門真生コン問題;読者からの質問に回答します。@

(これは「自由・論争掲示板」の関連スレッドの中で、戸田が答えたものを編集した
 も のです。)                                 01/05/26記

 まず戸田の認識の前提的な所を紹介してから、具体的な話の方に入っていきます。
戸田としては、連帯ユニオン関西生コン(通称関生=カンナマ)の労働運動を高く評
価 しているので、製造業者である寺舎九さんの現場体験からする認識と意見の異
なる所がいくつかあるかもしれません。
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1;「セメント・生コン工場は世の中に必要なもの」であることは全くその通りです。

2;労働者の生活と権利の向上が真に人間らしい社会の建設のために必要です。
 (中小企業主との協同もこの方向で必要)
 〜アメリカの労働者が初めて「8時間労働」を要求した時は、「夢物語・わがまま勝
 手」と誹謗中傷され弾圧されましたが、それが社会の進歩の方向であったことは
 明白です。「週30時間労働による仕事の分かち合い・家事と社会的活動への一
 層の参加」が現在での世界的な人間文明上のテーマになっています。
 (もちろん第3世界からの搾取にあぐらをかいての特権者運動としてではなく、
  搾取構造を解体していく意識と実効性を持ったものとして)

3;生コン業界の特殊性;材料たるセメントの製造は旧財閥の流れを汲む大独占企業
 で、それを購入して生コンを作り建設業者(これまたゼネコンという大企業が主流)
 に販売する「生コン業者」のほとんど全部が中小零細業者、という企業力の圧倒
 的アンバランス。「ほとんど一体かツーカーの仲」であるセメントメーカーと建設業
 界の間で、安値でこき使われる構造にあるわけです。

 従って、そこで働く労働者の生活と権利を向上させるためにも、また企業を発展さ
 せるためにも、労働者が団結するとともに生コン業者も協同団結すること、そうして
 巨大企業との交渉力を向上させて適正利益を確保して労働者に分配することが必
 要になってきます。

4;生コン業者がワンサカできた1960年代は、ヤクザがらみの所が大半のタコ部屋
 業界で、月の残業が200時間にもなって家にも帰れず、洗濯物を路上で車中から
 奥さんに渡すような労働者の生活がありました。非常に厳しい血みどろの闘いを
 しながら、こういうタコ部屋無権利状況を変えていったのが、(当時は共産党直系
 であった)全自運・関西生コン支部の運動であり、その優れた指導者が現在も現
 役の武建一委員長でした。

 (あの宮崎学氏も高く評価するほど、と言っておきましょうか。多くのウルサ方を服
 させるオーラを持った傑物です。まあもともと日本共産党の枠に収まるのはムリな
 人でした。当人初め労組仲間は、学歴のない現場労働者として、必死に共産党
 理論を学習して叩き上げ党員になっていったのですが・・・)

5;激しい労働運動を通じて生コン労働者は、タコ部屋状態を脱却しただけでなく、ど
 んな交通労働者よりも高い賃金と優れた諸権利(土日隔週休日も70年代に獲得)
 を獲得し、日本で唯一と言ってもよい「ヨーロッパ型の産業別労働運動」を構築して
 社会的にも大きな力を築きました。(現場の生コン経営者としたら、労組に攻められ
 て苦しかった、という感覚だったかもしれません。現場ではキレイゴトだけではない
 し・・本質と現象とのズレと思います)

6:ここに、「煩雑でリスクの多い」生コン製造は零細企業にやらせて、そこを絞りなが
 ら「社会の血液産業」とも言うべき生コン産業を巨大独占・大企業が牛耳る、という
 構図の中から「関生労働運動」という鬼っ子が生まれてしまい、「企業は潰れても
 労働者は潰れない」(=業界として雇用を保障させる、労働者派遣事業を労組が
 組織する日々雇用の受け皿)体制と意識を持って日本型企業内労組意識を脱却
 した産業横断型労働運動と、生コン企業の協同化の推進が図られるようになりま
 す。日経連をして「関生型労働運動は資本主義を破壊するもの。

 箱根の山を越させてはならない」と危機感を持たせるほどの社会変革力を持った
 (単なる労組エゴとは違う)ものに成長したわけで、それゆえの大弾圧が1981年頃
 から関生に襲いかかり、不当逮捕と「暴力集団」キャンペーンが張られていきます。

◆組合幹部は全て日本共産党員の共産党直系の労組にあって、共産党は当初は
 「不当弾圧反対」だったものが国政選挙へのマイナス影響にビビッて「軌道修正」
 し、「労組にも問題があった」論への移行と組織分裂を図ったので骨肉の争いとな
 って大紛糾し、とうとう分裂したのが1983年(大平首相病死による12月総選挙=
 中曽根大勝の年)。以来、武委員長ら主流派が連帯ユニオン・関西生コン支部と
 して組織本体を引き継いで現在に至っています。
 (労働運動界では最左派グループで、社会党―社民党・新社会支持)

7:労組の話が長くなってしまいましたが、生コン業界の現在切迫した事としては、生
 産能力過剰状態を解消して適正価格を守るために、(労使協同のもとで雇用も守り
 ながら)工場整理をしていきセメント・ゼネコンとの交渉力をアップしていくことです。

 連帯ユニオンや他労組の方針としてそうだし、それが中小零細企業がほとんどの生
 コン業界の発展のためでもあると、戸田は思います。しかしそこからはみ出して、低
 い労働コスト(要するに労働組合を許さず低賃金労働)と低い社会コスト(要するに
 良識ある企業としての措置を取らない)を武器に、低価格競争によって荒稼ぎする、
 という企業も存在するわけで、まさに大久保建材がそれにあたります。

8;統計的に見て、労働者が最も「長時間労働・低賃金・無権利状態」に置かれてのが
 トラック産業労働者であり、その業界は95%が中小零細企業で、乱立過剰競争の
 ために荷主との交渉力なく価格を叩かれっぱなしです。「高速道路での大型車の事
 故が多いのでスピードリミッターを強制設置」とされてきましたが、これこそ事故多
 発(=労働者の死傷!)の根本原因たる長時間低賃金労働(=ムリして稼ぐ)にメス
 を入れずに、小手先の「改良」でお茶を濁して、運転労働者にさらなる負担を強いる
 ものでしかありません。

 こういうトラック労働者の悲惨な状況を改善するのではなくて「生コン運転手は賃金
 が高すぎる」として、全部の運転労働者を非人間的な状況に引き下げようとする社
 会的圧力は少ないものではありませんが、関西生コンは連帯ユニオンの一員とし
 て全ての労働者の権利と生活向上のために奮闘しているところが、「本工意識の
 組織労働者」とは違います。

 



門真生コン問題;読者からの質問に回答します。A

                                           01/05/26記
「前振り的回答」を踏まえた上で、以下に戸田の考えを述べていきます。

Q1.住宅地に工場を建設したというがどこに建設すればよかったのか?

A;少なくとも大阪の状況ではこれ以上の生コン工場の増設は社会的にも、生コン業
 界的にも全く必要とされていないと思います。あるのは個別大久保建材の利害だ
 けの話です。従ってこの設問を受け入れること自体、本来は必要ないと思います。
 あえて答えるならば、「周辺に迷惑のかからないように、立地場所と設備運営内
 容を大久保建材がしっかり考えて、責任を持て」、ということです。

Q2.建設されたのが電気部品工場だったら門真市民は許せるのか?

A;隣家を破損したり、騒音振動、粉塵、交通渋滞などで住民や地域社会に迷惑を
 かけないものなら容認するでしょう。

Q3.やり口が汚いにしろ、違法でない(らしい)建設に中止勧告できるか?
  この答えも、法の適用の話になると思いますが警察を含めた行政の動きすぎは
  戸田議員の反対するのでは。

A;今は完成してしまったので無理ですが、隣家に被害が現れた初期の段階だった
 ら、「これ以上工事されると被害がさらに進むから」として工事差し止めの仮処分
 は十分できたでしょう。そうして社会問題化させる中で、業者を話し合いの場に引
 きずり出して(安易に認可した市の責任も問いながら)、補償とともに住民の納得
 のできる解決策を模索できたでしょう。

@今回の問題は「行政・警察の動かなさすぎ」なのであって、「動きすぎ」を危惧すべ
 き要素は全くありません。行政については、住民の公僕たる自覚の欠如、環境基
 本条例の存在を全く忘れて、これに沿った実務運営を放棄していた瑕疵(かし)が
 問題です。他市ではここまでひどくないでしょう。ちなみに寝屋川市の役人経験者
 は「例え法律・条例・要綱をクリアしていても、住民の反対が強ければ認可せずに
 棚上げして、業者に住民との合意を得るよう指導してきました」と断言しています。
 「住民の反対が強ければ、与党であれ何であれ議会でつつかれまくって、延々と
 質問されて議会が終わらないから大変です」、とのこと。
 ここが門真市4会派の「口封じ強権・トコロテン式議会」と全然違う所です。

@こういう問題は「住民エゴ」ではなくて「業者エゴ」からの生活・環境防衛
 の問題です。

Q4.第二京阪国道工事など、門真市民が受益者になる土木工事の生コンはどこ
  で作るのか?生コンは重量比で単価の安い商品です。
  また、輸送が特殊(ミキサー車)に限られるため工事現場着単価の多くが輸送
  費です。税金の無駄遣いに対し生コンは本当は現地生産が一番です。

A;
@門真市は今まで生コンに困ったことがありません。大久保建材門真生コンなど
 後で述べるように迷惑100%なだけです。今大きな建設現場は、既存生コン工
 場からの搬入の他に臨時の生コンプラントを工事敷地内に造って工事しますか
 ら、第2京阪道路でもそうするでしょう。

A大久保建材門真生コンの立地上の最大の問題は、「狭く・しかも163号線に鋭角的
 に接続している敷地」に守口工場よりも大きなプラントを建てたこと=即ち最初から
 「我が儲けのためには163号線を待機場代わりにしようがしょっちゅうブッ止めよう
 が構わない」、という性根で乗り込んできている、ということです。

B守口工場の規模でも、組合の試算では「1日あたり大型ダンプ十台以上、15トンの
 長いセメント車が数台、5トンミキサー車数十台」とのこと。
 これらが「24時間込んでいる163で」早朝6時前から夜8時かそれ以降までにかけ
 て、大阪方面から来たときでも2車線止めてバックで入るか大きく頭を振って入り、
 京都方面から来た場合は、両方向車線をブッ止めて長い車両はバックで入いる。
 工場から出ていくときも信号のない部分から1日に100台前後の大型車が163の
 両方向に強引に割り込んで出ていくことになります。
 これがどんなにすごい渋滞要因となるか、163号線とその周辺事情を知っている
 人でゾッとしない人はいないだろう。

C163号線と「打越交差点」(現場から最も近い交差点)で南北に交わる「大和田茨田
 線」はバス道路で大型車も多いのに歩道もろくにない、超混雑危険道路だが(ほと
 んどの他市の人には想像もつかないひどさだ)、これをずっと北上した守口市大久
 町に大久保建材守口工場があり、逆に打越交差点から南下してすぐの舟田町の農
 協と万代スーパーの間に、今度門真工場の「車置き場・待機場」ができている。
 (鉄柵で囲まれた草地でマンションに隣接)「163号線で待機しません」というのをも
 しマジメに守るなら(信じられないが)、今度はこの舟田町の待機場で1日100台前
 後の生コン車がひっきりなしに出入りして、待機の間はエンジンかけっ放し(それが
 普通)で、そういう状態が朝から夜まで毎日続く、という近隣住民と通行者と運転者
 には地獄のような状態になってしまう。

D土地が安く買えたのかどうか知らないが、この土地に生コン工場を持ってくる、とい
 うのは交通渋滞のことだけ考えても、大久保以外の全ての人々・車両・流通企業に
 とって大厄災以外の何者でもないことが判ってもらえると思う。経済活動・流通活動
 にとっても百害あって一利なし。だから「これを放置して何が『まちづくりだ』『第4次
 総合計画だ』、ボンクラもたいがいにしろと戸田は怒っているのです。(しかもその
 片棒を市長の実弟企業「幸福産業」(=仙亭)が担いでいるから情けない)

E騒音振動、交通渋滞の調査や現場指導、対策会議・・・といったいどれほどの住
 民・議員・役人のマンパワー(=お金)が大久保1社のために消費され続けなけれ
 ばならないか、「安易な認可」のツケは莫大なものに登ります。門真市も門真市
 民も大久保建材に対しては「受益の面もある」どころか全くの被害しかないのが
 実状です。

F最後に、「住民に迷惑をかけて紛争状態にある」生コン会社を公共工事に使うわけ
 にはいきません。(運動的にもそれは格好のターゲットです)。
 従って門真市が大久保建材門真生コンを工事に使うこともなく、この面からも「迷惑
 だけの会社」です。

P.S;工場と住宅の分離って、正しい気がするけど親分の言う『デオドランドな世界』
   の主義と似ている。均質なサラリーマンを中心としたホワイトカラーと、工場とい
   ってもホワイトドレス(白衣)の電気工場だけで門真って成り立ってるの?

A;門真市は工場と(多くは低劣な)住居の入り混じった「灰色の街」です。
 わずか12平方キロの所に14万にも人がひしめく中、163・中環と近畿道・八尾枚方
 線という大交通量道路が街を寸断し、一人あたりの公園緑地面積はたしか大型ハ
 ンカチ1枚程度。松下電器の社員などはほとんど門真には住んでいません。
 松下以外は中小零細の工場・倉庫・運送業がほとんどで、職人と零細業者・下請け
 孫請けの未組織労働者の街とも言えます。低所得者と生活保護世帯割合が非常に
 高い街でもあります。従って「デオドランドな世界意識」とはおよそ正反対な所です。

 大久保の件でも、だからこそ近隣住民は「町工場ができる・6 m12m程度の物がで
 きる」と言われて「その程度はお互い様だから」とおとなしくしていたし、被害を受け
 てからでも随分穏便に長いこと引っ張られてしまったのです。
 「デオドランドな世界意識」の強い地域だったら、工事が始まった時点ですぐに問題
 にしていたでしょう。