初めに;本件訴訟対象公益法人の追加(2法人)
本件訴訟の対象になるところの、「門真市が補助金・助成金・交付金を支出した公益法人」について、訴状では12法人を上げていたが、以下の2つの公益法人が欠落していたのでそれを追加し、第13、第14とする。
13;財団法人 門真市緑化推進センター
決定通知;甲第25号証 塗り潰し代表者氏名;甲第26号証
◎訴状で欠落していた理由
原告が訴状作成時に資料を紛失して失念していたため。
14;門真市土地開発公社
◎訴状で欠落していた理由
「門真市例規類集 第13類 雑則 第5章 公益法人」に規定されているよ
うに(甲第24号証@AB)、本法人は本件該当の公益法人であるにも拘わらず、
被告がそれを無視して、原告の開示請求への対応を全くせず原告に何も知らせ
なかったために、訴状に上げることができなかったものである。
本件開示請求対象の公益法人の存在自体を隠ぺいした被告の行為は、それ自
体別個の訴訟対象となりうるが、決定通知を出していたとしても被告の対応は
他の公益法人と同様な「役員情報全面不開示」になっていたことは確実なので、
原告は被告の対応を厳しく批判しつつ本件訴訟対象に追加するものである。
第1;ヌケヌケと裁判所をたばかる被告の悪質さと本件の本質
本件情報隠し事件を規定している本質は、被告門真市が法規範意識に欠け、平気で嘘をつき錯乱的な行政運営を行なう一方で、議員としてこれを厳しく咎めチェックしてきた原告を不当に嫌悪し逆恨みしていることであって、決して「情報公開の公益と個人情報保護のバランスをどう取るか」という「条例解釈の違い」を巡っての対立ではない。
そのことは、被告自身の準備書面等の言動に、何よりも以下の通りよく現出しており、これこそが被告の異様さと裁判所をもたばかる悪質さと本件の本質を如実に示す証拠資料そのものである。裁判官諸氏のご賢察をお願いする次第である。
1;短期間で全く正反対の主張を地裁と高裁に提出して恥じない被告の2枚舌
被告は10月1日付の「被告準備書面T」の4,5,6,において、本件不開示の大き
な理由が「開示請求人の身分、言動や請求目的を理由にしての不開示」であると主
張し(それ自体「違法行為の自白」とも言うべきもので、平気でこういう主張を行なう神
経が不思議であるが)、その「証拠」として「合併推進要望とそれをした団体リスト」(乙
第1号証)やそれに対する原告の批判ビラ(乙第2号証)を提出しておきながら、その
わずか8日後に、原告と被告が別途争っている「門真市公金支出団体役員情報隠し
事件国賠訴訟」控訴審(平成15年(ネ)第2569号)において、大阪高裁に提出した
「第1 審被告準備書面T」(10月9日付、甲第29号証)では、この主張を隠ぺいして、
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「被控訴人(原告)は、この控訴人(被告)の行為を、原告(つまり特定の請求者)
の請求であるが故に不開示の処分にしたと盛んに非難するのであるが、そうではない。
被控訴人(原告)の請求が権利の濫用であるから、これに応じなかっただけのことで
ある。」(「1審被告準備書面T」の3ページめ)
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と全く逆のことを述べて、裁判官諸氏をたばかっているのである。
まさに「舌の根も渇かないうち」の鉄面皮な「2枚舌」と言わなければならない。
2;「原告は市民に対する非難・中傷や個人攻撃を行なってきた」という被告の主張は、事
実無根のデッチ上げをもって原告の正当な市民としての言論活動と議員としての言論
活動・行政チェック活動を抑圧する、行政権力によるとんでもない不当行為である。
原告が行なってきたのは全て事実に基づいた批判や評論であって、これを「非難・中
傷や個人攻撃」と言われる余地はどこにもない。そのことは何よりも被告自身がそのよ
うな「被害の事実」をひとつも上げられないことや、裁判文書で述べる以外には原告に
対して何一つ「市民に対する非難・中傷や個人攻撃」の事実を指摘したり警告したりし
た事実がないことからも明白である。
「自治連合会で、人権啓発推進協議会で、老人クラブ連合会で」「会長らだけの勝
手な判断で、理事会・会長会にもかけないで、会員に全く知らせないで」、という被告に
とっても争いのない事実に基づく原告の報道が、「個人攻撃」であって「許されることで
はない」、と主張する被告の感覚には、戦前の全体主義国家もかくやと思わせる空恐
ろしさを感じさせられる。
後に詳述するように、「開示請求者の日頃の言動がどうであるか」を判断材料に入れ
てはならないのが情報公開制度と情報公開法の大原則であるから、被告の原告への
非難主張は裁判的には「無意味な主張」でしかないが、被告がありもしないことをデッ
チ上げて裁判所を騙すことを平気でする者達であり、その体質にこそ本件事件発生の
原因があることを原告は改めて指摘し、裁判官諸氏に訴えるものである。
第2;日本国憲法と情報公開条例および情報公開法の深い関係
1;情報公開から見た戦前の日本と戦後の日本の違い。
戦前の日本では、大日本帝国憲法(明治憲法)という天皇主権の立場に立脚してい
たために情報公開という観念自体が成立する余地はなかった。
国民は、天皇の「臣民」と捉えられ、統治に参加する権利を有せず、行政の内部に関
することは、天皇及び内閣の専属的な事項と考えられ、国民の関与すべきこととは考え
られなかった。公務員は天皇の官吏と捉えられ、その服務関係も法律によってではなく、
天皇の官制大権により勅令形式で規律される建前であった。
しかし、第2次大戦後の日本国憲法は、このような仕組みを大きく変更した。
日本国憲法は、憲法を制定したのが国民であって、統治の最終的権威ないし正当性
が国民にあることを明らかにしただけでなく、統治自体が国民の意思に基づいて行われる
よう、民主主義原理に基づく統治を命じた。
この日本国憲法によって樹立された民主主義原理に基づく統治にとって、情報公開は
不可欠のものであった。
2;日本国憲法による「知る権利」の保障もしくはその要請
日本国憲法は、民主主義に基づく統治を担保するため、国民に市民として不可欠の一
定の基本的人権を保障した。
なかでもとりわけ重要なのは、憲法第21条で保障された、言論、出版、その他一切の
表現の自由である。この表現の自由は、単に自由に言いたいことを言わせておくことが
望ましいから保障されたのではなく、民主主義国家において不可欠の権利だからこそ保
障されているのである。
表現の自由の保障は、何よりも公的論点に関する討論が広く開かれていなければなら
ないことを意味する。表現の自由がないところに民主主義は存在し得ないのである。
このことは、すでに日本の最高裁判所によっても認められている。最高裁判所は、北
方ジャーナル事件判決の中で、「表現の自由、とりわけ、公共的事項に関する表現の自
由は、特に重要な憲法上の権利として尊重されなければならないものであり、憲法21
条1項の規定は、その核心においてかかる趣旨を含むものと解される」と述べている。
(最大版1986<昭和61>年6月11日民集40巻4号872頁)
実際、政治的言論ないし公的言論に限らず、全ての表現の自由は、民主主義において
不可欠の構成要素だと考えなければならない。
しかし、表現する自由を確保するためには、情報を受領する自由、情報を収集する自
由も保護されなければならない。つまり、表現の自由の保障は、情報の受領・収集・伝
達という情報の自由な流通なくしてはありえないのである。
しかも、公共事項について自由な表現を行なうためには、政府の活動について情報が
与えられることが不可欠である。
それゆえ、憲法第21条の表現の自由の保障は、「知る権利」を含むものと考えられな
ければならない。つまり、国民には政府情報公開請求権が認められなければならないの
である。
3;この憲法の要請が時代とともに、1982年埼玉県、1984年東京都と大阪府、川崎市で「公
書公開条例」が制定されるなど、まず地方自治体における条例として先行して、各地
で次々と具現化し、1999年4月1日で47都道府県の全てと847の市町村で条例が制定
され、情報公開制度は地方公共団体のレベルではしっかりと確立した状態になったので
ある。
こういった地方の先行を受けて国においても1999年5月に情報公開法(行政機関の保
有する情報の公開に関する法律)が成立し、2001年4月1日よりの施行をみ、さらに2002
年10月1日から独立行政法人等情報公開法(独立行政法人等の保有する情報の公開に
関する法律)が制定され、特殊法人・独立行政法人等にも情報公開の法的義務が及ぼ
されることになったのである。
4;このようにしてできた情報公開法は、「第1章 総則」の冒頭、第1条に目的規定を置
き、次のように定めている。
「この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定
めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有する
その諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解
と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。」
すなわち、情報公開法は、法律自体が「国民主権の理念」に基づくものであることを
第1条に明記しており、実質的には国民の「知る権利」を具体化したものとしての性格
を持っているのである。
したがって、情報公開法の規定の解釈においては、日本国憲法の国民主権原理と
表現の自由の保障に含まれる「知る権利」を十分考慮した解釈がとられなければなら
ないこ とになる。
5;国会での情報公開法成立から1年余(法施行半年前)の2000年7月から施行されてい
る門真市情報公開条例則の第1章 総則(目的)第1条に、
「この条例は、市民が市の保有する公文書の開示を請求する権利を保障することによ り、
市民の市政への参加と開かれた市政の一層の推進を図り、もって市の諸活動を市民
に説明する責務が全うされるようにし、地方自治の本旨に即した市政の発展に寄与する
ことを目的とする。」
と記されているのも、この憲法の要請を土台においたものであるがゆえに、同条例の
手引書1ページに、
「本条例は「知る権利」という言葉を用いることはしなかったが、知る権利は、憲法の国民
主権の理念にのっとり導き出されるものであって、その知る権利を具体的な「公文書請求
権」として位置付けるものである。」と記載されているのである。(甲第2号証 の3枚目)
第3;自治体には憲法と情報公開法に則った情報公開をする義務がある
1;情報公開法はその第41条で、「地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保
有する情報の公開に関し必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう務めなければな
らない」と定めている。
このことからして、まず地方公共団体は、少なくとも国の情報公開法のレベルまでは
公開レベルを引き上げる責務を負うことになった。
すなわち、情報公開条例を制定していなかった自治体は、少なくとも国の情報公開法
を下回らないレベルで情報公開条例を制定し運用しなければならないし、すでに情報公
開条例を制定している自治体においては、あとから制定された国の情報公開法の方が
情報公開に進んでいる点がいくつかあるので、これらの点については既存の情報公開
条例を改正して、国の情報公開法のレベルにまでは情報公開のレベルを引き上げるこ
とが求められのである。
もちろん、地方自治体が、独自の立場から、国の情報公開法よりさらに情報公開を
推し進めることは何ら妨げられないのは言うまでもない。
2;したがって、地方自治体はかかる憲法21条の要請を反映した情報公開法で定めるレベ
ルを下回るレベルの情報公開しかしなかったり、これに抵触する情報不開示を行なうこ
とはしてはならないのである。
そして現実に、情報公開法施行以後に、新たに情報公開条例を制定する自治体が多
発したのみならず、東京都や大阪府などのように、「知る権利」を明記するほどにまで既
存の条例を改善させて情報公開の考え方とレベルを進展させている自治体がいくつも発
生しているのである。
この点からしても、以下に詳述するように、情報公開レベルを大後退させて情報公開
法に抵触する情報隠しを多発させた被告・門真市の異様さは際立っており、自らの情報
公開条例への背理だけでなく、憲法と情報公開法への違反として厳しく断罪されなけれ
ばならない。
第4;被告の「形式論」による不開示は憲法と情報公開法に違反する
1;被告は「個人を識別できる情報は個人情報だから不開示である」、と繰り返すが、「個
人情報」が保護されるのは個人のプライバシーの権利を保護するためであって、長年の
審議の末制定された情報公開法も、これについては、「法令の規定により公にされている
情報(登記簿に登記されている法人の役員に関する情報、不動産の権利関係に関する
情報等)や慣行として公にされている情報(叙勲者名簿、中央省庁の課長相当職以上の
者の職及び氏名等)は、一般に公表されている情報であり、これを開示することにより、
場合により個人のプライバシーを害するおそれがあるとしても、受忍すべき範囲にとどま
ると考えられるので、これを例外開示情報とした」との考え方に立つものであり、この趣
旨は門真市情報公開条例にあっても異なる所がない。
「公にされ」ている情報とは、開示請求時点で何人でも知りうる状態に置かれている情
報を言うのだから、「何人にも公開される公益法人役員情報」がまさにこれに合致するこ
とは議論の余地がない。
公開されている情報については、プライバシーの権利は成立しないのである。
2;また、保護されるべきプライバシーは、「一般に他人に知られたくないと望むことが正
当であると認められるもの」である。情報公開法第5条の1、個人に関する情報の部分
に「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利
益を害するおそれがあるもの」との記述があることは、「個人の権利利益を害するおそ
れ」からの防衛が個人情報不開示の理由であることを示しているし、大阪府情報公開
条例の第9条では、「公開してはならない行政文書」として、「特定の個人が識別され
得るもの(以下「個人識別情報」という。)のうち、一般に他人に知られたくないと望むこ
とが正当であると認められるもの」と規定している。
また、門真市情報公開条例第3条では、「通常他人に知られたくない個人に関する
情報がみだりに公にされることのないよう」との規定がある。
この、「一般(通常)に他人に知られたくないと望む」ことが相当かどうかの判断の基
準は、決して当該特定の人ではなく、客観的に一般(通常)であれば開示を望まないか
どうかを基準としなければならないことは、学説として確立しているものである。
公的便宜を享受している公益法人の役員の氏名等の公開については、「一般に他人
に知られたくないと望む」ことの妥当性はなく(当事者もそのような要請は全くしていな
いが)、被告の言うように一律形式的に「個人識別情報だから不開示にする」ことには正
当性を認める余地がない。
3;また被告は「閣議決定は自治体を拘束するものではない」とか「自治体は自らの裁量
で不開示を決めることができる」とか述べて不開示を正当化するが、これはタメにする
「形式論」でしかなく、自治体が憲法や法律の要請に反した不開示をすることを正当化
するために「地方分権」や「地方自治」という言葉があるのではない。
公益法人役員情報の公開を決めた1996(平成8)年および1997(平成9)年の閣議決
定は、「2.公益法人は、我が国の経済社会において重要な役割を担うに至っており、
今後ともその活動の適切な発展を図ることが重要であり、公益法人に対する適正な指
導監督等を強力に推進していくため、これまでの基準を整理・強化」が必要だと述べて
いる(甲第4号証)が、これは数多くの不適切事例が存在するからこそ必要とされた改
善策であった。
しかしそれでも閣議決定後6・7年も経った今も実態がなかなか改まらず、甲第23
号証に示されるような補助金不正受給事件が後を絶たず、甲22第号証の<2003年
度公益法人白書に関する9/24読売新聞記事>でも「野放図な経営実態変わらず」、
との見出しをつけて報じられるような実態なのである。 甲第22号証の記事はその実
態を、
◎行政は高い公益性に配慮し、公益法人に対して様々な恩恵を与えている。その一
つが税制上の優遇措置で、原則として所得税や地方消費税などの国税、地方税
が免除される。また、6802法人が国や地方自治体から補助金や委託費という形
で計1兆4813億円を受け取っている。
◎だが、白書を見ると、政府が運営の公正性や透明性を高める目的で1996年に決め
た指導監督基準に、事業活動が違反している法人が依然として少なくない実態が
浮かび上がる。
◎退職した公務員の天下りの温床にもなっている。「所管行政機関出身の理事は全
理事の3分の1以下」という基準に反し、財団法人「埼玉県警察職員福利厚生会」
では20人の理事全員を警察OBが占める。同様の法人は少なくとも70に及ぶ理事
が所在不明となっていることなどから、行政の指導監督が行き届かない恐れがあ
る法人も626を数える。 と述べている。まことに実に由々しきことと言わねばならな
い。
4;役員の情報公開はこういった実態を改善するための納税者への責務としてなされてい
るのであるし、また、公益法人制度については透明性、適切性を高めるために、体系的
な見直しが政府方針として決められ、改革へ大きく動き出しており、役員情報の開示が
今より後退することはおよそ考えられない。さらに独立行政法人等情報公開法に続いて
法律による情報公開の方向に進むことは間違いない。
こういった実状を全く無視して、「個人を識別する情報」とか「自治体の裁量の自由」
をかざして不開示をする被告の姿勢は、税金ドロボー発生への容認と公益法人改革妨
害を意図的に図っているのではないかと疑わざるをえないほど、違法で異常な姿勢で
ある。
公益法人役員の情報開示については、この妥当な閣議決定に沿って対応すべきこと
は、かつて一度もどこでも問題になったことはなく、地裁7/14裁判でもはや決着のつい
ていることである。
5;門真市情報公開条例は、第1条で「開かれた市政の一層の推進を図り、もって市の
諸活動を市民に説明する責務が全うされるようにし」と唱い、第3条で「実施機関は、
公文書の開示を請求する権利が十分に保障されるようにこの条例を解釈し、運用しな
ければならない。」と定め(甲第30号証A)、その運用にあたっては「市の保有する情
報は、原則開示とし、例外として不開示とするものは、最小限にとどめるものとする。」
(甲第30号証@)と定めている。
しかし被告門真市がやっていることは、「(閣議決定等によって)何人にも公開され
ているもの」でも、「大阪府や国など他の公機関で公開されているもの」でも、「当事者
自らが公開しているもの」でも、「公益との比較で当然受認されるべきこと」でも、「公
金受給団体の責任所在情報」であっても、「議会に提出された公開資料」であっても、
個人氏名があれば全て市の裁量で不開示だと言うのであるから、いったいどこに情
報公開があるというのだろうか?
これは開示請求者に対する嫌がらせに等しく、公開拒否の濫用に他ならない。憲法
や情報公開法のみならず門真市の情報公開条例にも違反しているものである。
第5;請求人の身分・言動・目的による差別不開示は情報公開法違反
1;被告は、10/1被告準備書面において、「原告が(既に情報を入手している立場にある)
議員だから」、とか「原告の日頃の言動が他人を誹謗中傷・個人攻撃しているから」、と
か「暗黒錯乱行政の調査という請求目的がケシカラン」とか、「個人攻撃に利用する目的
を持った開示請求だから」、などを不開示判断の理由として挙げているが、これは請求者
の身分(職業)・言動(への評価)・開示請求目的・情報利用目的(の推測)等によって
開示請求者を差別して不開示にしたことを自白しているものに他ならない。
このような違法な差別不開示を、情報公開法施行1年2ヶ月後で「防衛庁情報開示請
求者リスト問題」が大騒ぎになっている2002年6月に挙行し、独立行政法人等情報公開
法施行1年後の現在も平然と主張する被告の無知と厚顔は並大抵のものではない。
2:情報公開法第3条は、開示請求権者については、「何人も、この法律の定めるところに
より、行政機関の長に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することが
できる」と定める。それゆえ何人でも、第3条に基づく「開示請求」を行なえる。
情報公開制度は、誰から公開請求があっても情報を公開する制度であるから、公開請
求を誰がしたかは重要ではない。それどころか、請求者が誰であるかとか、その身分や
職業を判断材料に加えることは情報公開法に違反する行為として禁止されるのであり、
ましてや「請求者の日頃の言動や将来の行動予測(への行政当局の評価)」を判断材料
に加えるなどは論外の違法行為である。
そうであるからこそ、2002年6月の「防衛庁情報開示請求者リスト問題」に際して朝
日新聞社説は「国民は敵なのか」と題して防衛庁を厳しく批判した(甲第27号証A)の
だし、火消しにやっきとなった中谷防衛庁長官の方は「情報公開はすべての人々に平
等に取り扱われるべきで、思想や信条によって区別されるべきものではない。事実であ
れば、関係者の処分も検討したい」と繰り返し述べたのである。(甲第27号証@)
つまり、あの防衛庁ですら違法と認識していたことを門真市は今でも違法と思わずに
声高に主張しているのである。
3;また情報公開法は、(開示請求の手続)第4条において、開示請求者に氏名住所等と開
示請求対象文書の特定のみを求めている。
これは、「開示請求権制度は、誰かがいったん公開請求して公開されれば、その情報は
本来全ての人がアクセスしうるものであり、行政文書の開示の請求の理由及びその利用
の目的を問わず、また請求者の何人であるかを問わずに行政文書の開示を求めることが
できるとする制度であるゆえに、請求の理由、利用の目的、開示請求者と開示請求に係
る情報との関連性等に関する事項の記載は要求しないこととすべきである」という考え
に基づいているからである。(この場合の「氏名住所等」は請求者への連絡のためのもの
であって、決してその個人や所属団体等による識別をつけるためのものではない)
それゆえ、行政機関がそれ以外の事実について開示請求書に記載を求めたり、開示請
求を受け付けるに際してそれ以外の事実について尋ねることはすべきではないのである。
開示請求の目的は、行政の監視のためのみならず、営利目的でも、商業目的でも問わ
ない。情報公開の枠組みの中では、「何のために、情報公開請求するのか」という開示請
求者の意図は関係ない。
また、開示請求者が開示された情報をいかなる目的で利用するかも関係がない。
行政の恣意的差別的判断が入り込まないようにするためには、開示請求された情報が
例外事由に該当するかどうかは、情報に即して客観的になされるべきであり、開示請求
の意図が何であるか、開示請求者の利用目的が何かによって左右されるべきではなく、
開示を拒否できるのは、あくまで規定で定められた例外事由に該当する場合だけであっ
て、それ以外を理由とする開示拒否は違法である、というのが情報公開制度と情報公開
法の趣旨である。
4;しかるがゆえに、自治体に法のレベルを下回らないことを求める情報公開法が施行さ
れて2年強経過した6/11の朝日新聞では、「請求理由(目的)」の欄を設けているのは
全国47都道府県のうちわずか18に減り、しかもうち欄外に「文書特定の参考にするた
めのもので、記入は任意です」などの注釈を設けている自治体が7都県になっているこ
とが報じられているのである。(甲第28号証)
また、同記事の「誰でも請求できるよう変更を」という堀部政男・中央大教授(情報
法)の「情報公開の本来の趣旨は、できるだけ自由に請求できるようにすること。法律
であっても条例であっても、何人も理由を問われることなしに請求できるようにするの
が理念だ。「理由」を書かせると、たとえ簡単なものでも請求する側が何らかの制約を
感じることになる。今後は理由を問わないこととするほか、情報公開法のように何人も
請求できるように変えていくべきだろう。」という解説にあるような方向に、事態が進ん
でいくことも疑いがないところである。
かかる時代・法律状況にあって「請求目的の記述内容」に難癖をつけて不開示決定
と請求者非難をして恥じない被告門真市の愚劣さは、客観的に見てもまさに「暗黒錯乱
行政」以外の何物でもない。
おわりに;違法な情報隠しを処断する早期判決を要望します
本件不開示の不当性は、端的に言って閣議決定と7/14大阪地裁判決の該当部分で決着がついているものであり、当方は今回の準備書面を持って過剰なくらい十二分にそれを補充論証しましたし、一方被告側は何ら意味のある反論ができないままであり、もはやこれ以上の弁論は不要であると考えます。
裁判所におかれましては、被告門真市の違法な情報隠しを処断する早期判決を出して頂きますよう、強くお願いいたします。
なお、本準備書面作成にあたりましては、大阪大学大学院法学研究科教授の松井茂記先生の著書「情報公開法 第2版」(有斐閣)を大いに参考にさせていただいたことを付言しておきます。松井先生は、大阪府公文書審査会委員、核燃料リサイクル開発機構情報公開委員会委員を歴任し、大阪府高槻市において情報公開条例を制定する際に制定作業に関与され、1999年3月末まで12年間にわたり高槻市情報公開審査会の委員を務めてきた方であり、情報公開に関して国際的視野も含めて非常に高い見識と豊富な経験を持っておられる方です。
本準備書面の最後に、同著の帯にありますアメリカ合州国第4代大統領ジェームス・マディソンの言葉を掲げさせていただきます。
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「人民が情報を持たず、情報を入手する手段を持たないような人民の政府というのは、喜劇への序章か悲劇への序章か、あるいはおそらく双方への序章にすぎない。知識を持つ者が無知な者を永久に支配する。そしてみずからの支配者であらんとする人民は、知識が与える権力でもってみずからを武装しなければならない。」
==================================
以上。
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