日本赤軍の捜査に名を借りた無差別の市民団体に対する
捜索押収に抗議する市民団体共同アピール

 

赤軍関連の相次ぐ捜査と押収

 最近数次にわたり、全国各地の様々な活動に取り組む市民団体のメンバー、社民党や革新系無所属の地方議会議員、出版社などの自宅・事務所に対する捜索押収が繰り返されている。これらの捜索押収は日本赤軍メンバーとされる重信房子容疑者の有印私文書偽造・同行使、旅券不実記載、旅券法違反被疑事件に関するものとされている。さらに最近には日本赤軍が組織的に社民党に接近しようとしてたかのような新聞報道までなされるに至っている。
 しかし、これらの市民団体メンバーや地方議員は、重信容疑者とは何の関係もなく、合法的な市民活動・政治活動に従事してきたものである。


公安情報の収集が目的

 政治団体は公表されている政治目的に従って、市民団体は活動目的を共通する個人が、これに賛同するメンバーの内心まではわからないし、団体にはそのようなことを審査すべき権限も義務もない。仮に団体メンバーが個人として容疑者と何らかの関連があるとしても、それはあくまで個人の内心の問題であり、そのようなメンバーがいたというだけで団体の構成員を一網打尽にするような捜索、差し押さえをすることは絶対に許されないことである。
 先に実施された市民的な政治活動団体である「希望21世紀」関連の捜索で押収された押収品については、東京地裁に押収に対する準抗告を行った結果、警察によってすべての押収品が返却されている。にもかかわらず、引き続き、無関係な市民団体や地方議員に対する捜索押収を繰り返していることは明らかな違法捜索である。

 また、捜索機関は今回の一連の捜索で大量の市民団体等の名簿を差し押さえている。刑事訴訟法99条は、差し押さえの対象物を「証拠物(または没収すべき物)と思料するもの」に限定している。同条は、一般令状を禁止し、捜索機関による無差別の捜索・差し押さえを防止しようとした憲法35条の趣旨を受けての規定である。従って、差し押さえの対象物として許されるのは、被疑事件と密接に関連したものでなければならない。差し押さえられた名簿等は、いずれも旅券法違反事件と関連するものとは到底いえない。必要な証拠収集の限度を遙かに逸脱した一般的な公安情報の収集であり、市民活動そのものと市民活動と連携してなされている社民党やその他の革新的な政治活動に対する弾圧そのものである。


市民活動に対する大きな萎縮効果

  また、これらの捜索押収は、私たちのような多くの市民活動に従事する物に対しても「警察ににらまれるとガサ入れを受けるのではないか」というような心理的な圧迫を与えているのは事実である。本件差し押さえを担当してたのは警視庁の公安部門であり、本件差し押さえは、日本赤軍の事件を奇貨として、そもそも事件と何の関係性もないことを知りながら、事件の捜索に名を借りた市民運動に対する情報捜索と社民党や革新系無所属の地方議員の政治活動を封じ込める目的を持って敢行されているものと言わざるを得ない。このような違法な捜査が一般の市民活動に対する大きな萎縮効果を及ぼしている。


警察に抗議し、裁判所に令状審査の厳格化を要望する

 私たちは、非暴力を基本として、環境問題や人権問題に取り組んできた市民団体である。今回の日本赤軍に対する捜査に名を借りた市民団体と地方議員に対する違法な捜索押収を放置すれば、私たちの市民的な自由は窒息させられてしまう危険性があると考える。私たちは、警察の違法な捜索押収に対して強く抗議し、公安情報の収集のための捜査を直ちに中止することを求める。また、裁判所に対しても、日本赤軍関連というだけで、判断を停止してしまうのではなく、令状審査を厳しく実施し、違法な捜査を未然に抑制する司法の人権保障機能を果たすように強く要望する。

                                               2000年12月25日

呼びかけ人・呼びかけ団体 (あいうえお順)
        アジア太平洋資料センター
        グリーンピースインターナショナル
        原子力資料情報室
        市民の意見30の会・東京
        日本消費者連盟
        ピースネットニュース
        横浜事件の再審を実現しよう!全国ネットワーク
        大津 健一 (日本キリスト教協議会総幹事)
        海渡 雄一 (弁護士)
        木邨 健三 (日本カトリック正義と平和協議会事務局長)
        堀井  準  (弁護士)

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           弁護士  海渡 雄一