12月9日に出された勾留の決定に対して、12月10日に弁護人から申し立て られた準抗告の内容です。同日、接見禁止決定に対しても準抗告を申し立てまし た。その日の内にどちらも棄却されました。

申立の趣旨  

原裁判を取り消し,検察官の勾留請求を却下するとの決定を求める。

申立の理由

1勾留の理由がない  
 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由も逃亡し又は逃亡すると疑うに足り る相当な理由もない  
 捜査機関は,逮捕に先行して,本年11月9日に,被疑者の事務所,関西地区 生コン支部事務所など計約20か所を捜索した際,前日までにマスコミ各社に, 捜索の日時と場所を公開した上で,テレビカメラ・新聞記者を同道して,捜索を 行う様子を,録画・撮影させた。
 さらに,12月8日の逮捕に際しても,同様にマスコミ各社にあらかじめ,逮 捕の日時と場所の情報を公開して,市役所の議会控え室をテレビカメラや新聞記 者に取り囲ませた上,控え室内で逮捕状を執行し,手錠をかけるところまでテレ ビカメラ・新聞記者に撮影させて逮捕した。
 捜査の密行性の要請からの配慮など捜査機関にはかけらも見られない。
 以上のような事実は,本件被疑者に,罪証隠滅のおそれも逃亡のおそれもない ことを,捜査機関がもっともよく熟知していることの現れである。

2 違法な目的の勾留である
 本件勾留請求は,被疑者らに対する社会的信用の失墜と,関係被疑者である, 全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部委員長武建一の身体拘束の続行 とをもっぱらの目的とするものである。
 政治資金規正法違反の事件はこれまで繰り返されてきているが,被疑事件が政 治資金規正法違反だけの場合に,逮捕勾留された国会議員はいない(本件として 詐欺等がある場合に,政治資金規正法違反を別件として逮捕された例はある)。 たとえば,金丸信のいわゆる5億円ヤミ献金事件では同被疑者は取り調べさえ受 けることなく陳述書だけを提出して略式罰金で終結したし,現在,東京地方裁判 所で,公判が係属中の村岡兼造のいわゆる1億円ヤミ献金事件では,被疑者の否 認にもかかわらず,身柄拘束のないまま在宅で起訴している。
 これらの事件に比して,本件被疑事実は(その真偽は措く),捜査の遂行に際 して,被疑者の逮捕勾留をもって臨まなければならないほどの,あるいは,捜査 機関が捜索・逮捕のたび毎に報道各社を大動員して報道させなければならないほ どの事案であるのか。否であろう。
 被疑者は,情報公開や公費の無駄遣いのチェックにいかなる党派に属すること もなくただ一人で取り組み,前々回市議選の最下位当選から,前回にはトップ当 選するほど,市民の支持を得ている。また,被疑者が所属する全日本建設運輸連 帯労働組合も多くの労働者が結集し,労働条件の改善を勝ち取るとともに,反戦 平和の運動に取り組んできた労働組合である。
 捜索・逮捕時の異様とも言うべき,捜査機関による大々的な報道協力(という よりも報道要請)は,本件強制捜査が,被疑者らの信用失墜を目的としていると しか考えることができない。
 また,前記武建一は,本年1月13日に,他の組合員らと共に,威力業務妨害 等の被疑事実で逮捕され,その後,勾留・起訴され,現在まで身体拘束のまま公 判が続けられている。しかし,12月12日の公判期日には,武建一も含めて全 被告人の被告人質問が確実に完了することが見込まれ,同日,保釈請求がなされ れば,裁判所がこれを斥ける理由は全くない状況となっている。被疑者に対する 逮捕は,この保釈を目前にした逮捕であった。
 捜査機関は,11月9日に証拠品を押収しながら,その後,被疑者の逮捕を長 らく行わなかった。捜査機関は,被疑者が訪韓を公言している(現に訪韓し,逮 捕の可能性を知って帰国した)にもかかわらず逮捕を行わなかった(これは捜査 機関が被疑者が逃亡するとは考えていなかったことの証である)。そして,1ヶ 月をおいて,武建一の保釈を目前にして,逮捕となった。
 現時点では,未だ武建一は逮捕されていないが,捜査機関は,武建一について は,来週(つまり保釈決定の当日であろう)逮捕すると言明し,その旨,マスコ ミ報道されている。保釈の妨害がもっぱらの目的であることをあからさまに示し ている。
 以上,本件勾留請求は,勾留の理由がない上,違法な目的の勾留であるから, 却下されるべきである。