第4;「公務員たる消防団役員氏名不開示」に見える
原判決の違法性と事実隠ぺい
1;原判決は地方公務員たる消防団の役員について、市長への要望書提出団体の代表者と
しては団長の氏名開示は正当だが、それ以外においては代表も役員も氏名は不開示情報
であり、その理由を「何ら具体的な職務行為を前提としない公務員の職に関する情報で、
まして公務員の氏名は非開示とされるべき個人情報から除外されることはない」とする
という、驚くべき判断を行なっている。
2;原判決は公務員全般についてこのように断言するのだが、もしこれに従うならば、例
年新聞等で発表されている公官庁の人事異動記事は全て違法だということになる。
また、門真市を含めてどこの役所でも「職員は名札を着用」して不特定多数の人々に
その氏名と職階を表示しているにも拘わらず、また公報や議会だより等の公刊物で部課
長の氏名などたびたび公開されているにも拘わらず、「○○部の部長や課長さんの名前
を教えて下さい」と尋ねても「個人情報だから教えられない」ということになってしまう。
また、日本国憲法第十五条は「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固
有の権利である。」と定めているが、「公務員の氏名は不開示」とされたならば、いった
い国民はどうやってその公務員を特定できるのか。
原判決が社会常識にも憲法にも反し、「開かれた行政」の実現も市民による行政チェ
ックも不可能にする暗黒行政の推奨の愚論であることは言を待たない。
3;特定の公務員の給与・手当や退職金とを併合した情報ならば「個人情報として不開示」
という論も立つかもしれない。(これについては公金支出だから開示すべきという論も
有力であり、行政と市民オンブズとの係争にもよくなっている)
また、たとえば枚方市に行って「ここに住んでいる門真市職員の氏名」の開示を求め
るのならそれは「個人情報として不開示」になっても不思議ではない。
しかし、門真市役所に行って門真市職員の職階と氏名の開示を求めることは行政の責
任体制や人事機構を知るためのものとして当然認められるべきことである。
それどころか、現代の行政としては、積極的にそれを市民に知ってもらって個別職員
への市民評価が環流するように図ることが求められていることではないのか。
また、行政問題の様々な調査研究取材に当たって歴代の職員人事の変遷を調べること
は重要な課題であって、原判決はこういう調査研究取材の自由を封鎖するか当局の裁量
による許可の下に置いてしまうかするものである。これもまた暗黒行政の推奨である。
4;原判決は、「分団長及び副分団長は消防団全体ではなくその所属する分団の責任者にす
ぎない」・「また門真市消防団本部名簿(甲28の8)に記載されているのも、団長及び副
団長のみである」からとして、「分団長・副分団長は役員ではない」という珍論を述べる
が、これは全く失当である。
そもそも消防団は本部と分団総体で団を形成しているものであるから、分団長・副分
団長が消防団の重要な役員なのであって、「本部役員名簿に載っていない」こととは関係
ない。
1審原告「第1準備書面」13ページ(4)や甲第35号証にある通り、分団長・副分
団長は消防団条例の第13条、旅費規定によって課長代理級として定められているほど
の「幹部」なのであり、また各分団ごとに市が支給している消防ポンプ車など種々の消
防機器や設備の管理者責任者でもあるのだからその氏名は当然開示対象である。
それだけでなく、常勤の消防署員とは違って非常勤の地元有志が形成する「消防団」
の結成目的そのものから考えても、火災の予防や初期対処にあたって「地元住民の一団
が日常生活の中で眼を光らせて対処する」「身近な頼れる味方=消防団」の構成員が誰で
あるかは、それこそ民生委員並に地域住民に公開されて当然なところではないか。
消防団員はみな自分が団員に任命されていることを誇りに思っているのであり、その
身近な幹部である分団長・副分団長の氏名を「個人のプライバシーで不開示」などとす
る原判決の非常識さは噴飯ものである。
5:原判決によれば消防団の「役員」は団長と副団長だけであり、一般事例においてその
氏名は全て不開示ということになる。門真市の場合たまたま団長が現職議員であるがこ
れは他市町村では例外に属することである。(報酬手当・退職金を得るだけでなく、団長
以下の全ての団員の任命権を持つ消防団長が議員と兼職で良いのかとの疑問がある)
そういう特殊事情で門真市消防団の場合は「公機関への要望」の場合以外の一般事例
でも団長の氏名は開示されるが、原判決によれば公職者との兼任でなくなれば氏名は不
開示となってしまう。
門真市で上限247人の団員を有し、報酬・手当・退職金を受け、市費で装備を与えら
れ、市の防災に多大な責任と実績を有する消防団にあって「役員が誰かは市民に公開で
きない」などという理不尽があってはならないことは常識中の常識に属する事である。
6;なお、消防団についてはその功績の一方で、「団員は全て(市長の承認を得て)団長が
任命」し、「団長は団の推薦に基づいて市長が任命する」ものであるから(消防団条例第
2条;甲第35号証)、とかく「閉鎖的」とか「団長(や幹部)のえこひいきや縁故任命
の横行」、「市長の集票機構としての消防団」などが言われる場合がある。
つまり消防団員は「公務員」でありながら一般公募や採用試験もなしで公務員の地位
に就くという特殊性があるのだが、こうした疑惑や批判を招かないためには、団員や役
員人事の透明さや公明正大さが確保されねばならないのであって、その面からも「団員
のみならず役員氏名までも不開示」という原判決は暗黒行政の推奨にほかならない。
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