住基ネット;長野県が離脱を表明 都道府県レベルで初


  長野県が離脱を表明 都道府県レベルで初

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030815-00000115-mai-soci

社会ニュース - 8月15日(金)5時3分

<住基ネット>長野県が離脱を表明 都道府県レベルで初

 田中康夫・長野県知事が、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)から離脱し、県独自で情報管理する方針を固めたことが分かった。「個人情報漏えいの危険が現実化している」というのが理由で、都道府県レベルの離脱は初めて。長野県が離脱しても、県内市町村がネットから切り離されるわけではなく、従来通り業務が可能だという。
 しかし、国側との中継役となる県が離脱することで、25日に本格稼働する住基ネットや他の自治体に大きな影響を与えそうだ。

 住基ネットについて、長野県の「本人確認情報保護審議会」が5月、「個人情報保護の態勢が不十分だ」として、当面の離脱を提言し、田中知事の判断が注目されていた。

 住基ネットは25日から、国や県を経由せずに全国の市町村同士がネットワークでつながるが、情報漏えいなどがあった場合、市町村により一層の管理責任が課されることになる。長野県はこうしたシステムを問題視し、根本から見直しする必要があると判断。県内の市町村から県のサーバーに入った個人情報を総務省の外郭団体「地方自治情報センター」には渡さずに自主管理し、運用する。国や他県の行政機関からの情報提供要請には個別に情報を提供する方針。県内120の市町村には現状を説明し、離脱するかどうか判断を求め、意向を尊重する。

 県の離脱に同調する市町村が出れば、住民は国が住基ネットを利用して計画している年金受給などに関する264の本人確認事務の対象外に置かれる可能性がある。
 県幹部によると、現在、県内の22自治体が、住基ネットとインターネットが庁内LAN(構内情報通信網)を通じて接続し、不正アクセスによる情報漏えいの恐れがある。県はこの22の自治体のうち複数の自治体と協力し、今月中にネットワークへの侵入実験を行い、情報漏えいの危険性の有無を確認する意向という。

 この22自治体には、一時的に住基ネットとの接続を切り、インターネットと分離するよう要請する。その間はフロッピーディスクなどを使って情報をやり取りする。全国にはインターネットと接続している同様の自治体が約800あり、これらの自治体についても、総務省と関係都道府県を通じ早急にインターネットと分離するよう求める。

 田中知事は「既に800億円も投じた住基ネットが実は、安全性に関して全国の市町村のみが責任を負わされ、総務省は何ら問われないお粗末なシステムであることが判明した。
 長野県は総務省の外郭団体に一元管理を委任する形を見直し、個人情報の保護に全力を挙げる」と話している。

【西田進一郎】(毎日新聞)


8/14長野知事が緊急会見、「離脱」を表明

8月15日朝刊の毎日新聞
■ 社会 ■

住基ネット:長野知事が緊急会見、「離脱」を表明

 長野県の田中康夫知事は15日午前、県庁で緊急会見を開き、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)から県として事実上、離脱する方針を表明した。田中知事は「(住基ネットという)無責任なシステムが構築された大きな理由は、住民自治を無視した国中心のシステム設計にある」と批判、安全性を疑問視し、現状のあり方に問題提起した。国側の住基情報の一元管理に一石を投じ、市町村に離脱するかどうかの判断を迫ることになる。

 住基ネットのシステムについて田中知事は、国側、都道府県、市町村の3者がピラミッド型に接続しているのではなく、実際には全国の市町村同士がネットワークで直接結ばれていると指摘。国や県が市町村のネットワークを監視して守るシステムにはなっていないことを強調。住基ネットについて、県が市町村から来た個人情報を総務省の外郭団体「地方自治情報センター」にすべて提供し、本人確認の情報提供などの事務を全面的に委託している現状を見直す方針を明らかにした。
 田中知事は「市町村が(ネットに接続できなくなって)不利益を被るような離脱ではなく、広い意味での離脱」と話した。【西田進一郎】

◇田中・長野知事の発言要旨

 住基ネットに関する田中康夫・長野知事の会見での発言要旨は次の通り。

 住基ネットは、国、県、市町村がピラミッド型につながっておらず、実際は並列的にぶらさがり、それぞれの市町村がダイレクトにつながっている。国は安全性を確保していると言うが、実際に確保しているのは国、県レベルのネットワーク内の安全だけであり、その外側の市町村レベルについては、市町村の責任で安全性を確保せよということ。これは非常にゆゆしき問題で、県民益の観点からも看過できない。住基ネットを構築してきたのは総務省及び国だが、国が責任を取らないのは好ましくない。

 原因は住基ネットのシステム設計が先に動いたことにある。県でいま一度再検証し、市町村と話し合い検討を加えたい。今後の方針としては、インターネットに接続している県内の22自治体に対して侵入実験を行い、分離が完了するまでは住基ネットの接続を(フロッピーディスクをやり取りする)「媒体交換方式」とするように求める。

 国は800億円もの費用を投じながら、住基ネットは専用回線ではなく、民間会社の回線を共用していることも驚きだ。市民不在の公共事業ともいえる。

 従来の概念における離脱はできないが、広い意味での離脱(といえる)。

[毎日新聞8月15日] ( 2003-08-15-14:05 )