第三話 私はこんな風に談合してました。


大間;門真市の場合は、元助役が自殺して以降、上限と下限を事前公表しているんです。
    普通であれば、下限ギリギリで価格競争があるはずですよね。

小早;その通りで、本当に競争してるなら、下限価格で入札すればいいはずなんですよ。
    五社でも六社でも、下限で入札するはずですよ。それが上の方にズラズラっと並ん
    でいるのは、談合が行われている、ということなんですよ。
    これは、間違いないですよ。どこでやっているのかとまではわからないですけど。

大間;一般的に、指名委員会でこことここが指名業者に決まったのが、その日のうちに業者
    に伝わっているという話でしたよね。

小早;そうです。例えば私がこの工事がほしかったらですね、指名業者に入った会社はどこと
    どこか分かってますから、すぐに走りますね。「私の所に下さい」、と。それだけで「これは
    もう、あれが一番熱心に営業やっているから仕方ない」、という感じになって有利ですね。

大間;つい最近大阪市でバレたのは、現金を渡してバレたんですけど、普通は現金は渡さない
    んですね。

小早;渡しませんね。

大間;で、その時の貸し借りみたいなね、今回は飛ばしてくれと、その代わり見返りとして何千万円
    相当のものを次は譲れ、というようなことはあるんですか。

小早;そうですね。金額の大小は関係ないです。
    物件一件について貸し借りがあったら、1000万分借りたら、次に一億円相当のもので返さない
    とアカン、というようなことも出てくる。金額の多い少ないのは関係ないです。
    ただし、指名メンパーというのが、構成があくまでも、5000万クラスの業者なら業者と決まって
    いるでしょ。ランクがあるんだから。
    だから、実際問題としては、そうそう金額は変わらないですね。

大間;喫茶店とかで、トーナンメトとかクジとかが行われるんですね。

小早;実際談合をするのは、指名通知をもらって、現場説明があるんですね。

大間;現場に行くんですか。

小早;いえいえ、現場には行かないです。昔は、ゾロゾロと行ってたようですが、今は行きません。
    役所のどっかの会議室で図面で説明があります。
    どこそこの何番地から何番地まで、という風に。で、それが終わったら、みんなゾロゾロゾロ、
    と喫茶店とかそういう談合をいつも行う場所に行くわけですね。
   
そこで、一番トップクラスというか、実力者が司会をする訳です。「この物件について、希望者
    がいますか」、と。そこで、希望者は、挙手をするなりお願いしますと
いうなりする訳ですよ。
    そこで、やり方としては、絶対に叩き合わない。

大間;叩き合わないって、いうのは、どういうことですか。

小早;話をブチ壊さない、ということです。結局は、談合ですから。それを確約させるわけです。
    絶対に叩き合いはしませんよ、と。

大間;紳士的に仲良くしますよ、と。

小早;それが大原則ですから。それをもとに、今度は、希望する人が、全員やったら全員希望やから、
    ということで、やり方としてはトーナメントをする訳ですね。トーナメントで勝ちあがって決勝に残っ
    た人がチャンピオン、と。トーナントということは、クジなりなんなりで、とにかく二人ずつの組みを
    作っていくんですわ。それで、その時に、貸しがあるとかないとか、その二人の組み合わせによ
    って、勝ったら、勝ったもん同士で、また組みを作ってやって、同じことを繰り返す訳ですね。

大間;そこで、どうしても折り合いがつかない場合は、リーダーの人が、決める、という訳ですか。

小早;そうです。さっき言ったように、こっちの方が近隣やとか、なんとかで裁定をする訳です。
    それでもどうしても折り合いがつかない時は、1から10までの数字を紙に書いて、お互い
    に引くわけですよ。それで、点数の多い方が、勝ち、と。

大間;チャンピオンが決まったら、後は八百長入札ですよね。
    ほかは金額をちょっと高めに、入札する訳ですね。

小早;その金額もですね、チャンピオンになった人がですね、1回めはこの金額で、
    2回目はこの金額で、3回目でいくら、と全員に渡すわけですよ。

大間;筋書きを自分らで全部作る訳ですね。でもそれは、事前価格公表じゃない場合ですね。

小早;ええそうです。今はやりの事前価格公表制だと、一発入札ですけれどね。その場合はうちは
    この価格で行きますから、お宅はこれで、とチャンピオンが配るなりするんですよ。
    それで入札結果に同じ金額があったりすることは、札を配らずに、「これから以上金額で行っ
    といてや」、と言った場合ですよ。もっとも、チャンピオンは本当の金額については絶対に言い
    ませんけれども。それは、「鉄砲打つやつ」、横取りするやつがいてるから。

大間;チャンピオンは、談合仲間であっても言わないんですね。

小早;そうです。自分ところの入れ札については、言いません。でないと、例えば、うちが1000万で
    入れるよ、と言うと、995万円で入れるやつがくるかもしれんですからね。

大間;談合破りね。表だって文句言えませんからね。でも、言わないのにどうやって金額を決めて
    いくんですか。

小早;それについては、これ以上の金額で、と。
    例えば1000万で入れると決めていたら、1050万で入れてくれ、と。

大間;余裕をみて、お願いする訳ですね。

小早;だから入札の結果をみて、同じ金額があった、ということは、口頭で言った場合、ということです
    よ。それが、バラバラになって、うまくバランスがとれた時は、書いて渡した、という場合ですね。


                                                  (第3話了)