はじめに

 2002年初頭、1月10日の第4回口頭弁論の直前の本日9日、この第2準備書面と疎明資料第3弾を提出するにあたり、当初予定よりも大幅に提出が遅れてしまったことを 裁判官の方々にまずお詫びしておきたい。
 昨年10月11日付けの被告準備書面提出、11月1日第3回口頭弁論を受けて早期に提出すべきことはもとより充分承知しておりました。
 しかしながら、弁護士という訴訟専門家を雇えない経済事情からの本人訴訟という事情とともに、後述のように広範な市民に呼びかけつつ、住民監査請求や情報公開不服申し立てを数々起こし、不当な「議員出席手当」をついに廃止決定に追い込み、歴年の広報未配布問題の抜本解決の道筋を付けるなど、今まで誰もなしえなかった成果を上げつつ、通信10号11号(甲第49号証・50号証)合計5万部の作成・配布をこなしながら12月議会で奮闘するという、市民生活改善のために緊急切迫の議員活動が存在したということ、さらに門真市議会の異常さを広く社会に訴え、本件訴訟の資料としても極めて重要な著書「チホー議会の闇の奥」(甲第47号証)の執筆にも追われざるを得ない、という事情も重なったために、通常人に倍する努力を払ってもなお本書面の作成提出が遅れてしまったものであることをどうか斟酌されて下さるようお願いする次第です。
 以上、お詫びを率直に申し述べた上で、私原告が全身全霊を込めて作成した本書面と資料を読まれ、法定での訴えに耳を傾けられることをお願いしつつ、以下に当方に主張と論証を展開してゆきます。
 時あたかも、戒告懲罰という最も軽い懲罰の取り消し訴訟が最高裁に昨年12月18日に上告されるという、議会問題で画期的な状況が生まれ、かつまた門真市議会での不当懲罰との闘いを訴える原告の著書「チホー議会の闇の奥」と、「日本で最高レベルの議会言論の 自由を築いてきた」東京の元市議の著書が同時期に出版される、という偶然が重なってお りますが、これも天の配剤かもしれません。裁判官の皆様におかれましては、合わせてご精読のうえ慎重なる審議をお願いいたします。
           

第1;本件は「冤罪事件」であり、「懲罰事由がないのに懲罰された」のだから、「違法な処分」として取り消されねばならない。   

1;いかに警察が逮捕権を持っているからといえ、犯罪事由がないのに逮捕されたら冤罪事件であって不当逮捕であり、いかに裁判所が裁判権を持っているからといえ、犯罪事由がないのに有罪を宣告されたらそれは冤罪事件であり、不当判決として取り消されねばならない。  
 同様に、いかに議会が自律権を持っていようとも、懲罰事由がないのに懲罰を行なったらそれは冤罪事件であり、違法な懲罰として取り消されねばならないのは当然の法理である。
  原告が主張しているのは、本件懲罰が「懲罰事由なき懲罰処分」であり冤罪事件だということであって、「懲罰の種類の選択が重すぎる」などの議会の裁量の問題ではない。  
 従って、もし被告が原告の主張を退けようとするのならば、「懲罰事由が確かにあった。だから懲罰は正当な処分だった」ということを論証しなければいけないのあって、決して「懲罰は既に行なわれた。だから司法審査の対象ではない」、で済ますことはできないのである。
  仮に「議会の自律権」を盾に「司法審査の対象ではない」と主張するとしても、「懲罰事由の存在」は説明できなければならないのであって、「説明しない」とすれば、それは「懲罰事由が存在しないからそれを説明できない」、「懲罰事由不存在の主張に対抗できる根拠を持たない」、即ち、「懲罰事由が存在しないのに懲罰を行なった」ことを自己暴露したと見なすべきなのである。 
  ところが、被告はわずかに6/14答弁書で「議会の有する自律権の発動として本件懲罰処分が行われた」と述べるのみで、懲罰事由認定の妥当性どころか、いったい地自法や議会規則のどの部分を根拠とした懲罰なのかにさえ口をつぐんでおり、「懲罰事由の存在を主張できない」実態がまざまざと示されている。    

2;ところで、原告に対する本件懲罰については、2000年3月議会本会議での原告の発言について、2つの懲罰動議において、「議会及び職員を誹謗、中傷し、議会の品位を汚し、その権威を失墜するような発言があり、」とか、「さらに議会を誹謗、中傷し、冒涜する発言があり、」と非難して「このような発言は断じて許すことができないため。」、と決めつけ、懲罰動議提案説明において「職員を誹謗中傷するものである。」、「議会を誹謗中傷するものである。」、「議会の品位を汚し、その権威を失墜するような発言であり、」、「本議会を冒涜し、信用を失墜させる行為に終始しております。」、「議会内におけるルールを乱し品位を汚す不穏当な発言」、「個人名を上げ、人権侵害の不穏当発言を繰り返した」、「理由もなく異常な状態の議会であると侮辱している」、「まさに不穏当な発言そのものであります。」などと様々な言い方で原告を攻撃している。

  これらは要するに、公明党の青野議員が3/21総務水道常任委員会での審議における懲罰賛成発言の中で、「地自治法(地方自治法)132条、『品位の保持』ということで、 『議員は議会の会議において、無礼な言葉を使用してはならない』と定めてあります。判例におきましても、『無礼な言葉とは、議員が会議において自己の意見や批判の発表に必要な限度を超えて議員・・など関係者の正常な感情を反発する言葉を言う』、というふうに書いてあります。」、と言って原告攻撃をしていること如く、原告が地自治法132条で議員員が使用してはならないとされている「無礼の言葉」を使用した、もしくは[門真市議会規則第](甲第23号証)【98条;議員は議会の品位を重んじなければならない】に違反した、というのが懲罰事由であるとするのが被告の立場であると推測するほかなく、この2つ以外には、法的に原告の本件議会発言に懲罰を科すどんな規定も見あたらないことは、被告も異論のないはずである。
  原告発言を「『他人の私生活にわたる言論』にも抵触する」、とはさすがの4会派でも言えないし、ほかに「地自法並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した」(地自法134条の規定で、これ以外の理由では懲罰できない)とするどんな理由も上げることはできない。
  それとも法や規則の規定によらないで懲罰処分ができるということが「議会の自律権の発動」だとでも言うのだろうか?法律家たるもの、まさかそのようなことは主張できないはずである。

3;地方議会議員の懲罰事由および懲罰の種類は、全て地方自治法134条、135条、137条等により定められている。
  これは、議会に一定の自律権能があるとはいえ、その行使が恣意的に行なわれることのないよう、明文の規定をもって制限的に定めたものである。(従って、懲罰権の行使は、法規の定める枠内のものでなければならず、その枠を越えれば当然違法となり、それに対しては「法律上の争訟」として、当然、裁判権の対象となる。)
 議員の発言が懲罰事由の構成要件に該当するか否か判断するに際しては、なによりも議会の本来の目的、即ち、議会が住民福祉の向上に最大限貢献すること、そのためには住民を代表する議員の言論の自由が最大限に保障されなければならないという観点から解釈されなければならない。
 全国町村議会議長会の発行する「議員必携」(甲第45号証)もその「第二篇 議会運営 第五章 発言」の冒頭において、
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「議会は、『言論の府』といわれるように、議員活動の基本は言論であって、問題は、す べて言論によって決定されるのが建前である。
 このため、議会においては、特に言論を尊重し、その自由を保障している。会議原則 の第一に『発言自由の原則』が挙げられるのもそのためである。
 国会については、憲法において『議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない』{憲法五一}と定め、特別にそのことを明文で保障している。これを免責特権という。
 これは、戦時中軍部の言論抑圧によって国会が全く機能を失った苦々しい体験からみ ても、厳守されるべき当然の規定である。地方議会議員に免責特権はないが、その趣旨 や精神は地方議会においても同様であって、もしも言論の自由がなくなれば、議員は、その職責を果たすことは、とうてい不可能である。」

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と述べていることの重みを改めてかみしめる必要がある。
 地方自治法132条の「無礼の言葉」「他人の私生活にわたる言論」、あるいは「規則」第98条の「議会の品位」という要件もこの観点から厳格に解さなければならない。

4;「無礼の言葉」や「議会の品位」要件は厳格に解されなければならず、またそれを客観的判断を下したと解し得ない限り、たとえ議会が主観的に判断して懲罰を科したとしても、それは違法な処分で取り消しを免れない、と明確に述べた札幌高裁1950年(昭和25年)12月15日判決(行裁例集1巻12号1754項)があるので、それを以下に引用する。

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 「しかし、ここに同条(原告注;地方自治法132条)の適用について考うべきこ とは、議員が果たしてどんな発言をしたかを確定することは、事実問題であって、裁判所は、当事者間に争のある限り、証拠によってこれを認定するものであるが、その認定にかかる発言が果たして同条にいう無礼の言葉を使用したことに該当するかどうかは、法律問題であって、その発言が客観的に判断して無礼の言葉にあると解しえない限り、たとえ議会がこれを主観的に無礼の言葉であると解して懲罰を科したとしても、右懲罰処分は違法の処分として取り消しを免れないものである。
  被控訴人の控訴議会における発言は前認定の通りであるが、とりわけ普通公共団体の議員はその住民の代表として選挙せられ議会において言論することをその重要な職務とするものであって、その言論については、他人の私生活にわたるものを除き、十分にその意を蓋し民意を反映せしめなければならない。
  ゆえに、その発言を無礼の言葉であるとして議員に懲罰を科するには慎重の考慮を要するのであって、若しかようの懲罰権が濫用されるのなら、議員の言論の自由はやがて自由を失い、かえって議会の使命の達成を阻む結果を招来するのである。
 
さらに同条の適用について、なお注意を加えると、同条はもっぱら議員の議会における発言のみに依拠して、それが無礼の言葉であるかどうかを判断すべきものであって、その議員の議会外における行動は、その発言の意味を正確につかむためにこれを考慮に入れるのは格別、その行動自体を斟酌してこれを決することは同条の趣旨に反するものである。
  なお、同条にいう無礼の言葉を解するのに社交の儀礼を標準としてはならない。かようの儀礼に反する言葉をすべて無礼の言葉というならば、議員の言論の自由は著しく制約せられてしまうであろう。
  議員の発言が無礼の言葉であると言われるには、議員が附議された事項についての意見や批判の発表に必要な限度を超えて議員その他の関係者の正常な感情を反発する言葉であり、附議された事項について自己の意見を述べ又は他の議員等の意見等を批判するについて必要な発言である限り、たとえ、その措辞が痛烈であって、これがために他の議員等の正常な感情を反発しても、それは議員に許された言論によって生ずるやむを得ない結果であって、これを以って議員が同条にいう無礼の言葉を用いたものと解することはできないのである。」
(下線は原告)

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 「無礼の言葉を解するのに社交の儀礼を標準としてはならない。」、「たとえ、その措辞が痛烈であって、これがために他の議員等の正常な感情を反発しても、・・・」はつとに有名な判例であって、未だにこれは覆されていないのである。被告もこれをなんら批判しないし、否定することもできない。
 
また、「議員が果たしてどんな発言をしたかを確定することは、事実問題であって、裁判所は、当事者間に争のある限り、証拠によってこれを認定するものであるが、・・・・ その発言が客観的に判断して無礼の言葉にあると解しえない限り、たとえ議会がこれを主観的に無礼の言葉であると解して懲罰を科したとしても、右懲罰処分は違法の処分として取り消しを免れないものである。」と明確に断じているのである。(司法審査の問題については別に詳述する)

5;原告発言は、一般質問にあっては全て事実に基づいて行政職員の公務執行のあり方を批判的に質問したり、その一環として議会運営の事実を述べたりしたものであり、懲罰動議に対する「一身上の弁明」にあっても全て事実に基づいて懲罰動議の不当性や4会派による門真市議会運営の異常さを批判したものである。
 そして4会派議員も被告側弁護士も、原告が事実に基づかないことを言ったということは現に何ひとつ指摘できないのであるから、原告発言には「誹謗中傷」のかけらもないこと、また、幹部職員の指名肩書きを特定してその公務執行実態について事実に基づいた批判をすることが「職員の人権侵害」などという論難はおよそ馬鹿げたことでお話にもならないことは自明であり、被告が何ら反論できないでいる事実が何よりも4会派側が「不当ないいがかり」に終始していることを良く示している。
  真実は、4会派議員が「(感情のみで)何ら事実に基づかない」、理不尽な暴論で原告を議会で「誹謗中傷」し続けているのであり、これこそ「断じて許し難い」ことである。

 以上の実態は、準備書面(1)で余すところなく説明されているところである。   
  また、議会に対して「品位を汚し、その権威を失墜する」とか、「冒涜し、信用を失墜させる」、「侮辱している」、などという「議会の品位」問題に集約される原告への非難も4会派議員の理不尽な感情的発言にしかすぎず、真実は、準備書面(1)の、とりわけ「2;日本議会史上前代未聞の懲罰暴走をなす門真市議会と本件訴訟の重大さ」、「3;本件解明に不可欠な門真市議会の特質と運営実態について」で述べたように、 4会派議員の行状こそが「議会の品位を汚し、権威や信用を失墜させる」ものであることは、およそ通常の社会常識を持った人間であれば誰の目にも明らかだし、準備書面や疎明資料に明らかなように、現に数多くの市民や報道機関が批判してきたところである。

6;以上見たように、原告発言が「誹謗中傷」だとか「人権侵害」だとか言う余地はなく、 議会での言論の自由の保障の重大性と原告発言の事実に基づく行政チェックの正当性からして「自己の意見や批判の発表に必要な限度を超えて議員・・など関係者の正常な感情を反発する言葉を言う」、という部分に抵触するはずもなく、どう考えても「無礼の言葉」には該当しないのである。
  また、議会規則の「議会の品位」を汚したとする非難については、その実体は4会派議員の「己を省みない」単なる理不尽な感情論でしかないことは明白であるからこれにも該当しない。
  従って原告発言を懲罰の理由とした本件懲罰は「懲罰事由がないのに懲罰処分をした」冤罪事件であり、「違法な懲罰」であることは明白である。