☆ 切ないなぁ、産廃ゴミの山の山本組裁判
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11/22山本組ゴミの山事件裁判では、「懲役3年、罰金200万円」の求刑が行なわれて、12月13日に判決となった。(午後3:55、大阪地裁1004号法廷にて)
産廃ゴミの不法投棄で山を作った行為は誠に身勝手でケシカランのだが、裁判の中で浮かび上がってきた犯行の背景というのが、刑務所帰りの下っ端ヤクザが、これではアカンと組を抜け、堅気の世界に入って解体業者を生業とした中で起こった事だった。
開業当初は7〜8人の従業員を雇って順調に稼げたものの、環境行政の整備と共に、ある時から自分が解体し引き取った産廃の処理料金が一挙3倍に値上げとなり、まともな経営が成り立たなくなる。
というのは、解体依頼主側が「最終処理料金一挙3倍値上げ」に全く理解を示さず、それに見合った解体料金上積み合意どころか、値下げ押し付けをするほど、業界モラル無き仕事の奪い合い状況があった上に、下っ端ヤクザ上がりの前科者ということのせいであろう、仕事をもらうのは常に口利きの「ブローカー」を通してしかやったことがなく、そんなブローカーを通しての話は元値が安い上にその半分を口利き料としてピンハネされるのだから。
そして従業員を抱えて仕事を干されること恐れた被告は、そんなブローカーに逆らえない。
例えば、「解体工事で隣接建物に傷を付けた」ことをネタにされて、修繕費30万円程度で自分で修繕できるものを「修繕費290万円請求」されて、結局解体料金250万円の工事をただ働きさせられたり、本来元請けが負担すべき予定外の湧き水への対策費400万円を被らされたり、無理な単価で600万円の赤字を出したり、など散々な目にあって5000万円の借金を作ってしまう。
こんな最低な業界環境にあるにも拘わらず、それでも解体業を止めようとせずに固執した被告は確かにアホである。「酒もギャンブルはやらない地味な生活」と情状証人は言うものの、かつては派手な外車を乗り回したこともあったらしいから、「夢よもう一度」という妄想から脱出できなかったのかもしれない。
しかし、前科者が堅気になって初めて成功した仕事たる「解体業以外に自分にできる仕事はない」という思いこみに囚われて、そこから抜け出すことができない哀れさと、そういう人間に対して決して暖かくも低くはない「堅気の世界の壁」ということも考えざるを得ない。
事実経過から見えてくるのは被告の気の弱さと優柔不断、そしてそれにつけ込んだ解体依頼者や元請け・ブローカーの悪質さである。
さらに被告は本件以前の不法投棄事件で有罪・執行猶予判決を受けており、本件で有罪=執行猶予取り消し=刑務所送りとなるのが普通。
こうなるとあのゴミ山はどうなるのかという問題もあるが、内妻と被告との間にできた1才半の子どもは父親から引き離されてしまう。(その子どもが法廷から出されて泣いている声が法廷に聞こえている)
そして実は2人目の妊娠もしたが、育てていけないので先月中絶したということや、前夫との子どもも2人いて、生活保護を受けている実父に養育してもらっていることなどが、情状証人たる内妻の口から語られる。
そういった状況の中での借金5000万円と撤去費用見込み1700万円なのだが、それでも自分もパートに出て働きながら被告と親子一緒に暮らしていきたい、と内妻は言う。
もちろん、だからと言って「結局全てのシワ寄せをゴミの山に転嫁させた」被告の罪は軽くない。「次は実刑と知りながら不法投棄を重ねたことは悪質」という検察官の弁論はまさに正論である。・・・、がしかし、この事件には切ないものを感じざるを得ないのが率直な感想だ。
そして、不法投棄開始早々に地権者や直近の五味議員などが厳しい対応を取っていれば、ここまで重苦しいことにはならなかったのに、という思いも湧いてきた。被告一家の行く末とゴミの山の完全撤去の道筋(=実際の責任分担をどうするか)と、どちらも切ない話である。