第一話 業者が議員や役人に自分を売り込むためには…


大間;業者が自分を顔を覚えてもらう、会社を覚えてもらう、議員を使っていく、という、そこらへんの
    話を教えてください。

小早;A市、A市に強い議員さんの紹介で行くわけですね。下水道なら下水道、土木なら土木のいろ
    いろな課があるじゃないですか。そこへ行って、名前を売り込む訳ですよ。そしたらもう、物件が
    出るのはみんな知ってるから、業者は。
    どこへどういう工事がありますよ、どこへどういう下水の工事がありますよ、どこへどういう道路
    工事がありますよ、というのはみんな知ってるんですよ。営業で。
    だから、あとで、一般の議員が知るのは、ずっと後なんですよ。予算が出ますよね。
    どこどこの工事はだいたいいくらか。それをみんな知ってるわけですよ。
    それはみんな、議員さんが、業者に。こういう工事があるから、と教えるんですよ。

大間;計画段階でですか。

小早;業者は議員さんあたりから聞いて、設計をする段階あたりでもう知ってる訳ですよ。
    ここに新しい道を作るぞ、こっちに下水道を入れるぞ、という計画があるじゃないですか、
    そしたら、この路線については、競合する業者もいないから、私もいけるとか。分かるでしょう。
     なわばりがあるんですよ、これはきちっとした。暗黙のなわばりが。だからそれが崩れた時に、
    たたき合いが出てくる。だから業者には、その正確な情報を集める営業マンがおるわけですよ。
    営業マンが熱心なのはですね、それこそ、朝昼晩役所に顔を出して行くわけですよ。
    名刺配るだけじゃ、役所顔を覚えてくれないからですね。

大間;役所の窓口だと、中に入らないでください、名刺はここにおいてください、って書いてあります
    けどね。

小早;いいや、普通はやっぱり中に入っていきます。だって、課長に挨拶しようと思っても、中にはいら
    ないと、外からはできないでしょう。

大間;議員とのつきあいとかは、とういう風な感じでするんですか。
    役所に対して強い権限を持っている議員と、持ってない議員といるでしょ。

小早;おいしい情報を知ってる議員はね、業者からおいしいものをいただく訳ですよ、情報料で。
    付け届けはもちろんのこと。だから、「実力」がある議員ちゅうのは、そういうおいしい思いを
    いつもしているわけですよ。

大間;情報を早く得る、かつ食い込みやすいようにその上の人、議員とも仲良しになっている、という訳
    ですね。

小早;そしたら業者は、役所の担当課長なんかに、この物件があったら、指名をよろしくお願いします、
    と頼みやすい訳ですよ。

大間;第一関門は、工事工事の、その指名の中にはいることですね。

小早;そうです。一番のたたき台だから。
    そのメンバーにまず入れてもらわんことには話にならんですよ。

大間;登録業者がいると。具体的にその工事工事ごとに、指名を決めるわけですね。一般的に指名
    業者が100社200社あっても、ここの工事となったら、ぜんぶ参加自由というわけではないと。

小早;その通りです。門真市の場合は分からないけど、普通は指名委員会というのが、たぶんあるは
    ずですよ。そしたら、その原案、指名の素案がですね、課長なり係長なりから出てくる訳ですよ。
    そしたら、また、上の方に、部長とか課長とかがおって、これははずせとか、これを入れよとか、
    修正されたものが、本当の指名委員会の時に出てくる訳です。それはもう、たいした会議じゃな
    いからですね、一応会議だけど。「この工事の指名業者メンバーはこれですよ」、と。
    これで、指名メンバーが決まった日には、もう業者は知ってますよ。
    うちは入ったとか、入らないとか。これも情報が漏れる訳ですよ。

大間;役所の誰かが漏らす訳ですよね。それでなかったら分からないですからね。

大間;ほかの工事では指名されても、ここでは指名されないというのも一杯あるんですね。

小早;だから「この物件がでたら、わしが手を挙げるから、いかしてくれ」とか。
    指名の前にほかの業者にも「営業」しておくわけですよ。

大間;その指名委員会が指名するのは、たとえば、同じ業者が、AもBもCも全部指名に
    なってたら、具合が悪い、というわけですね。

小早;それはだから、おおまかな枠付けがあるからね。金額、工事の金額によって、これぐらいの
    金額はこれぐらいのクラスまでですよ、という。役所の言ってるのは、工事の受注の公平さ
    を保つために、前回の時に受注した業者は今回は指名しない、とかいうのはありますね。

大間;それは、非常にわかりやすいはなしやね。

小早;それから逆にですね、この工事に指名に入れて貰っても、手を挙げられない物件というのが
    あるじゃないですか。業者のなわばりなどの関係で。
    そういうのは、この物件に対しては入れてもらわなくてもいいですよ、というのをするんですよ。

大間;ほかのいいところで指名を貰おうとする。

小早;この物件は是非とも入れてください、とお願いするわけですね。役所にも。それが営業ですから。

大間;その絶対的基準はない訳ですね。微妙な大枠があっても、ここは入れたろか、はずれてもらおう
    か、微妙なところがあるわけですね。

小早;微妙なところはあるけど、だいたい、営業をしとったら、思惑通りになるから、この業界。

大間;それは、営業の力であるわけですね。

小早;営業の力です。あとは、バックアップの先生の力ですね。

大間;指名業者の中にはいるのが、まず営業の仕事、というか、すごく大事なことですね。
    これは、あんまりおおっぴらなところでされていないから、これがいろんな裏がありそうですね。

小早;結局役所も密室の中で決めるでしょ。
                                                   (第1話了)