12/20勾留理由開示公判意見陳述書

2005年12月20日

勾留裁判官 長瀬敬昭 殿

(大阪西警察署235号)
門真市議会議員・連帯ユニオン近畿地本委員長
戸田ひさよし

 被疑者として不当に逮捕・勾留されている、門真市議会議員かつ連帯ユニオン近畿地本委員長の戸田ひさよしです。
 まず、傍聴席をいっぱいに埋めてくれている皆さん、廊下に待機している皆さん。
逮捕以来11日ぶりに皆さんの前に出てきました。
 取り調べの公安刑事は、「ずっと勾留して年末28日に起訴だ」とか、「その後、正月を過ぎてもずっと出れないぞ」などということを言っておりますが、何を言われようと、何が起ころうと、私は戦闘意欲満々で、気力体力とも充実して元気いっぱいです。
 今回の連帯ユニオン第三次弾圧は、直接的には3人の身柄を取られ、派手な信用失墜宣伝攻撃にさらされた痛手はありますが、一方では、権力側の悪あがきであり、連帯のスポークスマン、議員でもある私への逮捕宣伝攻撃によって、かえって、これまでよりもさらに広範な人々の耳目を連帯ユニオン弾圧問題に引きつけ、これからの大衆的反撃の土台をより広げてくれたものでもあります。
 韓国の労働者民衆が集会のたびに唱える、「タンギョル!」「トゥジェン!」、すなわち「団結!」と「闘争!」によって、一見ピンチに見える状況をチャンスに転化していくわれわれの真骨頂を、獄の内外をつないで示していくことを皆さんと共に心中深く確認しつつ、私は、今私の正面に座っている、私への勾留と接見禁止を決定したご当人、長瀬敬昭裁判官に対して、順次意見を述べていきます。

 そもそも、勾留理由開示公判は、勾留決定をした裁判官に対して、その理由が正当であるか否かの問い直しを行い、裁判官は自分の出した勾留決定への批判や問題点指摘を受けて、それらの指摘の方に道理があれば、それを受け入れて勾留を取り消す途を開くための制度でもあるはずで、勾留理由の単なる「開陳」のための場ではないはずです。そのため、この公判が終わった後に、被疑者側が勾留取消請求を出せば、裁判官がそれへの回答を出すことになっています。
 それで、先ほどからの当方弁護人の「勾留は不当だ」という具体的で詳細な主張と、長瀬裁判官の抽象的で具体性のない主張を比べてみれば、長瀬裁判官の主張はまったく道理が立っていないことは、誰が聞いても明らかなのですから、長瀬裁判官は、この公判での論議によって正しい考え方が発見されたことを素直に喜びながら、私と○○さん、武委員長の勾留を取り消す決定をすぐに行うべきです。

 さて次は、本勾留自体が不当なのですが、その中でも、長瀬裁判官が、拘置所ではなく、あえて留置場を指定して私を勾留している問題です。
 今あなたの手元には、私の手書き文字による意見書が出されていますが、それを留置場で書き上げることにどれほどの苦労を被疑者が強いられているか、あなたはわかっていますか。
 留置場では、筆記具を使える時間帯は1日にたった9時間半だけ。しかもその中に取り調べがあり、昼食・夕食があり、貴重な弁護士接見と週2回は風呂があり、実際に書き物ができるのは、1日のうち1〜2時間だけ(私の場合、当局に要求して2日間だけ特別的に時間が少し増えましたが)。しかも、うるさくがなりたてる場内ラジオに気を散らされ、机もなくて、膝の上に用紙を置いて、自分用、裁判官用、弁護士用の3部を書き上げたわけです。
 書面作りだけでなく、せっかく接見禁止の一部解除によって、現職市議として、議案書など議員配布資料の差し入れを受けているのに、夜9時から翌朝7時半までは当局に本類はすべて回収されて目を通せない。読める時間帯でも、夜6時半からは文具を取り上げられてしまうため、アンダーラインを引くことさえできない、というのが留置場の実態です。これが拘置所であれば、机が与えられ、一定数の書類や文具を終日房内に置いて使うことができます。
 それなのに、長瀬裁判官は、より不自由な警察留置場をあえて指定して12月28日まで勾留せよ、との決定を出している。いったい、何を考えてそんな指定をしたのですか?!
 さらに留置場では、毎晩文具類を回収されるために、取り調べに対して黙秘していても、警察署内で取調官が、私の書きかけの原稿を毎日のぞき見ることが簡単にできるのであって、被疑者の黙秘の意志を踏みにじって、その内心を取調官が書き写すことさえできるのです。
 長瀬裁判官、あなたは、警察に逮捕された者は、警察の意のままになる状況に置くべきで、被疑者の防御権も、83年最高裁大法廷判決での「一般市民としての自由の保障」も必要ない、という考え方の持ち主なのですか?
 そうであってはならないはずです。

 さて、以上で前半部分を終わって、次に後半、本論部分に入ります。
 まずもって、私は、本件逮捕、勾留に対して大きな怒りを持っています。それは、本件逮捕が、大資本に拮抗して、労働者及び良質な中小企業の権利と生計を守るために、果敢かつユニークで先進的な運動を展開してきた連帯ユニオン関西生コン支部の運動と組織を潰すため、その中でも本年1月13日、3月9日の2回の逮捕弾圧でずっと勾留監禁を続けてきた生コン支部の武委員長を、これからも延々と監禁し続けるための、極めて不純な警察政治的な目的を持ったものだからです。
 そのせいで、私の地元の門真市民・有権者の皆さんにあっては、突然に戸惑わされ、驚かされるような形で、私が門真市の現場から切り離されてしまったわけで、この事態については、私としても心苦しく思っておりますし、今はまだわかりにくい部分もあろうかと思いますが、今後裁判が展開されていけば、実相が明らかになっていくことですから、私のこれまでの実績と、心根に信を置いて、じっくり見守っていただきたいと思います。
 また、権力の悪らつさによるものとはいえ、私だけでなく、武委員長の再々逮捕・勾留、事務員さんの逮捕・勾留という事態が発生したことに関しては、反弾圧闘争の一角を担ってきた近畿地本委員長としての力不足を申し訳なく、かつ悔しく思うものであります。
 この悔しさと怒りに立脚し、今後、よりしっかりした闘いの構築に奮闘する決意を私としては固めているところです。

 さて、私に対して一本の呼び出し状も寄こさなかった警察が、12月定例議会本会議前の、議案説明を受けているさ中、なぜ突然、大勢のマスコミを動員して市役所・市議会に乗り込んできて、テレビカメラの放列の前で私を逮捕、連行し、長期監禁するようなことをするのでしょうか?
 こういった異常なやり方の中に、本件弾圧の本質が如実に示されています。
 私に対する家宅捜索、逮捕、取り調べの担当者は、大阪府警警備部公安3課の光井弘警部補ですが、この光井警部補らの公安チームこそは、左派的な労組・大衆運動団体に対して、数々のデッチ上げ弾圧、コジツケ弾圧を行ってきた部門です。
 その端的な例を挙げれば、門真市の隣街の寝屋川市での、「部落解放同盟全国連寝屋川支部へのデッチ上げ弾圧事件」です。
 これは、同支部の青年役員が、就職した会社で労災で仕事ができなくなり、そのことを理由に解雇通告を受けたため、たしか2〜3人の仲間と一緒に会社に行ってかけあった結果、解雇予告手当金を支払わせて円満解決した、それだけの話を、なんと光井警部補らの公安チームが無理やりに、「企業への金銭恐喝事件」にデッチ上げ、役員らを逮捕した、というとんでもないものでした。
 光井警部補ら公安3課は、この常人では考えもつかないデッチ上げ弾圧をするために、その会社に無理やり被害届けを出させたり、さもさも凶悪事件であるかのように演出するために、マスコミにたっぷり情報操作リークをしていきました。そうした作られた雰囲気の中で、逮捕された人たちは1年近くもの間、接見禁止で勾留されたのです。
 幸い、この事件は、今年のたしか7月だったと思いますが、大阪地裁で完全無罪の判決が出され、それには、さしも悪らつな検察側も控訴を断念せざるをえなかったほどです。
 しかし、デッチ上げの張本人の光井警部補ら公安3課は、これほどの人権侵害をしておきながら、当事者への謝罪はおろか、一片の反省すらせずに、今度は連帯ユニオン関生支部と私への弾圧に矛先を向けているわけです。
 また、光井警部補は、12月13日火曜日午後2時40分から4時25分までの私への取り調べの中で、○○さんのことを取り上げて、「事務員さんもまだ勾留中や、気の毒にな」とうそぶきながら、「ま、生コン支部について他にもいろいろ聞きたいこともあるしな」、と思わせぶりにニヤリとしながら、こちらの表情を探りました。これなどは、まさに「語るに落ちる」であって、○○さんの逮捕・勾留の目的が、本件の範囲をはるかに超えた、生コン支部への情報収集、その強要にあることが如実に示されています。
 さて長瀬裁判官。公安警察や検察が犯してきた問題は問題として、彼らの言うがまま、求めるがままに、逮捕令状や勾留決定、接見禁止決定を次々と出してきた裁判官たちの判断責任は、どう考えるべきでしょうか?
 それは、決して日々のルーティンワークのひとつとして軽く考えてよいことではありません。
 事務員としての仕事をしてきただけの○○さんを、すぐに家族の元に返してください!
 マンション構造問題も加わって、一層混乱を増している建設関連業界を立て直すためにも、武委員長を、すぐに労働組合と生コン産業の現場に復帰させてください。
 そして私、戸田をすぐに門真市民の元に、連帯ユニオンの仲間の元に返してください!
 今ここに、私が手にしている議案書類にもあるように、現在、門真市議会の年に4回しかない定例議会の開会中で、明日21日の最終本会議においては、「指定管理者制度導入の条例」制定など約20本もの議決があり、また、市政への一般質問や意見書採択が行われますから、議員である私の議会出席を、これ以上妨げないでください。
 また、議会出席だけでなく、私は議員として日常的に市民の相談に対応し、市政を調査・研究し、提言をする活動をしていかなければなりません。それらへの妨害は直ちにやめてください。
 何十日間勾留しようとも、私は警察や検察に対しては黙秘を続けるのですから、それがこれほど明らかであるにもかかわらず、勾留を続けるということは、黙秘への報復・嫌がらせとしての勾留であり、また、地方自治と議員活動への妨害・蹂躙以外の何物でもありません。
 警察や検察が本当に私が有罪だと思うのなら速やかに起訴すればよいのであって、そうすれば私は裁判の場で堂々と受けて立ち、権力弾圧のもくろみを打ち砕きます。
 私たちに対する本件の逮捕も、勾留もまったく不当です。
 長瀬敬昭裁判官が、良識を取り戻して勾留解除の判断を下すことを求めて、私の陳述を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。