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原発収束作業の現場から (その2) 『未来』読者 12/6/11(月) 17:36
原発収束作業の現場から (その3) 『未来』読者 12/7/12(木) 13:17

原発収束作業の現場から (その2)
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 『未来』読者  - 12/6/11(月) 17:36 -
  
阿修羅掲示板に投稿したものを紹介します。


タイトル:原発収束作業の現場から 〜ある運動家の報告〜 (その2)
掲載月日:2012年 6月 08日
http://www.asyura2.com/12/genpatu24/msg/520.html


<前回投稿からのつづき>


[注]1F→福島第一原発
  2F→福島第二原発


II.中抜きとピンハネ

―大西さんの会社は何次下請けですか

3次です。
一番上の発注者が東電。その次が元請け。元請け会社は、東電工業とか、東芝、日立とか、鹿島建設、清水建設などの大手。その次が1次下請け。さらに2次下請・3次下請けは、ほぼ地元の企業。大熊工業とか、双葉企画みたいな名前で、原発周辺でだいたい組をつくっています。組というのは、いわゆる人夫出しですね。
「原発ジプシー」という言い方もありますが、原発労働者は、大部分が、定期点検で全国各地の原発を渡り歩くんですけど、日雇い労働者だけではなくて、それぞれの地元の住民です。
福島、新潟、福井など原発周辺の住民が、原発労働で全国を巡り歩いているのです。そうやって巡り歩く労働者を受け入れる先が、1次・2次の下請け企業です。さらに1次・2次の下請けが抱え切れないというか、すぐに雇用できて、すぐに使い捨てできるような形の3次・4次の下請け会社がたくさんあります。
一番の末端では、親方が2〜3人を連れて、現場を移動していく形になっています。福島の中でも移動していくし、定期点検で人が足りなくなったら全国の原発に人を出していくということをやっていますね。

―大西さんの会社の規模は

うちの組は10人ぐらいですね。社長も含めて親方が3人です。親方が寄り集まって会社をつくっているんで。

―組とは

親方がいるところを組といいます。
班というのもあります。小さな会社が、別の3次・4次の下に入ったとき、会社自体が、「なんとか班」と呼ばれたりします。
結構、複雑です。東電の現地採用の人、元請けの現地採用の人、さらに下請けの会社の人。みんな学校の同級生なのです。地元の人で、顔見知りなのです。
そういう関係で、仕事を回し合うのです。上になったり下になったり、仕事がなかったら回してという具合に。だから、複雑になるわけです。

―下請けが3次4次5次と行くと、抜かれ方も酷いのでは

建設労働はみんなそうなんですけど、原発労働はそれ以上。
例えば、東電が「1人、1日、10万」で出したら、末端では1万5千円になるっていうぐらいの計算ですね。

―親方というのは待遇が違う

それは「抜ける」ということです。親方になったら。
だから僕は親方になるのがいやなのです。
私の友人は、僕よりつらい仕事をやっても、日給8千円。正式には3次かも知れないけど、実質的には5次みたいな会社だったようです。

―大西さんはいくら

9千円〜1万円ですね。正規に3次でそうなります。
1次・2次がボコッと抜いているし、自分の親方もとっていますから。

―そのことをめぐるいざこざは
ありますよ。あっちこっちで。刺したり、刺されたり。「危険なことだけやらせやがって」と。

―労働基準法に照らしてどうですか

一番最初の段階からダメですね。労働契約書は交わさないですから。
だから、賃金を払う段になって、何とかを引いて、何とかを引いてと。そうなると、「おい、それは聞いてないよ」ということが起こります。
例えば東電は、泊まる人には食費を支給しています。だけどその食費をなぜか引かれてしまっています。
東電は、メシと風呂と寝ることに関しては「なし」(=会社持ち)としています。さらに、早出で朝飯が食えないとか、夜遅く帰ってくるから晩飯が食えないというときは、「その飯代も支給しますよ」となっています。
だから東電から元請けに食費としてお金が入って、それが1次下請け・2次下請けにいくんですけど、その段階で何故か消えてるんですよね。
それから交通費も。湯本から往復で100キロです。ガソリン代で千円から2千円が一日で飛んでしまいます。 だけどその交通費が込みになっていたりします。
ひどい話ですけど、それは、そもそも労働契約書を交わしてない時点に問題があるわけです。

▼悪徳企業

でも、ちょっと次元の違う意味で酷いところがあります。企業名を言うと、アトックス(ATOX)という会社。
元の名前がすごいです。「原子力代行」。代行というのは、「原発における諸雑務、一番下の仕事に人夫出しをしますよ」ということです。
カタカナとかローマ字になっているからごまかされるけど、一番ひどい会社です。ある意味、東電以上。
樋口健二さんの写真集に、「雑巾掛けが一番あぶないんだぞ」という話が出てきますが、その作業をやっているのはアトックス。

―どういう点がひどい

僕ら放管(放射線監理員)が、作業員をサーベイ(放射線測定)していると、とにかく一番無防備で、危険な作業しているのが、アトックス。作業員の線量が一番高いのです。
知っている人は、みんな、元請けがアトックスと聞いたら、その会社には行かない。アトックスには地元の人はいないです。
知らない人がアトックスに行く。東京のプレカリアート層だ。
普通に「寮付で、飯が食えますよ」と、雑誌とかホームページに出ている。
もちろん、危険な作業への従事についてなど、一言も書いていない。
たしかにアトックスでは技術は必要ないです。いまだに雑巾掛けですから。
しかもアトックスは、タイベック(※)も着せないで、低レベルの放射性廃棄物を扱わせたりとかしていている。

※高密度ポリエチレン不織布〈タイベック〉でつくられた防護服

僕らだったら、危険作業に従事していることをわかっているから、低レベルでも放射性廃棄物を扱うときは、タイベックを着て、ゴム手袋を二重にはめて作業をするけど、アトックスの人は、綿の手袋だけで、タイベックも着ない。そういうことを知らない。もしくは、下手するとゴム手袋とかタイベックを着ることを禁止されてるかもしれない。分からないけど。
だから、放管として、一番気をつけているのは、アトックスの作業員。
他の作業員は、タイベックを着ているから、それを脱いだら、そんなに線量は高くない。だから、そんなに詳しくはやらない。だけどアトックスの作業員だけは、どの放管も、とにかく、袖口とか、一番汚れやすいところを厳しくやって、すぐに水で洗うようにとかアドバイスをしています。

▼労働条件引き下げの先兵

原発専門で人夫出しをしたら儲かるということで、1990年代の派遣法改正のときに、真っ先にそれに目を付けたのがアトックス。それがいまや、日本では一番大きい人夫出し業者。全国区で展開している。
発注元が東電だとすると、元請けが東芝とか日立とかで、その下の1次下請けになる。1次下請けの立場で、全ての業務をこれからおさえようとしている。
人をシステマティックに集めるノウハウを持っているからですね。
ヤクザなんかとかは違う。数年前に問題になった人材派遣会社のグッドウィルみたいな感じと言えば、イメージが浮かぶのでは。
とにかく労賃がむちゃくちゃ安い。そして、元請け企業には、格安で受注しています。タイベックを着なければ、それで経費が浮きますから。
実は、原発労働者の労賃が、すごくディスカウントしているけど、アトックスの影響がものすごく大きい。
あらゆる元請けにアトックスが入り込もうとしているので、そのせいで、どんどん労賃が下がり続けている。除染作業は、アトックスがほぼ独占しようかという勢い。
だから、除染というと単価の話になって、安ければ安いほど良いかもしれないけど、実は、それが原発の被ばく労働の単価をどんどん押し下げている。
結局、アトックスが、賃金の面でも防護策の面でも、労働基準法や放射線障害防止法の壁を取っ払う役割を果たしている。
冷血ですよね。次から次へと供給できるから、労働者を使い捨てにしている。アトックスの働かせ方は、危険だと感じています。

―雇われている人たちは都市の若年層ですか

そうですね。一番若いです。ほぼ全員二十歳代。
現代の縮図みたいです。
地元の人はほとんどいない。
現場でも、アトックスの人だけ孤立してますね。かわいそうですよ。
しかも、他の下請けに行ったら、しばらくいればある程度の技術なりが身につくでしょうけど、アトックスにいたら技術も身につかないですから。何年やってもふき掃除、何年やってもごみ片付けです。

―実態はマスメディアには知られてない

知られてないでしょう。

―労働運動では

多分、僕しか知らない可能性が。原発労働者の間では有名ですよ。アトックスって言ったらもう「あんな危険なことさせてるよ」とか「あそこの除染作業をあんなダンピングの価格で請け負っちまって、おれらどうすりゃいいんだよ」とかね。


III.地元労働者と新たな貧困層

―収束作業に携わっている人たちはどういう人ですか

出身は、ほとんどが原発立地周辺の市町村です。いまも収束作業をやっているのは、泊、福島、柏崎、福井、浜岡などの人たちです。
僕の今の実感としては、8〜9割ぐらいかな。
なぜそうなっているかというと、自分の地元だから何とかしないと、という気持ちがあります。それで食ってきたから、それ以外の仕事ができない、ということもあります。二重の意味で、閉鎖的な環境で作業が行われているのです。
東京・首都圏という電力の消費地が、福島や新潟のような地方を、ある種の植民地にしたような状況にあると言えると思います。経済的に見ても、歴史的に見ても、東北というのは、低開発になるようにずっと強いられてきた。そういうところに、「雇用を生み出しますよ」という形で提示されたのが原発ということなのでしょう。

▼地元のつながり

現場にいて感じるのは、現場の労働者が、どの会社にいようと、東電であろうと、みんな顔見知りなのです。
小学校が一緒、中学校や高校が一緒、町が一緒という形で、みんなそこに住んでいる住民。だから、「あいつ同級生、あいつ後輩」という感じです。
東電についても同じです。地元採用枠というのがあって、一生、本社に出ることはなく、出世とは一切関係なく、地元の原発を動かしながら一生を終えるために採用される人です。
危険要員という面もあるでしょう。実際、東電の社員という一括りで非難するけど、いま一番危険な作業を行っているのは、実は地元採用の東電社員かもしれません。
危険な作業というのは、下請けだけではないのです。僕は、東電社員と一括りには、ちょっとできないなと思います。だって、「親戚の息子が東電」「知り合いの兄さんが東電」という具合ですから。
だから、現場では、同じ東電でも、地元採用の東電社員にたいする視線と、東京にいて指令を下すだけの東電社員にたいする視線は違います。

―現場で、地元採用の東電社員は

以前は、東電の社員というのは、ふんぞり返るのが仕事。作業はしない。地元採用でもそうでした。
地元採用の東電社員は、高校で一番とか、生徒会長をやったという人でしょう。現場で作業するのは、同級生でも「落ちこぼれ」の人という感じです。
いまでこそ東電の社員は、僕らみたいな協力会社の社員にも頭を下げて挨拶するようになりました。以前は、「おはようございます」と言っても無視するのが当たり前だったのに。いまは向こうから頭を下げて、「おはようございます」と言うんですよね。

▼新たな貧困層

―原発立地周辺以外だと、どういう人たちが

後のことはどうなってもいいという人たちがいます。そういう人たちが、1カ月に何十ミリシーベルトも浴びても構わないという風になっています。
その人たちは、そうなった事情があって、借金を背負ったりで、「一攫千金を得たい」と。千金はもらえないんですがね。それでも、「普通の仕事の倍は稼ぎたい」という人です。
「危険だ、危険だ」と言われながら、その危険がどういうものかという知識を持っていない人、知らされていない人たちです。
3・11以降、1F(福島第一原発)を中心に、そういう新しい層が、危険も知らないで、飛び込んで来ています。
1Fの収束・廃炉の作業には、これから、数十万人、百万人単位の人が必要になります。そのとき、確実に言えるのは、新たな原発労働者の層は、プレカリアートといわれている人びと、貧困に陥った若年労働者になるでしょう。

(つづく)


以上、『未来』102号、103号
http://kakukyodo.jp/12mirai.htm

より引用。
引用なし
<Mozilla/5.0 (Windows NT 5.1) AppleWebKit/536.5 (KHTML, like Gecko) Chrome/19.0...@p1088-ipbfp3601osakakita.osaka.ocn.ne.jp>

原発収束作業の現場から (その3)
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 『未来』読者  - 12/7/12(木) 13:17 -
  
阿修羅掲示板に投稿したものを紹介します。


タイトル:原発収束作業の現場から 〜ある運動家の報告〜 (その3)
掲載月日:2012年 7月 12日
http://www.asyura2.com/12/genpatu25/msg/557.html


<前回投稿からのつづき>


原発収束作業の現場から
〜ある運動家の報告〜


[注]1F→福島第一原発
  2F→福島第二原発


【IV】原発労働の現場と反原発運動とのかい離


――原発の現場に入って、労働者の命と権利を守るための方向は見えましたか

大西:簡単ではないことが分かりました。ムラ社会の中に、労働運動をもちこむことの難しさがあります。声を挙げたら一生食えなくなる。

――原発事故という形で、この社会の根幹が揺らいでいます。住民運動・市民運動・農民運動なども大きく動き始めています。その全体の前進の力で、原発労働の厳しい現実をも跳ね返す空間を作っていく、ということではないかと考えますが

大西:そういうことも考えています。ただ、現状だと、それを一緒に作っていくという方向を、反原発運動の側が向いていない。逆に原発労働者を孤立化させるように、運動の側が世論を形成しているように感じられます。

――それはどういうことでしょうか

大西:「東電社員の賃金なんかカットしろ」といったことを運動の側が言いますよね。もちろん東電は悪いですよ。
 だけど、そうすると何がカットされるかといったら、東電社員の賃金もカットされますが、作業員の賃金もカットされるのです。本当にひどい構造。
例えば、「東電を解体しろ」と言う。そこら辺までは分かります。でも、東電や協力企業を全て潰してしまったら、実は、原発が動かないという次元の問題ではなくて、収束や廃炉の作業ができなくなってしまうんですよ。


▼まもなく作業員が枯渇

――作業ができなくなるとは

大西:原発労働者が足りなくっています。
放射線管理手帳をもっている労働者は約8万人。その内の3万5千人が、もういっぱいまで浴びています。9カ月で半分に減っちゃったんです。今のペースで行くと、たぶん(2012年)夏ぐらいには、原発労働者の人数は枯渇するんです。
 そうなると1F(福島第一原発)の収束作業はもちろん、他の原発の冷温停止を維持することさえもできなくなる危険があるんですよね。
 まして廃炉というのは、1Fの作業で分かる通り、人数がものすごくいる。国内の54基全部を廃炉にするというなら、数百万人の労働者が必要です。

――そういう問題として受けとめていませんでした
  
大西:収束とか廃炉とかの作業を、原発労働者がやっているという感覚を運動の側が持っていない、身近なものとして感じていないという気がします。
 「廃炉にしろ」と、東京の運動が盛り上がっているんですけど、語弊を恐れずいえば、特定の原発労働者、8万人弱の原発労働者に、「死ね、死ね」って言っているのと同じなんですよね。「高線量浴びて死ね」と。自分たちは安全な場所で「廃炉にしろ」と言っているわけですから。
 原発労働者を犠牲に差し出すみたいな構造が、反原発運動に見られると思います。
 そういう乖離した状況があるので、福島現地や原発労働者の人と、東京の人が同じ意識に立って反原発・脱原発の方向になることは簡単ではないと感じています。

――自らの問題として、廃炉というテーマに向き合う必要があると

大西:そうですね。廃炉という問題にたいして、みんなが少しずつ浴びてでも作業をするのか、「いや、原発反対なんだから作業もしないよ」というのか。「被ばく労働なんてごめんだ」といってしまうと、では廃炉の作業はどうするのか。東北の人に押しつけるという意味でしかないですね。
 希望的理想的に言えば、1人が100ミリシーベルトを浴びるんじゃなくて、100人で1ミリシーベルトを浴びようよと。
 しかし、現実的には、みんなが、そういう気持ちになるというわけはいかないと思います。
 とすると、2つ道があります。
 1つは、原発労働に従事するからには、被ばくするわけだから、「健康の問題について、一生、見ます。もし何かあったときは補償もします。賃金も高遇します」という風にするべきです。もちろん中抜きはありませんよ。準国家公務員みたいな形で雇ってね。
 もしくは、2つ目は、徴兵制みたいに、「何月何日生まれの何歳以上の人は、ここで1週間、被ばく作業をして下さい」みたいに強制的にやるか。
後者は、すごくいやなんですけど、でも僕が、実際に原発労働をして思ったのは、これは、反原発運動をやっている人は、全員やったほうがいいんじゃないかなということです。
 反原発だけではなくても、もしそこで原発の電気で恩恵をこうむっているんだったら、やるべきなのでないかという気持ちになっています。


▼東京と福島

――東京と福島の関係についても問題を提起されています

大西:そうですね。東京の人びとは、一方的に電力を享受してきた立場で、福島・新潟っていうのは一方的に作って送り続けていく側。福島の人は、一切、東電の電気を使っていません。
そこで問題なのが、圧倒的多数者の東京・首都圏の人たちが、少数の福島・新潟などの原発立地周辺の人びとにたいして、ある種の帝国主義による植民地支配のような眼差しをもっていることです。それは、権力を持っている者、為政者と全く変わらない眼差し・同じような意識です。
それは、運動の側でもそういう眼差し・意識に立っています。それがものすごくこわい。このことに思いが至らなかったら、たぶん反原発運動はおしまいじゃないか。

◇沖縄問題に通底

――これは、沖縄の側から米軍基地問題で提起されていることと通底しているのでは

大西:全くその通りです。僕も、そこにつなげようと思っています。
 琉球民族の土地に基地を押し付けるというのはまさに植民地問題なんです。

――「基地を東京へ持って帰れ」と、沖縄の人たちが言います。それにたいして、本土の運動の側が、激甚に反発します。

大西:そうなんです。
 琉球民族の人口が、だいたい日本民族の百分の一ですね。多数決で言ったら沖縄は一方的に蹂躙される側です。
 そういう関係の中で、本土の側は、体制側であろうと反体制側であろうと、沖縄の米軍基地を引き取ろうとは絶対しないです。
 そういう意味では、為政者・体制と同じ眼差しで琉球民族を支配してます。
 それと同じ構造が、今度は、首都圏が福島や新潟にたいして行っています。

――そういうことが、無自覚に進められる意識構造が、近代日本の基本構造なのでは

 大西:そうですね。沖縄と東北地方に矛盾を押し付けることで、帝国日本が成り立ってきたわけです。その問題が、こんな形でだけども、ようやく見え始めてきました。
 この切り口をどうやって、これまでの運動の本当に反省と転換ということに持っていけるだろうか。それができなかったら、本当にもう大変なことになるなという気持ちです。


▼「ガレキ受け入れ反対」への異議

――全国で、「ガレキ受け入れ反対」が運動化しています

大西:東京や神奈川・千葉で、反原発運動が盛んですよね。
 だけど、たとえば、松戸市や流山市は、降り注いだ放射性物質が濃縮された下水の汚泥やコミの焼却灰を、秋田に捨てていたんです。
 もともと、首都圏は、産業廃棄物を東北地方に捨ててきた。東北地方は、首都圏のゴミ捨て場。そういう構造になっていました。
 松戸市や流山市は、その汚泥や焼却灰が高濃度の汚染物質だということは分かっていたんです。分かっていたけど、国が発表する前に、秋田などに黙って送っていたという問題です。
 だけど、松戸や流山の運動は、このことを問題にしていませんね。

―――たしかに、ガレキ問題は、放射能問題を考え始める契機としてあると思いますが、なぜ東京に電力を供給する原発が福島にあったのかとか、汚染と被ばくに苦しむ福島の住民や被ばく労働を担う原発労働者の存在といったことに思いをはせるということがないと、先ほど言われていた「為政者と同じ眼差し」になっていきますね。

大西:そうです。
 福島の方に、クソをずーっと貯め続けていて、そのクソが飛び散ってしまった。
 東京の人は、「クソが飛んできたじゃないか!」って文句を言っているけど。
 「それ、あんたが流したクソでしょ」って。
 自分のクソの処理ぐらい自分でやんないと。せめて「いっしょに掃除しましょうよ」というふうになりたいんですけどね。反原発であろうと推進派であろうとね。
 ところが、反原発運動をやっている人は、自分たちは被害者で、まったく罪はないという風に思っていますね。

――たしかに、反原発の人でも、加害の問題を提起すると反発しますね。

大西:そうですね。そこにどうアプローチするか。
 「原発を、消極的であれ、積極的であれ、推進してきた側と同じ歩調でいたんだよ」ということを、分かってもらうためにはどうしたらいいのか。
 難しいと思うけど。

――逆の側からですが、原発も汚染土も東京に持って帰れという憤りが、福島の人びとも心の底にあります

大西:もしもですが、「これから第一原発がまき散らした放射能を、全部、東京湾に埋めるんで、東京の人は、気を付けてくださいね」ということをやったら、果たして受け入れるでしょうか、という話ですが、ありえないですよね。
でも、東京の人は、その逆のことを、いとも簡単にやっているのです。傲慢な力を行使していることにすら気づいていないのです。
 ところで、『月刊 政経東北』という月刊誌が、福島にあります。その昨年11月号の「巻頭言」で、次のように呼びかけています。
「・・・霞が関の関心は、大震災・原発事故から年金制度改革やTPPなどに移りつつある。補償も除染も震災復興も不十分な中、抗議の意味を込めて、汚染土を国と東電に返す運動を進めたい。送り先は次の通り。・・・」

――知っています。実際、この呼びかけに応えてなのか、環境省に土が送られました

大西:そう。だからこういう意識は絶対にありますよ。ダンプに積んで永田町や霞ヶ関かに土をお返しするんだという話は、そこここでされています。
それを弾圧できるのか。それを弾圧するとなると、「そもそも放射性物質をまいた人は弾圧されないのか。おかしいぞ」という問題提起ができるわけです。


▼被害者意識から、加害の自覚へ

――被害意識から運動が始まるとしても、その意識をどう発展させられるかです

大西:そうですね。最初の意識は、被害者であっても構わない。
 被害者の自覚も大事です。ただ、そこから自分は加害者でもあったということへの気付きが大事です。被害者意識に留まったら限界になります。
 被害者意識から始まって、加害性に気づいていくのですけれども、実は、さらに、そのあとが重要ではないかと思っています。昔あったような総ざんげに陥ったら、今度は、責任を不在にしてしまうんですね。
 本当の次の段階というのは、「自分たちにも加害責任があるんだ」と気づいたら、「では何をしたらいいのか」というときに、本当に戦争犯罪人を自らの手で裁くことだったはずです。
 
――そう、東京裁判ではなく人民裁判。これができなかったのが戦後の敗北の原点

大西:そうなんです。人民裁判なんです。
 一人ひとりと対話して問いかけていけば、「自分たちも共犯者だったんだ」という意識にはなると思います。だけど、「では誰が悪いんだろう?」ということで、本当の原発推進派が、結局、曖昧にされてしまうということになりかねない。
 そこで、3段階目。被害者意識が第1段階、加害者性の自覚が第2段階だとすれば、そこから国民総懺悔ではなくて、「本当の犯罪者をきっちりと人民の手で裁きましょうよ」という動きにもってかなくちゃいけないと思います。今は、まだ、第一段階の「自分達は被害者だ。ああ、東電ひどい」という形で進んでいる状況です。

――その点で、全国各地の運動は、福島との実体的な交流がまだ弱いという気がします

大西:そうですね。
 福島のひとたちの顔や、原発労働者の顔を思い浮かべて運動をしたら、東京の運動は、被害意識に留まっていることはできないはずです。
 同じことですが、廃炉というスローガンが、観念・抽象の世界にどんどん進んでいくなあっという感じがしますね。

――東京の現場の人たちと、この問題で討論は

大西:僕と意識を共有している人もいます。
 その人は頭を抱えていますね。運動が、「ガレキ受け入れ反対、受け入れ反対」と、だんだん感情的になっていることに、「ちょっと違うんだけど」と言っています。

――そこで運動にかかわっている中心的な人たちの意識や大衆的な論議が重要では

大西:そうですね。
 可能性はあると思っています。そもそもこれまでの労働運動のあり方自身に壁があったわけで。そういう壁を突破していく意味でも、この議論は必要ですね。

(おわり)


以上、『未来』104号、106号、107号
http://kakukyodo.jp/12mirai.htm

より引用。
引用なし
<Mozilla/5.0 (Windows NT 5.1) AppleWebKit/536.11 (KHTML, like Gecko) Chrome/20....@p1088-ipbfp3601osakakita.osaka.ocn.ne.jp>

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