18;原告発言(2)も「誹謗中傷」「無礼の言葉」「議会の品位」等に全く抵触しない

  原告発言(2)とは、3月16日提出の懲罰動議の対象になった発言を指すものであるが、
  これもまたとうてい懲罰の対象になり得ないものであることを以下に論証する。


(1)3月16日提出の懲罰動議の提案理由説明で、提案者の公明党鳥谷議員は以下のように
  述べている。(甲第8号証A)


〜「懲罰動議提案理由説明」 公明党 鳥谷議員〜 2001年3月26日 本会議

    戸田議員に対する懲罰動議についての提案説明を申し上げます。戸田議員は、平成13年3月
  14日の本会議における一般質問で、議会及び職員に誹謗中傷を繰り返し、その発言に対して公
  明党・緑風クラブ・志政会・市民リベラルの4会派から提出された懲罰動議において、その際「一
  身上の弁明」を許可されましたが、その弁明において、何ら反省することなく、逆に懲罰を課した
  議会が不当であるとして、詭弁をろうし、さらに誹謗中傷発言に終始したのであります。

    戸田議員は数々の民主主義のルールをふみにじる行為を積み重ね、これまで出席停止の懲
  罰や問責決議などを受け、さらに平成11年の12月議会において、議会運営委員会での審議妨
  害や、会議録署名議員の理由なき責務放棄によって、議会の秩序を乱したことにより23名の議
  員から辞職勧告決議をされ今日に至っております。しかしながら反省するどころか、本議会を冒
  涜し、信用を失墜させる行為に終始しております。

    議会制民主主義の下においては、様々の価値観、主義主張、政策の違いを踏まえ、そのこと
  から生じる無用の混乱を避けるため、おのずから一定のルールが決められており、各議員はこ
  のルールに基づき、議論を斗わせて、その結論を見い出していくのであります。
  またどうしてもまとまらない場合は多数決の意見に従うという態度でこの民主主義の制度を育
  てていくことこそ議会人に求められており、議会はこの制度を社会の規範として断固守る責務か
  ら議会内におけるルールを乱し品位を汚す不穏当な発言は、たとえ弁明においても看過できな
  いことは当然のことであります。

    即ち、戸田議員が弁明において、「議会が主として、私の言論・議会での活動を妨害する、ある
   いは懲罰を加える、そういう動きのみが重なってきた」ウンヌン、と述べていますが、議会における
   議員は民主的に決められた規範を守り、議会規則等の枠の中で節度ある発言をしなければなら
   ないものであります。その規範を破っていることを棚に上げ、いかにも議会が不当な決断を下して
   きたという発言は、論旨のすり替えであり、見過ごすわけにはいきません。

    また、弁明の中で懲罰動議について「1から10まで不当なものであり、絶対に私は容認できな
   いしこれを通してしまうということはまさに議会制民主主義を自ら殺してしまうことに他ならない」
   との、本人の発言については、これもまた重大な論旨のすりかえであり、民主主義の象徴である
   べき議会は、当然のことながら自ら範を垂れる責務が課されているのであります。
    さらに、本会議場において議員は特に人権に配慮し、節度ある発言が要求されているにも関わ
   らず、戸田議員は個人名を上げ、人権侵害の不穏当発言を繰り返したものであり、このことこそ
   不当なものと糾弾されるべきでありますさらに「ひきつけを起こしながら進んでいく門真市議会」
   と発言するに至っては、理由もなく異常な状態の議会であると侮辱していることになります。

    このような議会への侮辱は、すなわちその構成員である議員、さらに議員を選んだ市民を侮蔑
   するものであり、許されるべきことではなく、まさに不穏当な発言そのものであります。
   よって、ここに戸田議員に対する懲罰動議を提出するものであります。
                                         以上で提案説明を終わります。


(2)上記の懲罰理由が全く不当非常識であることを以下に論証する。


 @: そもそも、不当な懲罰攻撃をかけておいて、それへの抗弁(「弁明」)がけしからん、という論難
    自体が、為にする攻撃以外の何者でもなく、およそこのような懲罰動議は全国的にも前代未聞
    のことであり、これこそが「議会の品位と権威の失墜行為」として厳しく指弾されねばならない。
    この手法を取れば、際限のない泥沼にはまることが明白すぎるほど明白であるがために、公明
    党以外の3会派議員がこの懲罰動議の提案者にならないという「仲良し4会派」の異例の分解
    状態さえ生まれたくらいなのである。 (甲第5号証B)

 A; 提案者の論理から言えば、原告の全ての「弁明」に対して懲罰動議を出さなければ筋が通ら
    ないはずだが、それをしていないという事実は、この懲罰動議に普遍的正当性がなく、ご都合
    主義で行なわれていることの証左である。

 B; 「その弁明において、何ら反省することなく、逆に懲罰を課した議会が不当であるとして、詭弁
    をろうし、さらに誹謗中傷発言に終始したのであります。」、という非難については、何ら具体性
    がなく、自分たちの不当な懲罰攻撃を居直っているだけにすぎない。「しかしながら反省するど
    ころか、本議会を冒涜し、信用を失墜させる行為に終始しております。」、というのも全く同様の
    無内容な非難である。

 C: 「議会内におけるルールを乱し品位を汚す不穏当な発言は、たとえ弁明においても看過できな
    いことは当然のことであります。」、という非難については、何が「ルールを乱し」ているのか、何
    が「品位を汚す不穏当な発言」なのか、具体的な指摘もその正当な根拠も全く示されていない。

 D: 「議会が主として、私の言論・議会での活動を妨害する、あるいは懲罰を加える、そういう動き
    のみが重なってきた」ウンヌン、と述べていますが、議会における議員は民主的に決められた
    規範を守り、議会規則等の枠の中で節度ある発言をしなければならないものであります。
    その規範を破っていることを棚に上げいかにも議会が不当な決断を下してきたという発言は
    論旨のすり替えであり、見過ごすわけにはいきません。」、については、原告の発言が鳥谷議
    員にとって気に入らないことは分かっても、それがなぜ懲罰をかけるべきものなのか、さっぱり
    不明であり、「見過ごせない」から懲罰をかけてやれ、という発想が不気味である。

     かえって「議会規則等の枠の中で節度ある発言をしなければならないもの」という理由を掲げ
    て、原告のまともな質問を攻撃するやり方からして、同議員が、「『無礼の言葉』を解するのに社
    交の儀礼を標準としてはならない」「たとえ、その措辞が痛烈であってこれがために他の議員
    等の正常な感情を反発しても、それは議員に許された言論によって生ずるやむを得ない結果で
    あって、これを以って議員が『無礼の言葉』を用いたものと解することはできない」、という議員の
    発言についての基本を全く理解していないか、わざとねじ曲げているのではないか、と疑わざる
    を得ないのである。

     なお、この「無礼の言葉」の理解については、同じく公明党の青野議員が3/14提出懲罰動議
    についての3/21総務水道常任委員会での審議における懲罰賛成発言の中で、「ひとつは地自
    治法(地方自治法)132条、『品位の保持』ということで、『議員は議会の会議において、無礼な
    言葉を使用してはならない』と定めてあります。
     判例におきましても、『無礼な言葉とは、議員が会議において自己の意見や批判の発表に必
    要な限度を超えて議員・・など関係者の正常な感情を反発する言葉を言う』というふうに書いて
    あります。」と言って原告攻撃をしていることからしても公明党議員が裁判所判決や先例解説
    をねじ曲げて解釈していることがよく判るものである。

 E; 「本会議場において議員は特に人権に配慮し節度ある発言が要求されているにも関わらず
    戸田議員は個人名を上げ、人権侵害の不穏当発言を繰り返したものであり、このことこそ不当
    なものと糾弾されるべきであります。」、と言うに至っては、「○○部長の行政行為のここが間違
    っている」、と事実に基づいて議会で批判的質問をすることが「人権侵害」だというのだから、ま
    さに議会・議員の役目の何たるかを知らない無知蒙昧な発言と言う他ない。

     市長や助役の名前を挙げて批判することは門真市議会と言えども何の問題もなかったわけ
    で、それなのにその下の重要幹部たる部長や課長の場合は、重大な問題があってもその肩
    書きと実名を挙げて公務実態について批判すると「人権侵害」になるとはいったいどういう理
    屈によるものなのか、理解に苦しむものである。
     「本会議場において議員は特に人権に配慮し、節度ある発言が要求されている」、という言
    い方は鳥谷議員が行政への厳しいチェックをせずに馴れ合い的な質問にとどめることを良し
    としていることを図らずも自己バクロしているだけであり、何よりも多数の力を借りて原告を誹
    謗中傷し、懲罰する暴挙をなしておきながら、こともあろうに原告に対して「人権への配慮」を
    説く厚顔無恥さには、議員としての資質と人格を疑わざるを得ない。

 F; 「『ひきつけを起こしながら進んでいく門真市議会』と発言するに至っては、理由もなく異常な状
    態の議会であると侮辱していることになります。」、について、そもそも0.3%前後の懲罰事案の
    発生率が全国市議会平均であるところを50%もの懲罰事案発生率を生じさせているほどの門
    真市議会の実状を指して「異常な議会」だと批判することのどこが不当であると言うのか、原告
    の批判に「理由がない」という理由こそ問われなければならない。こういう論難は、あたかも「王
    様は裸だ!」と正しい指摘をした子供を「ウソつき」だと糾弾するのに等しい愚劣な論難である。

     また、「ひきつけ起こしながら進んでいく」というのは、子供の成長の様子に例えて、門真市議
    会が「強烈野党」・「鮮烈市民派」たる原告からの刺激を受けて、時に激しいショック症状起こし
    ながらも結局は改善の方向に進まざるを得なくなることを示唆するものであって、これを「侮辱」
    だとか「差別」だとか曲解する方がおかしいのである。
     原告が全国で稀にみる酷い攻撃を受け続けても、そのような歴史的楽観主義を持って4会派
    議員に対しても広い心で接してきたことは、以下の1999年9月議会での懲罰攻撃に対する「弁
    明」抜粋からも明らかである。公明党議員らの論難は、原告が精神的優位に立っていることへ
    のコンプレックスから発生しているに過ぎない。

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<1999年9月議会での懲罰に対する原告の「弁明」抜粋(1)>

    本日は、門真市議会史上初めて、幾ら古手の議員でも超ベテランの職員の方で、だれも経験し
   たことのない初めての懲罰動議です懲罰というのは選挙で選ばれた議員をほかの議員が罰を
   下すという極めて重大な問題であって、決してこれをもてあそぶようなことがあってはならないと思
   います。
    さて、この議会においてすばらしいことが二つありました。つまり、正論を述べた5議員の勧告に
   従って、市のトップが身を処されたことです。もう一つは、次の本会議一般質問において12人もの
   方が質問に立たれるというかつてないすばらしいことが行われております。
    同時に、しかし、このような不当な懲罰動議が行われるというまさに門真市議会史上を汚すこと
   が行われていることも憂慮にたえません。ただしながら、本会議の運営を通じまして、このような
   汚点をプラスに転化し、議会改革へ邁進して いくことを私は考えております。

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<1999年9月議会での懲罰に対する原告の「弁明」抜粋(2)>

    助役が辞職し、門真市役所の中に少しは新しい風が吹こうかとしているこのときに当たって、
   門真市議会で4会派の幹事長の名前でもって不当な懲罰を強行されていることに対して、残念
   の意を強くせざるを得ません。
   しかしながら、このような困難はいっときのことであり、市民の皆さんがこれをしっかりと見ていく
   限り、次の議会改革の一歩が逆に今固められているのだと、そのように考えます。

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19;本件懲罰は不利益処分の原則からして、手続き上の瑕疵により不当である


(1)原告は前回の懲罰事件(99年9月議会)の時から、懲罰決定の手続きとその実態について、「弁
  護人抜き・被告抜き・事実調べ無し・反論権無しで、独裁国家の軍事裁判よりもひどい暗黒裁判
  である」、と批判してきたが、本件懲罰事件の実態を見てもその批判はいささかも変更の必要が
  ないこれは日本の議会制度においては弁護士会の懲戒手続きに比べれば明白なように元々
  この部分の考慮が不備であることが基盤にあるが、それに加えて門真市議会4会派の法治主義
  の何たるかも知らない非常識さと少数派に対する異様な敵意を持った運営によるものである。
  以下にそのことを論証しておく。

 @; 3月16日提出の懲罰動議については、そもそもその存在が3月26日本会議直前の議運まで不
   利益処分対象者たる原告に対して秘密にされて原告が全く防御権を奪われていたことからして
   
論ずるまでもなく手続上の瑕疵は明白であり、この一事を以てして既に不当無効である。

 A; 3月14日提出の懲罰動議も3月16日提出の懲罰動議も、動議の理由説明に於いて、「議会及
   び職員を誹謗、中傷し、議会の品位を汚し、その権威を失墜するような発言があり、このような
   発言は断じて許すことができないため。」とか(14日提出動議)、「さらに議会を誹謗、中傷し、冒
   涜する発言があり、このような発言は断じて許すことができないため。」(16日提出動議)、と述
   べるのみで、発言のどの部分がどのように、なぜ懲罰対象だというのか、さっぱり分からない代
   物であるこれでは「被疑事実を記載していない逮捕状」同然であって不利益処分を科す手続
   として、全く不備なものである。

 B; 原告は懲罰動議が本会議に上程された直後に、提案者にその内容を質問することも許されな
   いまま3月16日提出懲罰動議に至っては提案説明の文書も渡されないままに形式的に「一身
   上の弁明」を許されたのみで、実質的な反論権行使を妨げられたままであった。

 C: 懲罰動議を審査する総務水道常任委員会においては、冒頭にのみ「一身上の弁明」発言を
   許可されたのみで、それ以外は反論権行使どころか傍聴すら許されなかった。

 D: 共産党議員が懲罰反対の立場で意見を述べてくれたものの、それは「善意の第三者」の立場
   に於いてであり、「被告人」の利益を代行するものではく、その義務を負うものでもない。
   つまり「弁護人抜き裁判」が進行したのである。

 E: 懲罰審議の総務水道常任委員会での論議の実態は、「討論」とは言いながらも、賛否の意見
   をそれぞれ一方的に述べるだけで何ら普通の意味での「討論」としては行なわれておらず
   うてい「真理への接近」が図れるものではない。

 F; 懲罰賛成の意見はみな「誹謗中傷」とは何か、という検討もない感情的な決めつけ論や、「無
   礼の言葉」解釈に典型的に見られるようなデタラメな法規範理解によるものであったが、事実の
   検証や判例・資料を基に論議を進めるようなことが一切なかった。事実審理を一切行なわずに
   不利益処分が進められ、形式的な多数決で「懲罰相当」の決定が委員会において出されたの
   である。

 G: 委員会での懲罰審議結果を報告した後の本会議での原告の「弁明」や賛否の討論も、議論す
   ることの実効性を初めから抹殺した単なる形式でしかない。懲罰賛成派がどんなに不当な、根
   拠のない意見を言っていても、それと論議を闘わせることが初めから禁止されているのである。
                      (以上、詳しくは甲第3号証〜甲第8号証に至る疎明資料参照)


   以上述べたことから、本件懲罰手続は明らかに日本国憲法31条、行政手続法の趣旨に反した
   瑕疵ある手続であり、違法であって、この点からも本件懲罰処分は取り消されるべきである。