13;重要参考;共産党議員への懲罰事件(2000年3月議会)

  助役の疑惑問題に過敏に反応する4会派がまたしても不当な懲罰を以下のように発動した。
                                     (甲第12号証G・甲第29号証)


(1)2000年3月議会での、福田議員に対する懲罰の経過

 6(月)  本会議   諸報告  市長の施政方針説明  諸議案上程

13 (月)  本会議   各会派代表質問

14 (火)  本会議   前日残りの会派代表質問  戸田の一般質問

15 (水)  民生常任委員会

16 (木)  建設常任委員会

17 (金)  文教常任委員会

21 (火)  総務水道常任委員会

24 (金)  本会議

        △ 承認第1号上程から議案第1号から32号までの一括採決
           戸田と共産党のそれぞれの賛成・反対討論と4会派代表の全部賛成の討論
                                        ――与党側賛成多数で可決

        △ 議案第33号「助役の選任について」上程。戸田・共産党の質疑と反対討論
                                     ――与党側賛成多数で同意可決

 ★冨山議員が理由も告げずに休憩動議――賛成多数で可決ー 休憩(2;45〜4;25)
                        (福田議員の助役選任反対討論へ懲罰を狙う)

   議運の協議会というのが、2時48分ぐらいから行われた。
    (この協議会は当然非公開。会派代表だけが話しをしてる。)  4:25本会議再開

 ☆会議時間の延長を可決

        △ 議案第34号「収入役の選任について」上程
           戸田・共産党の反対討論――与党側賛成多数で同意可決 

        △ 議案第35号36号(人権擁護委員候補2名の推薦)一括上程
                                      ・・・全員賛成で可決

        △ 議員提出議案第2号と3号の上程――3号に戸田が反対討論―それぞれ可決。

        △ 「行財政改革調査研究特別委員会」の名称変更及び調査研究事項
           追加について」上程――賛否の討論――賛成多数で可決

  ●議長が「暫時休憩」宣告 4;50〜8:30まで休憩  この間に議運や協議会  夜8;30再開


 ★共産党福田議員に対する懲罰動議提出

    議員福田英彦君に対する懲罰動議 (4会派提出)
     理由; 議員福田英彦君は、本日すなわち平成12年3月24日の本会議における
         議案第33号の討論において、不穏当な発言を行った。
         これは議会の秩序を乱し、品位を汚すもので、断じて許すことができないため。

     提案理由説明とそれへの質疑・・・・まともな答えなし ・・質疑打ち切り動議可決

   福田議員の「弁明」
     懲罰動議を総務水道常任委員会に付託する事が4会派の賛成多数により可決。

   夜8;47〜10:57まで休憩。 休憩中に開催。懲罰動議につき、「戒告」を相当とする旨議決。

   10:57本会議再開


   総務水道常任委員会での審議結果報告

    福田議員の「弁明」  賛否の討論

     4会派の賛成多数で福田議員に「戒告の懲罰」を科すことを議決。  戒告懲罰の宣告

    閉会 夜11;20


(2)問題とされた共産党福田議員の発言(特に下線部)だが、こういう真面目至極な発言懲罰
   をかける4会派側の異常さが浮かび上がるばかりである。

<共産党・福田議員の助役選任についての反対討論> (全文紹介)

   助役の選任について、反対の立場からの討論を行ないます。
  今回の助役の選任についてはその人物が適切かどうかという判断を行う前に、まず解決しておか
  なければならない問題があると考えます。それは、助役が空席になった要因である、前助役の辞
  任問題、直接的には市税滞納問題についてでありますが、その後公共事業に関わる贈収賄疑惑
  が明らかになったことについてであります。

   こうした中での助役の選任について議会に同意を求めるというのは、市民の皆さんに同意を求
  めること、すなわち公共事業に関わる贈収賄疑惑などの再発防止について市民の皆さんに納得
  のいく具体化が図られ、その上で同意、理解を求めるということであります。この点が助役選任に
  ついて解決をしなければならない最低限の課題です。
   この問題についてわが党は再発防止策としての政治倫理条例の制定で市民の皆さんへの信
  頼回復をと求めてきましたが、市の内部調査において「何ら問題はなかった」とし、政治倫理条
  例の制定についても「資産の公開について市長以外にひろげる考えはない」と一貫して否定的
  な見解を示しました。

   こうした、市側の対応について市民のみなさんからは「何も問題がなかったのならなぜ自殺し
  たのか」「口だけではなく二度とこのようなことがおこらないような具体的対策を示してほしい」
  といった声が数多く寄せられました。このように、一連の市側の対応は、いっそう市民の皆さんの
  信頼を失う結果となりました。
    加えて現収入役が再任されたのはわずか3ヶ月前であります。
    助役への選任は人事のあり方としてもまったく異常と言わざる得ません。
  以上の点から、助役の選任については、市民の皆さんにとっても到底納得できないものであります。

   あわせて年収約1700万円、退職金1400万円余り、4年間で8000万円を超える支出をともなう助役
  の選任について、あえてこの時期に行う必要はまったくないと考えるものであります。
  よって、助役の選任について反対するものであります。


(3)またしても具体的理由を示せない決めつけで懲罰を要求。24日本会議での
   やり取りを以下に紹介する。 (原告のメモ書きより抜粋)

   早川議長:「懲罰動議の説明を求めます。」

   緑風クラブ・秋田議員:「本日、公共工事に関わる贈収賄疑惑前助役の名誉を傷つけ、
                  議会の秩序を乱すもの」、と説明。質疑に入る。

   共産党・亀井議員:「理由に問されている、不穏当な発言とか議会の秩序を乱しているとか、
                品位を汚すものとか、具体的に説明して欲しい。」

   秋田議員;「先ほどの説明の通りです」、と答えるのみ。

   戸田議員:再び、具的的な点を問いただす。・・・・8時38分

   秋田議員;「先ほどの説明の通り」、とのみ言うだけで、全く答えにならない答え。

   共産党・中西議員:「きちんと説明する責任がある」と、追求。

   秋田議員;「先ほどの説明の通り」、という趣旨の同じ事をまた繰り返す。


 ★突如、公明党の風小波議員が、打ち切り動議を出す。先程来聞いていると、同じようなやりとり
   が繰り返されているだけで、これ以上意味がない」、という趣旨を発言。「質疑打ち切りの動議」
   を出して、これが賛成多数によって、採決されてしまう。

  続いて、福田議員の一身上の弁明。

   福田議員;「どこが問題なのか。疑惑が明らかになった、という点どう不穏当なのか。品位、
          秩序、なんら明らかになっておりません。99年10月15日の新聞記事で、疑惑を
          もたれ、府警2課の事情徴収を受けていたとあり、懲罰に全く当たらない。市民
          の信託を受けた議員へ簡単に懲罰を科けることこそ問題。」と弁論。

   福田議員が退席し、総務水道常任委員会に付託して審査することを起立多数で決定。



14:「議会の自律権」は多数派の法規範逸脱を不問に付すためのものではない


(1)議会に自立権を与えた目的

 @; 地方自治は、立憲民主制の維持(地方分権と国政レベルの代表民主制の補完)という視点か
   ら統治構造の不可欠の一部でありそこから地方自治体が自律権を有する(団体自治)ととも
   にその支配意思形成に住民が参画すること(住民自治)は当然の帰結である。
   従って地方自治体は、自らの実体的権能を行使する際、その行使のあり方を自ら決定する組織
   的・手続的権能も憲法上保障されているのである。
    地方自治の実現は、そこで生活する住民の総意に基づいて行なわれなければならず、かかる
   具体的総意を反映するよう構成された機関を通じて地方自治は行なわれる。その具体的な議事
   機関として、地方議会が設置され、有権者団の直接選挙する議員によってそれが構成されるの
   である。

 A; 議会に自律権能を付与した目的実現のために必要とされる自由闊達な議論地方議会の権能
   として、条例制定権や予算の議決等、住民の生活に直結する事項や、会議規則制定権や議員
   の懲罰権などの自律権能に関わる事項が含まれる。ここで、地方議会に圧迫干渉を排して、独
   立して審議・議決を行うためである。特に問題となるのは、国家機関である行政府の干渉を排す
   ることである。これら地方自治は国民主権を充実させるために地方分権化を図り国政レベル
   での代表民主制を補完するものであるから、自立的権能も、地方自治において国民主権ないし
   住民自治に奉仕し得るようなものでなければならない。

    つまりは住民自治に貢献するためにこそ自律的権能は行使されなくてはならないのである。
   そして、その終局的目的は、地方の独自性に配慮しつつ、住民の意思を地方行政に忠実に反映
   していくことであり、住民の利益を図るための政策の実施を十全ならしめることにある。
   そのためには、住民の代表である個々の議員が、それぞれの立場から、住民の意思を反映した
   意見を議会の場に持ちだし、自由闊達な議論が尽くされる必要がある。つまり、住民の意向を忠
   実にくみ取るべきことを前提にしつつ、同時に、議会による自由な討論・評決を通じて、統一的な
   住民意思を形成することが望まれているのである。

 B; 自由闊達な議論を尽くすために、議会での言論の自由を保障することの重要性この前提とな
   る自由闊達な討論をなし得る議会であるためには、各議員の言論の自由が保障されなければ
   ならない。つまり、議会の場における情報の収集、情報の提供、情報の受領、意見の表明の
   全過程においてその自由が阻害されてはならないのであるまた表現主体に対する直接的
   規制のみならず、間接的な規制からも「萎縮的効果」は生じるのであって、「萎縮的効果」を恐
   れるべき度合いが大きいと、もはや自由な議論など望み得なくなるから、「阻害されない」とい
   うことは直接・間接を問わず規制がかけられてはならない、ということである。
    地方議会において、議員の発言の自由が保障されなくてはならないことは、「議員必携」
     (全国町村議会編)の中にも宣言されている。 (第5章 発言〜甲第46号証)

     そこには、「議会は、『言論の府』といわれるように、議員活動の基本は言論であって、問題
    はすべて言論によって決定されるのが建前である。会議原則の第一に『発言自由の原則』が
    挙げられるのもそのためである。国会については、憲法において『議員は、議院で行なった
    演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない』(憲法51)と定め、特別にそのこと
    を明文で保障している。これを免責特権という。
    これは、戦時中軍部の言論抑圧によって国会が全く機能を失った苦々しい体験からみても、
    その趣旨や精神は地方議会においても同様であって、もしも言論の自由がなくなれば、議員
    は、その職責を果たすことは、到底不可能である。」と明確に記載されているのである。
    従って、議会構成員である議員の表現活動に対する「萎縮的効果」を防止することは、地方
    議会の自律権を保障した目的にかなうばかりでなく、むしろその目的実現のためにこそ自律
    権能の行使をすべきであり、かような議会であってこそ、住民に奉仕する地方公共団体たり
    うるのである。


(2)議会内多数派が自律権の基盤を崩すような誤った行動を強行して改めない場合は、積極的な
   司法審査の介入が必要である。

 @; 地方議会に一定の自律的権能が認められるのは、(1)でも検討したように、住民の意思に
   沿った地方行政を行なうために、議会がその役割を十分に発揮するためである。
   すなわち住民の意思を汲んだ各議員の自由な意見が議会の場で戦わされることにより住民
   の意思を反映した統一的な意思を形成するために議会の自立権が認められているのである。
     しかし、地方議会自身が、「多数決」に名を借りた多数派議員の横暴によって、議員の自由
   な議論に対し「萎縮的効果」をもたらすような処分をした場合には、地方議会における自浄作用
   はもはや期待すべくもない。

    もとより、議会における議員の発言といっても、全く無制限というわけではなく、他人の名誉や
   プライバシーに関する事項の暴露や、単に他の議員を侮辱する発言は許されるものではない。
   これらの発言は、他者の人格に関わる利益との関係での制約を受けるのである。
   この制約は、議会における特別の制約というものではなく、一般市民間にも当然当てはまるもの
   であるにすぎない。むしろ、様々な立場の異なる意見に基づく討論の存在を前提とする地方議会
   においては、より強く表現活動の自由が保障されるべきものであるから、言論の自由に対して、
   一般市民間におけるよりも強度の制約をすること自体、本来許されるものではない。
   そのことから、「地方自治法132条にいう無礼の言葉を解するのに社交上の儀礼を標準としては
   ならない(最判昭27年12月4日)」という解釈態度につながるのである。
   従って、地方自治法132条にいう「無礼の言葉」「他人の私生活にわたる言論」の解釈について
   は、「萎縮的効果」をもたらすような解釈・適用がなされてはならないのである。

 A; もし、議会の自律権としての懲罰権の行使に何の制約もないとすれば、懲罰権の行使は多数
   決により行使することが可能であることから議会内多数派は少数派議員に対し多数派の解
   釈を押しつけることも可能となる。本件懲罰のような、「無礼の言葉」「他人の私生活にわたる言
   論」に該当し得ないような言論についてまで、理由もなく「無礼の言葉」に抵触するであるとか、
   「誹謗中傷」「人権侵害」「議会の権威を失墜させる」であるとか決めつけて、議会内多数派の解
   釈により懲罰権を行使することが可能であるとすれば、一般市民法秩序以上の制約を少数派議
   員に課すことになってしまうことになってしまうのである。

    その結果、本来自由闊達な議論を保障するために認められた議会の自律権が、逆に自由な
   議論を妨げる結果を招くことになってしまうこのような本来法の意図しないような結果が招来さ
   れた場合において、自浄作用が期待できない場合には、他の機関による矯正の道、すなわち
   司法審査による矯正の道が保障されていなくてはならないのである。