平成14年2月21日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官 星川純一

平成13年 (行ウ)第29号 出席停止処分取消請求事件

(平成14年1月10日・口頭弁論終結)

判         決

                              大阪府門真市新橋町12-18-207          
原      告         戸 田 久 和
                              大阪府門真市中町1番1号              
被       告          門 真 市 議 会
同代表者議長          冨 山  悦 昌
同訴訟代理人弁護士      安 田    孝
同                 上 野 富 司

主         文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

  被告が、平成13年3月26日、原告に対してした同年3月14日付け懲罰動議に係る出席停止処分、同年3月16日付け懲罰動議に係る出席停止処分をいずれも取り消す。

第2 事案の概要

 1  本件は、門真市議会の議員である原告が、自らに対する出席停止処分の取消しを求めるものである。

  2  前提事実(争いのない事実及び証拠等により容易に認定できる事実)
  (1)  原告は、平成11年4月25日に行われた門真市議会議員選挙で当選し、現在まで門真市議会議員の地位にある。
  (2)  原告は、平成13年3月14日、門真市議会平成13年第1回定例会の本会議において一般質問をしたところ、同日、原告が議会及び職員を誹謗、中傷し、議会の品位を汚し、その権威を失墜するような発言をしたとして、懲罰動議が提出された。
  (3)  原告は、同月16日、上記懲罰動議に対する弁明をしたところ、同日、原告がこの弁明において更に議会を誹謗、中傷し、冒とくする発言をしたとして、懲罰動議が提出された。
  (4)  被告は、同月26日の本会議において、3月14日付け懲罰動議及び3月16日付け懲罰動議につき、いずれも5日間の出席停止の懲罰を科する旨の処分(以下「本件各処分」という。)を議決した。
  (5)  本件各処分がされた日は前記定例会の会期最終日であり、実際に原告が出席停止となったのは、3月26日の1日限りである。

  3  争点及び当事者の主張
  (1)  本件訴えの適法性
     (被告の主張)
     地方議会は、自律性を有する自治的団体であり、地方自治法上、会議体としての規律と品位を維持するため、その構成員である議員に対して懲罰を行う権能を有している。本件各処分は、この地方議会の有する自律権の発動として行われたものであり、2つの出席停止処分を内容とするものであるから、出席停止期間が合計10日間となるが、現実には、議会の残日数が1日しかなかったので、実質的に原告に出席停止の効力を及ぼしたのは議会最終日の1日だけであった。このように比較的に一時的な制限にすぎない権利の停止については、自治的団体の内部規律の問題として、被告の自律的判断が尊重され、司法審査の対象とならないと解すべきである。
     (原告の主張)
 本件各処分は、正当な自律権の発動とはいえない。1日の出席停止でも、市の予算案審議可決という最も重大な議案を含む合計30もの案件を議決する前記定例会最終本会議の場から排除され、議員の職責が果たせなかった。
  議会の自律権としての懲罰権の行使に何らの制約もないとすれば、懲罰権の行使は多数決により行使することが可能であることから、議会内多数派は、少数派議員に対し、多数派の解釈を押し付けることも可能であり、一般市民法秩序以上の制約を少数派議員に課すことになってしまう。その結果、本来自由闊達な議論を保障するために認められた議会の自律権が、逆に自由な議論を妨げる結果となってしまう。このような、本来法の意図しないような結果が招来された場合において、自浄作用が期待できない場合には、司法審査による矯正の道が保障されていなくてはならない。
  (2)  本件各処分の違法性
     (原告の主張)
 本件各処分は、原告が議会や職員を誹謗、中傷し、議会の品位を汚し、その権威を失墜するような発言、議会を冒とくする発言をしたことを理由とするが、原告の発言はそのように評価されるものではなく、懲罰事由が存在しない。

第3  当裁判所の判断

  1  争点(1)について
 自律的な法規範を有する杜会や団体内部における当該規範の実現行為の適否の判断については、それが一般市民法秩序と直接の関係を有しない当該団体等の内部的な問題にとどまる限り、内部規律の問題として、その団体等の自主的、自律的な解決に委ねるのが適当であり、このよう内部規律に関する係争は裁判所の司法審査の対象とはならないものと解するのが相当である。
 現行の地方自治制度においては、地方議会にはその運営等について広範な自律権が認められていることはいうまでもないから(地方自治法120条、134条)、その内部における権限行使の適否に関する問題については、議員の除名処分のような議員の身分自体の喪失に関する重大な事項は別として、原則として当該地方議会の自主的、自律的な措置に委ねるべきであると解される(最高裁昭和35年10月19日大法廷判決・民集14巻12号2633頁参照)。
 本件各処分は、原告に対して実質的に1日の出席停止の効果を有したにすぎないのであって、そのために原告が予算案等の議決に参加することができなかったとしても、その効果はいまだ市議会内部での議員としての活動に関する部分的な制約にとどまり、一般市民法秩序に直接関係するものとはいえない。
 したがって、本件各処分の適否は、司法審査の対象にならないと解すべきで ある。
 議員に対する懲罰権の行使は、議会の自律権に基づくものであり、議員の自由な議論や正当な議員活動の妨害のために濫用してはならないことは当然であるが、懲罰権の行使の適正は、個々の議員の良識ある行動及び議員選挙権を有する市民の議会に対する監視によって保障されるべきものである。

  2  以上によれば、本件訴えは不適法であるから、これを却下することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

          大阪地方裁判所第7民事部

                裁判長裁判官   山 下 郁 夫

                     裁判官   青 木   亮

                     裁判官   畑   佳 秀

(注;下線は戸田)

 

 

 

 

2/21、判決言い渡しはわずか5秒で終わった。「主文、原告の訴えを棄却する。訴訟費用は原告負担とする」・・・たったこれだけで、もう次に事件の判決に移行。
 1/10結審で予測した通りの進展だったが、判決内容はさらに最低の内容だった。

曰く、「一般市民社会秩序と直接関係しない当該団体の内部的問題は、その団体の自律的解決に委ねるのが適当であり、司法審査の対象とならない」、「(1960年最高裁判決通り)除名処分以外は当該議会の自律的措置に委ねるべき」、「本件処分は実質1日の出席停止だから予算案等の議決に参加できなかったとしても部分的制約にとどまり、一般市民社会秩序と直接関係するものでない」・・・、あれだけの証拠資料を出し、圧倒的な論証書面を提出したにも拘わらず、およそそれをまともに読んだとはとても思えず、戸田の主張を覆す何らの論拠も出さないままの空理空論で42年前の最高裁判決の愚論をなぞっただけの代物だった。

  「懲罰権の行使は、・・・正当な議員活動の妨害のために濫用してはならないことは当然であるが、行使の適正は、ここの議員の良識ある行動及び議員選挙権を有する市民の議会に関する監視によって保障されるべきものである」、というが、現に門真の4 会派議員に「良識ある行動」が期待できないからこそ懲罰濫用事件が起こっているの であり、「情報公開議員への懲罰濫用」を容認しておいて「市民の議会に関する監視」が選挙で反映されるはず、というのも詭弁でしかない。

 

 

 

■不当懲罰放任の却下判決弾劾!
記者会見で最高裁まで闘う決意を表明■

●さすがは6月・8月・11月・1月のたった4回の法廷で結審させて実質的な事実審理ゼロ、証人申請を全く認めず本人尋問すら拒否し、被告への答弁要求も採用しなかっただけあって、最低最悪の手抜き判決だったが、これで裁判を終えるわけではない。最高裁へ一歩近づいたということであり、これほどの事実経過無視・社会常識無視・議員の行政チェック権能と有権者の参政権無視の無内容判決は、高裁闘争の有利な条件ですらありうると捉えるものである。

掲載新聞記事はこちら

2001年3月議会不当懲罰事件の全貌及び懲罰取り消し裁判一審全資料

 

 

 

               

 控  訴  状                       

 2002(平成14)年 3月1日

大阪高等裁判所 御中

              控訴人         戸  田  久  和

〒571ー0048
      (送達先)大阪府門真市新橋町12−18−207

           控訴人(原 告)       戸  田  久  和

〒571−0055
       大阪府門真市中町1番1号
      被控訴人(被控訴人)      門  真  市  議  会
        代表者議長          富  山  悦  昌

  出席停止処分取消請求控訴事件
訴訟物の価格  金 950000    円
貼用印紙額   金  6500    円
 上記当事者間の大阪地方裁判所平成13年(行ウ)第29号出席停止処分取消請求事件について、平成14年2月21日判決の言渡があり、平成14年2月21日判決正本の送達を受けたが、全部不服であるから控訴を提起する。


 

原判決の表示

主    文
1 本件訴えを却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

  省 略


 

控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が平成13年3月26日、控訴人に対してした同月3月14日付懲罰動議に係る出席停止処分、同年3月16日付懲罰動議に係る出席停止処分を何れも取り消す。
3 訴訟費用は第1審、2審とも被控訴人の負担とする。

    との判決を求める。

 


控訴の理由

  1;本件懲罰事件は「懲罰事由が全く存在しないのに懲罰処分を受けた」冤罪事件であることが、控訴人書面で余すところなく論証されているにも拘わらず、原判決がこの事実を無視して、事実審理を行わず司法審査の対象外としたことは誤りである。
  原判決の判断は、「議会が多数決で決定しさえすれば」、いかに冤罪処分が発生しようと、憲法・地方自治法に違反する処分がなされようと、不利益処分を科すに当たっての最低限の法理と手続きが蹂躙されていようと、司法は傍観放置すると言うに等しく、即ち議会内多数派による決定が憲法・地方自治法・裁判所法・行政手続法より優先し、治外法権であると言うに等しい誤りである。

2;原判決が、本件懲罰処分を「一般市民法秩序と直接の関係を有しない当該団体等の内部的な問題にとどまる」と認定したことは、以下の点から全く誤りである。

(1)選挙で選出され、公金で運営される公機関たる地方議会が「一般市民法秩序と直接の関係を有しない当該団体等」に全く該当しないのは自明の理である。
 それどころか住民の直接選挙によって選出されて、首長が率いる行政機構のチェックを委ねられ、地方行政と住民生活のありようを決定する予算や条例規則を審議・議決する地方議会は、日本国憲法の議会制民主主義体制の基底を構成するものであって、「地方自治は民主主義の学校」と言われるほどに一般市民法秩序と直接密接に関係を有する団体である。

(2)昨今の報道を見るまでもなく、官僚や首長・議員の不正行為が後を絶たない現実社会にあって、本件のように懲罰事由がなくても議会内多数派の意向によって特定議員を議会の審議・議決から思いのままに排除できるということは、議会で多数派の意向に反した不正追及や問題指摘が許されないことになる。
 これは有権者から付託された行政チェックの任務を阻害し、不正不適切な行政行為を看過することで一般市民社会に損害を与えるとともに、本来なら公機関では最も法秩序が遵守されるべきであるにも拘わらず、「議会では民主主義の法規範が通用せず多数派に逆らったら懲罰される」ことを市民に見せつけるものであり、一般市民の法秩序意識に著しい害悪を及ぼすものである。
 従って、本件出席停止懲罰処分は「(地方議会の)一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる」ものでもなく、逆に極めて重大な関係を有するものである。

3;原判決は、本件冤罪不当懲罰による被害について全く過小で誤った認定をしている。

(1)控訴人が「準備書面(1)」で詳細に論じたように、控訴人は(1999年9月議会出席停止懲罰に続いてまたしても)「年に4回しかない定例議会の議決から排除された」のであり、「806億円もの規模の新年度予算案を始めとした29本の議案の審議・議決から排除された」のである。
 これは「正当に選挙された代表」たる控訴人が、有権者ら門真市民の「1年の計」はもちろん将来にも渡る住民生活の方向へも重大な影響を及ぼす多数の議案の審議・議決から不当に排除された大事件であり、議員たる控訴人の権能権限の蹂躙かつ有権者市民の選挙による付託の蹂躙であって、その影響を「実質的に1日の出席停止の効果を有したにすぎない」とか、「その効果はいまだ市議会内部での議員としての活動   に関する部分的な制約にとどまる」、とした原判決の認定は全く誤っている。

(2)本件懲罰は「部長課長の名前を肩書きを示して不適切な行政行為を議会で指摘することが『職員の人権侵害・誹謗中傷』であって懲罰処分に該当する」という多数派の暴論に基づくものであり、議会での行政責任追求を迫害し、以て不適正な行政の改善を阻害して、その結果、市民社会に大きな損害を与える途を開くものである。
 原判決は、本件冤罪不当懲罰の放置が門真市の行財政と一般社会に与える害毒を全く認識していない点で誤っている。

(3)「出席停止処分は議員の除名処分のような議員の身分自体の喪失に関する重大な事項と違う」という原判決の判断は、懲罰処分の被害を議員個人の身分と経済利益という狭い範囲でしか捉えない過ちをおかしている。    
冤罪不当懲罰による名誉の毀損ということは措くとしても、原判決では「議員の最も重要で根幹的な活動は議会での質問や意見表明などの言論活動である」ということが正しく認識されていないと言わざるを得ない。だからこそ「議員の身分は保持されて報酬ももらえるのだから、出席停止にされても重大な問題ではない」という判断を行なうのである。
 門真市議会で最も活発に質問している議員である控訴人の質問内容を懲罰対象と決めつけた4会派22議員は、うち11人が2000年度本会議で1回も質問せず、さらに6人は2年連続質問せずであり、残りの議員にしても質問頻度は控訴人と比べて雲泥の差があるが、「議員活動の根幹」と市民に対する責任の重大性を認識していない点では、原判決はこれら4会派議員と通底する過ちを犯している。

4;1審においては、何らまともな審理が行なわれていない。
 1審は、6月21日、8月16日、11月1日、1月10日の4回の口頭弁論を以て結審したが、控訴人が8万字を越す「準備書面(1)」や5万字に及ぶ「第2準備書面」、66号証100数十点に及ぶ疎明資料、被控訴人側への10項目に及ぶ答弁要求書(第3準備書面)や証人申請を提出して、冤罪不当懲罰の実態や議会運営の説明と最高裁判例批判を含む法理論を詳細に展開したにも拘わらず、これらを全く取り上げることなく、控  訴人の本人尋問申請すら採用せず事実審理を全く行なわないまま、事件の実態に目をつぶって、安易に42年前の最高裁大法廷判決に形式的に依存して「議会の内部規律問題」として却下判決を為したものである。
 従って、真理追究の努力を怠った審理の誤りは明らかである。

5;詳細は追って準備書面を提出する。

以上。