆に極めて重大な関係を有するものである。