第8;公益との比較考量が皆無の原判決
1:1審原告は「公益」と「保護されるべき個人情報」との比較考量について、言い換え
れば「場合により個人のプライバシーを害するおそれがあるとしても、それは受認すべ
き範囲内にとどまるものというべき」事柄の判断基準について、多様な角度から詳細に
説明を行ない、本件情報が不開示情報に当たらないことを十二分に論証してきたところ
である。
とりわけ、「第2準備書面」の2;情報公開判断の大原則について、において
A:開示・不開示の判断は純粋中立に情報公開条例条文(とその手引書)に依らなけれ
ばならない。
B;法令や閣議決定で公開が決まっているものを自治体が不開示にすることはできない。
C;国や都道府県が開示しているものを市町村が不開示にすることはできない
D;開示請求者の動機推測や個人評価を加味して判断してはならない。
E;その時々の政治的状況判断を加味して判断してはならない。
F:議会に提出された情報は公開が大原則である。
G:公金支出先団体の責任者氏名は公開されるのが当たり前である。
H:公人や幹部級公務員の氏名は公開が当たり前である。
I:本人が公知したり図書館や一般新聞で報道されているものは当然開示対象である。
の9大原則を明示して門真市行政を断罪しつつ裁判所に判断を迫ってきた。
2;ところが原判決は何らまともな「比較考量」をすることなく、ほとんど全部を1審被
告門真市行政の暗黒錯乱ぶりに同調しただけであった。
原判決が具体的考察に基づいて「公益」との比較考量をした形跡は全くない。
とりわけ本件不開示が「公金支出の説明責任を破壊する」危険性についての鈍感ぶり
は容認しがたいものである。
3;当方が、「第3準備書面」最終項目で、
「こういうような「『特定の個人・特定の状況への判断による不開示』を一度やってし
まえば、それはたちまち『誰に対しても・いつでも不開示にしなければ収まりがつか
ない』という『無差別無制限な違法な不開示』に直結する。」、と警鐘を鳴らしておいた
が、まさに今その危険性が現実のものとなってしまった。
すなわち、本件不開示が発生するまでは門真市において「市が補助金、助成金を出
している団体の役員氏名が一般市民に対して秘密にされる」などということは考えられ
もしなかったのに、本件不開示事件によって・・・・・無差別無制限で不当な不開示が
進むことによって、2003年度予算において、市が補助金、助成金を出している団体数
229、支出金額総計約4億200万円のうち・・・実に合計214団体、 支出金額
約3億700万円に関して、それらの団体の代表者や会計、監査などの役員氏名が隠蔽
されたまま、公金支出が続けられる(!)という、驚くべき事態にまで進んだのである。
(甲第69号証および甲第70号証)
・・・公金をそそぎ込んでいる団体の責任者が誰であるのか市民に秘密にしたまま
億単位のカネが支払われていくドロ沼が、腐敗を呼び寄せてしまうことは論を待たない。
一刻も早くこの違法な情報隠しを処断して門真市行政を正常化しなければならない所
以である。」 との訴えを行なった。
また、同じく甲第66号証、67号証、68号証や「第3準備書面」において、大阪府
下32市の情報開示実態を実証的に論じて、門真市の不開示がいかに異様なものである
かをつぶさに明らかにした。
しかし、1審の裁判官らは全く耳を貸さず目をつぶってしまって空疎で荒唐無稽な抽
象論に立って原判決を書いてしまった。
そのことによって何が起こったかと言えば、大阪や全国の行政の多くでこの不当判決
に従って情報公開の大きな後退が始まったのである。
原判決は「汚職と腐敗のタネは尽きまじ」のこの社会にあって、まさに情報を出され
たくない・出したくない勢力にとって願ったり叶ったりの、「情報公開のレベルを20
年前まで押し戻してしまいかねない」悪影響を持つ大毒草であって、早急にこれを是正
しなければ大変なことになってしまうだろう。
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