第2;本件が「冤罪事件」であることはあらゆる証拠からも、被控訴人の対応からも明白である

1;地方議会議員の懲罰事由は、地方自治法[第十節 懲罰][懲罰理由]134条に「この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し、議決により懲罰を科することができる」と定められている。これは、議会に一定の自律権能があるとはいえ、その行使が恣意的なわれることのないよう、明文の規定をもって制限的に定め  たものである。(従って、懲罰権の行使は、法規の定める枠内のものでなければならず、その枠を越えれば当然違法となり、それに対しては「法律上の争訟」として、当然、裁判権の対象となる。)

  議員の発言が懲罰事由の構成要件に該当するか否か判断するに際しては、なによりも議会の本来の目的、即ち、議会が住民福祉の向上に最大限貢献すること、そのためには住民を代表する議員の言論の自由が最大限に保障されなければならないという観点から解釈されなければならない。

2;仮に「議会の自律権」を盾に「司法審査の対象ではない」と主張するとしても、「懲罰事由の存在」は説明できなければならない。被控訴人が「説明しない」とすれば、それは「懲罰事由が存在しないからそれを説明できない」ことを自己暴露したと見なすべきなのである。
  実際被控訴人は、わずかに1審6/14答弁書で「議会の有する自律権の発動として本件懲罰処分が行われた」と述べるのみで、懲罰事由認定の妥当性どころか、いったい地自法や議会規則のどの部分を根拠とした懲罰なのかにさえ口をつぐんでおり、「懲罰事由の存在を主張できない」実態がまざまざと示されている。

3;もし本件控訴人議会発言が懲罰事由に該当するとすれば、それは地自治法132条で議員が使用してはならないとされている「無礼の言葉」を使用した、もしくは[門真市議会規則第](甲第23号証)【98条;議員は議会の品位を重んじなければならない】に違反した、というのが懲罰事由であるとするのが被控訴人の立場であると推測するほか  なく、この2つ以外には、法的に控訴人の本件議会発言に懲罰を科すどんな規定も見あたらない。このことは、被控訴人も異論のないはずである。

4;控訴人発言は、一般質問にあっては全て事実に基づいて行政職員の公務執行のあり方  を批判的に質問したり、その一環として議会運営の事実を述べたりしたものであり、懲罰動議に対する「一身上の弁明」にあっても全て事実に基づいて懲罰動議の不当性や4会派による門真市議会運営の異常さを批判したものである。
 そして被控訴人は、控訴人が事実に基づかないことを言ったということは現に何ひとつ指摘できないのであるから、控訴人発言には「誹謗中傷」のかけらもないこと、また、幹部職員の指名肩書きを特定してその公務執行実態について事実に基づいた批判をすることが「職員の人権侵害」などという論難はおよそ馬鹿げたことでお話にもならないこ とは自明であるから、懲罰事由が存在しないことが明らかである。

 また、議会での言論の自由の保障の重大性と控訴人発言の事実に基づく行政チェックの正当性からして「自己の意見や批判の発表に必要な限度を超えて議員・・など関係者の正常な感情を反発する言葉を言う」、という部分に抵触するはずもなく、どう考えても「無礼の言葉」には該当しないのである。
 議会規則の「議会の品位」を汚したとする非難については、その実体は4会派議員の「己を省みない」単なる理不尽な感情論でしかないことは明白であるからこれにも該当しない。いずれにしても懲罰事由が存在しないことが明らかである。

5;(1)被控訴人は、「相手の感情を反発することがあっても軽々しく言論抑制すべきでない」という地方自治法132条の先例解説(当方8/8準備書面34ページ)、


 「もともと議会においては、何にもまして、自由闊達な雰囲気の中で活気ある言論が期待されるものであり、特に議会は執行機関を監視し、牽制する諸々の手続きを与えられており、その一環として、執行機関に対して、その事務に関して証明を求め、意見を述べることができるものであって、かかる場合、議員が質問し、意見を発表するのに、その言辞が勢い痛烈となるのはむしろ好ましく、これがため相手方の感情を反発することがあっても軽々しくその言論を抑制するべきではない」、      


 に対して(本件裁判だけでなく議会などあらゆる機会を通じて)何ら批判や異議を唱えていないから、これを承伏しているものと見なすべきである。
 またこれは、議会人としては当然承伏しなければならない種類のものである。

 (2)被控訴人は、「無礼の言葉を解するのに社交の儀礼を標準としてはならない」、という札幌高裁判決1950年(昭和25年)12月15日判決(8/8準備書面34・35ページと本準備書面)に対しても同様に、あらゆる機会を通じて何ら批判や異議を唱えていないから、これを承伏しているものと見なすべきである。

 (3)被控訴人は全国町村議会議長会の発行する「議員必携」(甲第45号証)の「第二篇議会の運営 第五章 発言」の『発言自由の原則』を中心とした部分にも、あらゆる機会を通じて何ら批判や異議を唱えていないし、当然これを承伏しているもの見なすべきである。
 またこれは、議会人としては当然承伏しなければならない種類のものである。

6;このように整理して考えてみると、懲罰にかかるものとしての「無礼の言葉」・「議会の品位」の認識に幅には、(1)(2)(3)の一般原則においては、控訴人と被控訴人との間に差がないはずである。
 そしてこういう一般原則について差がない以上、個別具体に控訴人発言を検討したとしても、既に述べているように、これが「無礼の言葉」「議会の品位」に抵触するものではないことは本件の場合明白である。
 (1)(2)(3)の一般原則について差がない以上、個別具体に検討しても本件発言は懲罰事由に該当しないのは誰の目にも明らかなのであって、それなのに懲罰を科したのであるから、懲罰事由について口をつぐまざるを得ないのである。
 以上の考察から、本件懲罰に懲罰事由がないことを被控訴人自らが露呈していることが明らかになった。

7;この問題を明らかにするために、控訴人は2002(H14)年1月9日に「第3準備書面;被告への答弁要求書」を提出しているのであって、1審裁判官が被控訴人に答弁を求めさえすれば、本件懲罰に懲罰事由がないことが120%明白になっていたのである。
 被控訴人はこの答弁要求書を突きつけられて万事休す、の体であったにも拘わらず1審裁判官はあえて答弁を求めずに1月10日の第4回口頭弁論をもって結審させてしまったのであり、真理探究を意図的に放棄したと言わざるを得ない。