平成14年 (ワ) 第8041号
損害賠償請求事件
原 告 戸 田 久 和
被 告 門 真 市
代表者市長
東 潤
釈 明 書
平成14年12月24日
大阪地方裁判所第18民事部 御中
被告訴訟代理人 弁護士 安 田 孝
同 弁護士 上 野 富 司
御庁表記事件について平成12年12月6日付裁判所からの求釈明に関し、被告は以下のとおり釈明する。
第1 求釈明事項第1点(決定期限の徒過について)
1 平成14年6月6日ないし7日付け公文書開示決定は期限内に為されたものである。従っ
てこの点に違法はない。
2 しかし、その後に部内で当該諸団体の代表者氏名等の個人情報の開示は条例第6条
第1号に抵触するのではないかとの疑義が生じ、同月11日にこれらの部分の開示を不
開示とする決定の変更がなされた。
この日は、上記6月6日ないし7日付け公文書開示決定に基づく情報文書を交付する時
期として、既に双方の協議により予め設定されていた日であったので、被告は、その機
会に原告に対し代表者氏名等個人情報については不開示と変更された旨を通知した。
そして、6月6日ないし7日付け公文書開示決定通知書(甲第11号証の@)11日付け公
文書開示決定通知書(甲第11号証のA)に差し替えるいわゆる文書差し替えの方法(誤
った違法なものを適法なものに文書の内容を変えるのであるから、この方法もひとつの
方法である。)で原告に変更決定通知を行おうとしたが、これを原告は拒否した。
被告は、その際、変更決定に係る個人情報不開示の情報文書を原告に交付するべく
準備しており、原告は後日の証拠にコピーして持ち帰った。従って、この時点で原告の手
に渡っており、情報の開示は終了している。
3 上記1,2の手続きは一連のものであり、手続きの連続性があり、誤った決定を正しい決
定に変更するがための正当な手続きであると被告は考えている。
因みに、昭和3年3月20日最高裁判決は「処分した行政庁その他正当な権限を有す
る行政庁において、自らその違法又は不当を認めてその処分の取り消しによって生ず
る不利益と取り消しをしないことによって係る処分に基づき既に生じた効果をそのまま
維持することの不利益とを比較考量し、しかも当該処分を放置することが公共の福祉の
要請に照らし、著しく不当であると認められる限度において、これを取り消すことができ
ると解する相当である。」と判示しており、被告の変更決定はこの判決に照らしても正
当である。
先の個人情報開示の決定をそのまま放置することと(ある意味では原告を利するこ
とになるが、これを放置することは条例第6条1号(1)の規定の趣旨を没却することにも
なりかねず、今後に対する影響には図り知れないものがある。)取り消し変更して個人
情報を不開示とすることと対比すると、前者措置は、明らかに条例第6条第1号(1)本
文に違反しているから公共の福祉の要請に照らし著しく不当であると言わなければな
らず、後者の措置が正当であると言うことになる。
また、原告が、取り消しを認める規定がないから、取り消せないというのも膠着した
議論である。
違法不当な処分を被告が自ら認めてこれを適法正当なものに変更するのは、むしろ
行政の義務というべく、条例の規定の有無に拘泥するべき問題ではない。
なお、本件11日の一部開示決定が、先の決定の取り消しなのか、変更なのかという
問題であるが、全体として見れば変更であり、開示を不開示にした部分に限って言えば
取り消しである。
被告は、総合的に見て変更と解しているが、決定期限が徒過しているか否かの観
点からすれば、とにかく決定そのものは期限内に行なっているのであるから、取り消し
でも変更でも一連の手続きの中のものと解するのが相当であり、そこに期限徒過の
違法はない。
4 被告は同月19日付不開示決定通知書を作成しているが、これは先の11日為された
不開示決定を19日付で文書化したものである。
つまり、本件では、不開示決定の通知と同決定に係る情報の公開が同月の11日
という日に先行し、当該不開示決定の通知書作成が遅延したのである。
しかし、手続きの究極の目的は情報を請求者に交付することであり、本件では、
それが先に行なわれているのであるから請求者の目的も達している。
5 以上を時系列で整理すると被告は
@ 平成14年6月6日及び7日に違法・不当な情報開示決定を行なった。
A その誤りに気付き、上記@の決定を変更ないし取消し同月11日に適法・正当な
不開示決定を行なった。
B 情報開示の実施日は同月11日であった。
C 11日に変更後の正しい情報開示を行なうと同時に当該情報開示決定通知をした。
D 同月19日に上記Cの通知を文書化した。
という流れになる。
本来情報公開に関する手続きの流れは、先ず情報公開決定があり、次いでその通知を
行ない、次いで情報公開の実施である。
本件では先ず期限内に開示決定を行ない、次いで期限後に変更(部分不開示)決定を
行ない、当該文書を交付し、同時に変更通知を行なっている。
その通知文書の作成が後になっているので、その意味では手続きに混乱が見られるが、
混乱と違法性とは別問題である。 以上の事実を総合すると期限徒過の違法はないものと
考えるから原告の主張には理由がない。
第2 求釈明事項第2点(公務員情報について)
1 原告が問題としている条例第6条第1号ただし書きイ「公務員の職務の遂行に係る情
報に含まれる当該公務員の職に関する情報」には門真市消防団の団員の氏名は該
当せず、非開示情報である(手引書12頁の5の末尾2行。なお、ここに言う「本条第1号
」とはこの手引書の部分が条例第6条第1号(1)のただし書きイについての説明をして
いるのであるから、条例第6条第1号(1)の本文を指すものと解するのが相当である。
となれば個人情報非開示の結論は自明である。)。
なお原告は、手引書12頁の5末尾2行の上の部分「公務員の範囲を限定せず、仮に
特定の公務員を識別させることになっても、開示することとするものである。」等の部分
を引用し、自己の主張の根拠にしているが、5の全てを読めば本件の当該争点のポイ
ントが末尾に明確に記載されている事は誰の目から見ても明らかである。
であるが故に、自ら情報公開の専門家を自認する原告がお判りでないはずはない。
ということは、原告は自己の主張に都合の良い部分のみを殊更に取り上げ、俗にいう
「いいとこ取り」をしている訳で、被告はこれをまともに議論する必要を感じないが、
如何なものであろうか。
よって、原告の主張には理由がない。
以上
|