2;岩佐英夫主任弁護士から

  曾我事件最高裁判決について想う

 やっと上告理由書を提出し、サァー、これから更に発展させた準備書面を出してやるぞ、と皆で準備にかかり資料取寄せにかかった途端に、わずか数行の「上告棄却」の冷たい決定。40年以上も昔の大法廷判決にしがみつき、この間の時代の大きな変化に応えようという姿勢をひとかけらも見せない今の裁判所の頑迷さに改めて大きな怒りを覚え、司法改革の必要性を痛感します。

 曾我さんに初めて出合った南加茂台自治会での法律相談をつい昨日のことのように想い出します。困難を百も承知で敢然と挑む曾我さんの心意気に打たれ訴訟を引き受けました。
 高裁以降、弁護団も強力なお二人に加わっていただき、皆川教授にも本当に熱心にアドバイスしていただき、これからと張り切っていただけに、実に残念です。

 しかしながら、曾我事件の取組みは、地方議員の懲罰問題を日本の民主主義の重要なひとつの課題として問題提起する貴重な成果を生んだと思います。京都地裁では京都大学芝池教授の意見書、大阪高裁での松坂大学皆川教授の意見書、国学院大学の前田教授の意見書を採用させました。さらに大阪高等裁判所で控訴人本人尋問を採用させたことは、一切中味に入らずに門前払いの判決を出す裁判所も多い中で一定の前進であったと思います

。  内容的にも、大阪高裁判決は大法廷判決を前提としつつ、議会は「結社の自由」を根拠としては司法権の限界を根拠づけはできないとし、また、懲罰権の濫用の主張にはもっともなところがあるとして、私たちの主張をほんのわずかながら認めています。
 これは、議会の実態を知らない裁判所の限界を示しながらも、私たちの主張の正しさを認めざるを得なかったといえましょう。歴史の前進はこうした粘り強い努力によってしか 実現できないのだなと実感します。

 これを支えた地元の皆さん、全国各地で同様の問題を抱え、議会の中に当り前の民主主義を実現するために奮闘しておられる多くの議員さんが支援の輪を広げてくださったことは、今後の議会改革の前進のために貴重な財産となったと思います。あとに続く皆さんが、曾我さんの闘いの成果をさらに大きく前進させてくださることを期待したいと思います。