■ 2001年12月議会での宮本一孝議員の一般質問と答弁


【 質 問 】:宮本議員

 6番の宮本です。通告に従いまして御質問いたします。
 長きに渡る日本の景気低迷は、膨大な税収減を引き起こし、国・地方を問わず厳しい財政運営を余儀なくさせられております。本市においてもその例外ではありません。
 しかしながら、税収入が減少したとしても、それに伴い支出を抑えることができれば、プライマリーバランスにおいても問題なくすむのですが、実状はそうではありません。むしろ、不況により増加する支出も多くあります。その一例が生活保護費であります。

 今議会にも議案となりましたように、門真市の生活保護費は、平成13年度一般会計予算扶助費において61億4742万円となっております。平成12年度の一般会計決算では、生活保護費扶助費は52億2652万5000円。469億7597万4000円という歳出の総額に対しまして、11.1%、154億13万1000円という民生費に対して、33.9%というぐあいに、大変大きなウエートを占めております。昨年度の決算から見ると、今年度の予算では既に約10億円近い予算の増加が見られます。

 現在、門真市の保護率は全国的にもトップレベルで、平成13年3月の段階で、全国平均が8.8‰、大阪府下平均12.2‰に対しまして、門真市は23.8‰となっております。大阪市を除くと府下でも第1位という現状にあります。ほかの市の現状を見れば、確かにこの厳しい不況のため、総じて保護率は増加の傾向にあるものの、20‰を超える市はほとんどありません。大阪府下でも半数が1けた、ほとんどが10%前後になっております。

 中でもお隣の大東市の保護率は6‰前後。そのため、生活保護費に係る総額が約14億円、4分の3が国庫負担金で支出されますから、市の負担は3億5000万円であります。それに比べて、門真市の場合はさきに述べた生活保護費が約60億円となっておりますので、国庫負担金を差し引いても約15億円以上の市負担という勘定になります。確かに4分の3の国庫負担金があるとはいえ、門真市と大東市で市の負担に10億円以上の差があるというのは、一体どういうことなのか。また、お隣同士で地域的な差異もないと考えられます。この違いがどこから生まれてくるのかという疑問を持つのは当然のことでありましょう。

 この2市の生活保護に対する取り組みの違いについて、ケースワーカーを含む担当課の体制が挙げられます。 顕著なのが、ケースワーカー1人当たりの担当ケースの違いであります。大東市の場合、ケースワーカー1人当たりの担当ケースが常に70ケースを切るように努力され、またケースワーカーの平均年齢も30歳前後というように、活動力ある世代を中心に構成されています。ところが、門真市において直近のデータを見ると、被保護世帯2135世帯に対し、ケースワーカーが18名、平均担当ケースが118ケース、最も多い場合は140ケースという数に達しています。

 担当ケースの望ましい基準として、現在先般の地方分権一括法の制定により、法定数から標準数に、義務規定から努力目標的になりましたが、ケースワーカーの担当数は80ケースと定められております。しかしながら、大東市は、その数値をもはるかに下回る70ケース。そのため大東市の保護率は、この不況時にありましても低下の傾向にあります。逆に門真市の場合は、さきに述べたその担当ケースをはるかに上回っております。これでは、制度の適正な運営は到底不可能と言わざるを得ないのではないでしょうか。

 生活保護法第1条、目的、「この法律は、日本国憲法第二十五条に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行ない、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」と。つまり、生活に困窮する者に対する社会保障とその自立に向けた支援がこの法律の目的であります。しかし、今の門真市において、さきに述べた実情の中、被保護者の自立に向けた支援という大切な目的が十分達成されていると言えるでしょうか。

 本市において、ケースワーカーの担う責任は多大なものがあり、その責任の中、涙ぐましい努力が行なわれていると聞き及んでおります。また、被保護者においても、この見通しの暗い不況の最中、生きるためのとうとい努力がなされております。そのため、昨年度でも約18%の保護世帯が自立となっております。まさしく被保護者の努力とケースワーカーの協力の結果であります。
 しかしながら、昨年の被保護世帯は1861世帯で、平均担当ケースは103ケースでありました。100を超えるケースワーカーとしての適正な訪問の実施、指導が十分できないと聞きますから、103ケースというのは、まさに担当ケースとしての限界の数値であります。本年は既に平均118ケースと、かなりの増加傾向にあります。

 そこで、例えば標準数の80ケースに見合うようにケースワーカーを8人増員したとして、平均82ケース。ケースワーカー増員による人件費が一人頭700から800万円という計算で、総額約6000万。しかし、ケースワーカーの十分な指導、助言と被保護者の懸命な努力により、10%の自立ができれば、大ざっぱになりますが、生活保護費60億円のうちの10%、6億円、うち市の負担となります1億5000万円を軽減できる勘定になります。となれば、人件費との差し引きで約1億円近い財政効果が望めます。ここで財政効果を引き合いに出すのは不適当かもしれません。しかし、被保護世帯に対し、より手厚いケアができる一つの方法だと考えます。

  また、ケースワーカーを適正に配置することにより、保護率を低下させることは難しくても、上昇を抑えることは可能ではないでしょうか。というのも、年々ケースワーカーの担当ケースが増加するにつれ、被保護世帯の自立に向かう率は減少傾向にあります。つまり、担当課の体制が不十分なため、被保護者の自立のチャンスを奪いかねないということが言えます。

 冒頭で述べたように、平成12年度決算では生活保護費が約50億円であります。何とたった1年の間に約10億円の上昇は、それだけこの不況の厳しさと言えるでしょうが、行政として何ら対策もせず、ただ状況を見守るだけというのは、いささか無責任と言えるのではないでしょうか。生活困窮者を救うことは、福祉の向上からも大切な行政の役割であります。しかし、税の公平分配という考えから、余りに偏りすぎた福祉は、タックスペイヤーの不満を生むのもたしかであります。

 というのも、昨今生活保護の不正受給について、新聞紙上をにぎわすことがよくあります。本市においても例外ではなく、このようなモラルハザードの実態、制度の悪用、乱用というのは、悲しい限りであります。平成12年度決算でも、生活保護法第78条に基づく不正受給が挙げられています。先ほどから述べるように、ケースワーカーの適正配置により、未然の防止及び早期発見、また発見後の適正な対処ができるのではないでしょうか。毅然とした態度でもって、不正な行為に対し対応すべきであると考えます。

 そこで、本市の生活保護費の増加に伴い、それが引き起こす問題点とその主たる原因、また不正受給防止、早期発見の対策としてどのようなことが考えられるのか、お聞かせください。また、人事において、門真市の生活保護の現状と市の保護課の体制にミスマッチはないのか、このような財政効果を見据えた人事配置は、現在どのように考えられておられるのか、お聞かせください。

 ますます悪化する不況、失業率の中、日々苦しい生活を強いられる市民に対し、相互扶助の心を持って、行政が適正にその当然の役割を果たすために、生活保護制度の充実はだれしもが望むところでありましょう。しかし、それ以上にむしろ自立に向けたフォローアップ、ケアこそが、本来のこの制度の精神であると私は考えます。健全なる制度の運営を願いまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。


 

【 答 弁 】:藤田総務部長

 宮本議員御質問のうち、ケースワーカーの適正配置につきまして私から御答弁申し上げます。

 ケースワーカーの配置につきましては、議員御指摘のように、ケースワーカーを増員すれば保護費が軽減できるということにつきましては、一定理解をいたしておりますものの、ケースワーカーの数の問題だけで適正実施が図れるものではなく、課内の指導体制、個々の相談業務の充実をも向上させることが大切であると認識をいたしております。
 いずれにいたしましても、ケースワーカーにつきましては、限られた職員数の中、一定の増員を図ってきたところでありますが、議員御指摘の趣旨も踏まえ、今後も職員の年齢構成等をも十分考慮し、適正な配置について努力してまいりたいと考えておりますので、御理解賜りますようお願い申し上げます。

【 答 弁 】:中東保健福祉部長

 宮本議員御質問のうち、不況による保護率増加が引き起こす財政圧迫の実情について私よりお答えを申し上げます。

 昭和62年より、景気の好調による雇用の拡大や実施体制の整備による資質の向上などに支えられてきました減少傾向が、平成5年度を境に急激な増加に転じてまいりました。経済情勢の低迷による雇用機会の減少や雇用状況の悪化及び高齢者世帯、傷病世帯の保護の長期化が保護世帯の増加につながり、申請件数の増加もその主な要因の一つであると考えております。不況に伴う保護世帯の増加につきましては、まだまだ続くものと予想され、社会環境や経済環境の変化をもろに受ける大都市周辺の福祉事務所といたしましては、今後の情勢の変化を注意深く見守っていく必要があると考えております。

 御指摘のとおり、本市の保護率は府下でも高位の水準にあります。平成13年12月1日現在、被保護世帯2135世帯、被保護人員3475人、保護率25.27‰、対前年同月比では3.6ポイントの増加となっております。景気に明るい兆しの見えない現状では、来年度も今年度と同様の増加があるものと思われます。

 被保護世帯の増加に伴い、ケースワーカー1人当たりの持ちケースは平均118ケースで、標準数80ケースを大きく上回っております。このことにより、家庭訪問調査による実態把握ができていないケースや自立指導に時期を逸しているケースなどが見受けられるのも事実でございます。
  しかしながら、被保護者の大半は傷病障害、高齢者、母子世帯など社会的なハンディキャップを有する者で、こうした人々も自立に向かって懸命に努力しており、この人々に対してきめ細やかな配慮と手厚い援護の手を差し伸べる一層の努力が必要であることは、十分認識しております。

  また、不正受給の防止策につきましては、保護開始時の徹底した調査や、継続ケースにつきましては、「保護のしおり」等を配布し、届け出義務の周知徹底を図っているところでございますが、遺憾ながら潜在的な不正が依然としてあることも事実でございます。

 本制度が市民の理解と支持を得るためには、適正な運営を確保することが当然のことと認識しており、今後におきましては、ケースワーカー技術の向上、他法活用の徹底等、生活保護実施要領に基づき適正実施の推進に努めてまいりたく考えておりますので、よろしく御理解賜りますようお願いを申し上げます。