櫻井さん執筆分抜粋(2)

● 昨年8月の導入以来,この間の政府の動きには,納得出来ないことが多々ある.住基ネットによる本人確認情報は当初93の行政事務に限って使われると説明された.それが今は,264事務に広がっている.中央政府の行政事務に加えて,地方自治体の行政事務にも住基ネットの使用を拡大すべく,働きかけが行われてきた.
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●県が条例を作れば,住基ネットは個々人の警察情報をも取り込めることになる.犯罪歴,交通事故などの情報も番号一つで見ることが出来る状況になることを示唆している.
 住基ネットの使用範囲拡大についての総務省の働きかけとして,1月21日の自治行政局市町村課長の事務連絡がある。・・・・地方自治体にもっと積極的に住基ネットを使用せよとハッパをかける内容だ.

●具体的には8月25日に発行予定の電子カードについて,経費を計上し,手数料条例を制定し,カードの「有効利用の検討」を「積極的に行う」よう指示し,カードの利用は「公共的団体に限定されません」との表現で,民間にも広く利用させよとするものだ.
 例として15項目が並んでいるが,当初から強調されていた住民票交付を遙かに越えて,図書館,健康保険,介護保険,病院,商店街,交通機関,公共料金などにも使用を広げよという.
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●住基カードの発行費用は1枚あたり1500円から2000円と見込んでいる自治体が多いが,総務省はこれを一律500円にするよう求めており,差額は特別交付税で埋めるとも言われている.
 だが,メリットのないカードを何故発行するのか,差額を特別交付税で賄うことは正しい税金の使い方なのか.住民の税金をこんなことに使って良いのか.他に予算措置が必要な事案はないのか.
 住基ネットは自治事務であるからこそ,自治体自身がこうした点について考えなければならない.そして考えた場合の答えはあまりにも明らかである.

●住基ネットの問題点は,住基ネットを管理する現場に近づけば近づくほどよく見えてくる.
小さな自治体では対処出来ない財政負担,法的責任の重さである
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●・・・インターネットに接続していたというセキュリティの粗雑さと,コストをかけてもかけても万全の対策にはなりにくいという事情もまた,審議会は重く見る.住基ネットは財政的に地方自治体の重荷になり,個人情報の漏洩の危険を永遠に突きつけ続けるものである.
 加えて,民主主義の根幹である説明責任を政府が果たしてこなかったことも,審議会は重視する.地方自治体の住基ネットに対する疑問や戸惑いを無視して傍若無人にその使用範囲を広げようとする総務省の姿勢には,強く異を唱えるものだ.
 民主主義,個人情報の保護,個人の自立,地方分権と地方の自立.21世紀の日本に最も必要なこれらの価値観に悉く背く住基ネットに留まることは,責任ある首長にとっては如何なる合理的かつ正当な理由もない.
 従って審議会は,県下の自治体及び県民の個人情報を守り,民主主義を守り,自治体の財政負担を減じるためにも,長野県知事が県下の市町村とともに離脱の決断を下すのが,最も理にかなった方策であると結論づけるものである.

(以上で櫻井さん執筆分終わり)