第10;「自庁取り消し」の名目で不当な手続違反を
     正当化する原判決の詭弁
     

1;原判決は「自庁取り消し」という言葉を操作することで、本件の不当な決定変更を正
 当化するが、これはまったく失当である。
  条例で定めた期限を過ぎてからの「自庁取り消し」が正当なものであるためには、
 原判決自らが述べるように、「処分の取消しによって生ずる不利益と取消しをしないこ
 とによって当該処分をそのまま維持することの不利益とを比較考量し、当該処分を放置
 することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当であると認められる」ことが絶対に必
 要な要件である。
  この「取り消さないことが公共の福祉に照らして著しく不当」という要件は、公共的
 な不利益の程度が非常に高く、またその客観性が非常に厳密に論証されるものでなけれ
 ばならないことは言うまでもない。もしそうでなければ、単に行政側の思い込みやその
 場の都合、恣意的判断によって、法的に約束された事項が一方的に蹂躙されてしまうこ
 とを許してしまい、行政側の法規範遵守の意識を薄めさせてしまうからである

2;また特に「法定の期限を過ぎて、規定にない変更を一方的にする」ことは、実質的に
 は「市民は手続期限厳守を求められるが行政は期限を過ぎてからでも変更してよい」、
 という偏ったものになるし、行政には期限内で真剣に吟味する責任感を薄れさせる影響
 を与えるので、よほどの必要性と行政の真剣な取り組みがなければ許されるものではな
 い。

3;しかるに、本件決定変更に当たっては、既に論証したように、あえて不開示に決定変
 更するべき何の正当性も必要性も、公共の福祉の要請も存在しないし、従って同時に1
 審被告が決定変更や軌道修正のために何ら工夫検討した事実もなく、ただただ、恣意
 的で理不尽で違法な不開示決定に突然変更して1審原告に多大な迷惑と損害を与えた
 だけであって、とうてい「最高裁判例」を引いて論じるような事例ではない。
  このような市民を愚弄した暴挙が「自庁取り消し」の名目で許されるのならば、「行政
 の好き勝手し放題」であって、およそ法規範そのものが成り立たなくなってしまう。