答 申 書

平成15年8月29日

門真市長 東 潤 様

門真市情報公開審査会
会長 金谷 重樹

平成14年9月18日付け「門企情396号」で諮問のありました下記の事案について、次のとおり答申します。

 「今年5月8日に市長、議長あてに『合併推進要望書』を出した38団体について2001年度及び2002年度の@代表者の連絡先(住所)A定款B役員(理事)リストC総会・役員会(理事会)資料、議事録D市からの補助金や人員派遣の実態がわかる資料(又はその現物)」に係る不開示決定に対する異議申立てについての諮問

審査会の結論

門真市長が、異義申立人に対し、平成14年6月19日付けでした公文書の一部不開示決定のうち、別紙団体名目録記載の各団体の代表者の氏名を不開示とした部分については、それを取り消した上、開示すべきである。

理  由

第1 異議申立ての趣旨

 門真市長が、異義申立人に対し、平成14年6月19日付けでした、不開示決定のうち、代表者の氏名及び住所並びに役員の氏名に係る部分を取り消す。

第2 事案の概要

 1 本件は、異義申立人が、門真市長(以下「市長」という。)に対し、門真市情報公開
   条例(以下「条例」という。)に基づき、「今年5月8日に市長、議長あてに『合併推進
   要望書』を出した38団体について2001年度及び2002年度の@代表者の連絡先
   (住所)A定款B役員(理事)リストC総会・役員会(理事会)資料、議事録D市から
   の補助金や人員派遣の実態がわかる資料(又はその現物)」(以下、「本件公文書」
   という。)の開示を請求したところ(以下「本件請求」という。)、門真市長が本件公文
   書の一部の開示を拒否する決定をしたので、異義申立人が市長に対し、行政不服
   審査法に基づき、上記決定のうち代表者の氏名及び住所並びに役員の氏名に係る
   部分の取消しを求める事案である。

 2 前提事実等(争いのない事実及び証拠によって容易に認められる事実)

  (1) 条例が定める不開示情報 条例は、第6条において、「実施機関は、次の各号の
     いずれかに該当する情報(以下「不開示情報」という。)については、開示しないこ
     とができる」とし、7個の不開示情報(第1号ないし第7号)を規定しているところ、
     本件に関係する部分は次のとおりである。

     第1号 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)
          であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により
          特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、
          特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の
          個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利
          利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。

          ア 法令若しくは条例(以下「法令等」という。)の規定により又は慣行とし
           て公にされ、又は公にすることが予定されている情報
          イ 公務員の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員の職に関する
           情報
          ウ 人の生命、身体、健康、財産又は生活を保護するため、開示すること
           がより必要であると認められる情報

 (2) 本件開示請求

     異義申立人は、門真市の住民であり、条例第5条第1項第1号に基づく公文書開示
   請求権者であるところ、平成14年5月23日、条例第2条第1号に基づく公文書開示の
   実施機関である市長に対し、条例第10条に基づき、本件開示請求をした。

 (3) 本件処分

     市長は、平成14年6月19日、本件開示請求に対し、本件公文書の一部を開示しな
    い旨の決定(以下「本件処分」という。)をし、その旨を異義申立人に通知した。

 (4) 本件処分の理由

     条例第6条第1号が不開示情報として規定する個人情報に該当するため。

第3 争点及びこれに対する当事者の主張

 1 争点

  本件公文書に記録されている代表者の氏名及び住所並び役員の氏名の条例第6条
  第1号が規定する不開示情報該当性

  (1) 本件公文書の「議会に対する請願」該当性

  (2) 法人等が提供した情報に含まれる代表者の氏名及び住所並びに役員の氏名の
     不開示情報該当性

  (3) 公務員である消防団の団長の住所並びに公務員である副団長、分団長及び副
     分団長の氏名の不開示情報該当性

  (4) 公益法人の代表者の氏名及び住所並びに役員の氏名の不開示情報該当性

  (5) 守口門真商工会議所のホーム・ページに掲載されている役員の指名の不開示情
     報該当性

  (6) 補助金等を受けている団体の代表者の氏名及び住所並びに役員の氏名の不開
     示情報該当性

 2 争点に関する当事者の主張

  (1) 争点(1)について

     (異議申立人)
      本件公文書は、合併の要望書というその内容の重要性に鑑み、議会に対する請
     願として扱い、代表者の氏名を公表すべきである。

     (市長)
      本件公文書は、議会に対する請願ではない。

  (2) 争点(2)について

     (異議申立人)
       条例第6条第2号のイは、「法人等から提供され、不開示の条件がいていない情
      報」は開示されるべきものとしている。

      (市長)
       条例第6条第2号のイが規定する情報は「実施機関からの要請を受けて」法人等
      が提供した情報であり、本件公文書に記載されている情報はそれに該当しない。

  (3) 争点(3)について

      (異議申立人)
        条例第6条第1号のただし書イは、公務員の職務の遂行に係る情報に含まれる
       当該公務員の職に関する情報を不開示情報から除外しているから、消防団の団
       長については氏名のみならず住所をも、また副分団長、分団長及び副分団長につ
       いてはその氏名を開示すべきである。
        また、条例第6条第1号ただし書アは、慣行として公にされている個人に関する
       情報を不開示情報から除外しているが、消防団の副団長、分団長及び副分団長
       については、門真市の条例上、それぞれ、慣行として氏名が公にされているとこ
       ろの部長級または課長代理級の職とされているから開示すべきである。

      (市長)
        消防団の団長の住所並びに副団長、分団長及び副分団長の氏名は、条例第6
       条第1号ただし書イに規定する公務員の職務遂行に係る情報に含まれる当該公
       務員の職に関する情報ではない。
        また、消防団の副団長、分団長及び副分団長の氏名については、公にする慣
       行は無い。

  (4) 争点(4)について

      (異議申立人)
        公益法人の代表者及び役員の氏名及び住所を開示することが平成8年9月20
       日閣議決定されており、旧総理府も月刊誌「公益法人」において同様の見解をと
       っているから、(社)大阪府公衆衛生協力会門真支部及び(社)門真市社会福祉
       協議会については、門真市長もこの決定ないし見解に従って、それらの代表者
       及び役員の氏名及び住所を開示すべきである。

      (市長)
        閣議決定及び旧総理府の見解は国の公益法人に対する指導であり、門真市が
       保有する公益法人に関する情報の開示・不開示は門真市の情報公開条例の規
       定に従ってなされなければならない。

  (5) 争点(5)について

      (異議申立人)
        守口門真商工会議所はそのホーム・ページ上において、その役員の氏名を公
       開しているから、市長には不開示とする理由がない。

      (市長)
        守口門真商工会議所がその自らの判断において行う公開と門真市長が条例に
       基づいて行う開示は別の基準によるものである。

  (6)争点(6)について

      (異議申立人)
        市が補助金・助成金を交付している団体の代表者及び役員の氏名及び住所を
       開示しなければ市の負う議員及び市民に対する説明責任が全うされない。

      (市長)
        補助金・助成金の交付と個人情報である代表者及び役員の氏名及び住所を開
       示することとの間には関連性がない。

第4 争点に対する判断

 1 争点(1)について

    異議申立人は、その内容の重要性に鑑み、本件公文書を議会に対する請願として扱
   うべきであると主張する。しかしながら、市長の主張するとおり、本件公文書は、その提
   出手続などに照らしても、単なる要望書であり、請願とみなすことはもとより、推定する
   こともできないといわなければならない。

 2 争点(2)について

    異議申立人は、本件公文書に記載されている情報が、条例第6条第2号のイが不開
   示情報として規定する「法人等から、開示しない約束の下に提供された情報」には該当
   せず、したがって開示されるべきであると主張する。
    しかしながら、市長の主張するとおり、条例第6条第2号のイが不開示情報に該当し
   ない情報として規定する法人等が提供した情報とは、「実施機関からの要請を受けて」
   提供した情報であり、異議申立人の主張は失当である。

 3 争点(3)について

    まず、個人の住所については、それが条例第6条第1号本文に規定するところの不
   開示情報に該当することは明らかであり、また公務員の住所は、職務上その位置を指
   定されている等の特別な場合を除き、本来、それを何処に置くかは、当該公務員の生
   活上の問題であり、職務の遂行と関係を有しない事柄であるから、消防団の団長のそ
   れが条例第6条第1号ただし書イに該当しないことも明らかである。

    次に、条例第6条第1号ただし書イは「公務員の職務遂行に係る情報に含まれる当
   該公務員の職に関する情報」を不開示情報から除外しているが、職に関する情報とは、
   職がいわゆる「ポスト」を指す語であることからすれば、氏名に関する情報とは異なる
   情報であるといわなければならない。もっとも、公務員の氏名は、本来、当該公務員の
   私生活上の情報であり、したがって条例第6条第1号本文が不開示情報として規定す
   るところの個人に関する情報であるとしても、他方、職務遂行と密接不可分の関係にあ
   り、また公務員の公的責任と市の住民に対する説明責任に鑑みれば、職に関する情
   報の開示に付随して公務員個人が特定されたとしても、それは公務員として受忍すべ
   き不利益であり、条例第6条第1号ただし書イもこの趣旨を包含した規定と解される。
   そうすると、条例は公務員個人の氏名の開示を直接に請求することは認めていない趣
   旨と解すべきである。
    そして、異議申立人及び市長の主張に照らせば、消防団の副団長、分団長及び副分
   団長の氏名を公にする慣行がある事実は認められない。

 4 争点(4)について

    異議申立人は、公益法人の代表者及び役員の氏名及び住所について、門真市にお
   いて閣議決定ないし旧総理府の見解に沿って開示されるべきであると主張するが、市
   長の主張するとおり、当該決定ないし見解は公益法人に対する国の指導基準であり、
   門真市の保有する情報については、門真市の情報公開条例に基づいて判断されなけ
   ればならないといわなければならない。

 5 争点(5)について

    異議申立人は、守口門真商工会議所がそのホーム・ページ上において、その役員の
   氏名を公開しているから市長はそれを不開示とする理由がない旨を主張する。しかしな
   がら、市長の主張するとおり、守口門真商工会議所が自らの判断において、自己の情
   報を開示することと、市長が他者である守口門真商工会議所の役員の氏名を開示する
   こととは別の事柄であり、後者については条例の規定に基づいて行わなければならな
   いことは明らかである。

 6 争点(6)について

    市長は、補助金・助成金の交付と個人情報である当該団体の代表者及び役員の氏
   名及び住所を開示することとの間には関連性が無い旨を主張する。しかしながら、市に
   はその諸活動を市民に説明する責務があり(条例第1条)、また自己の判断において
   公金から補助金・助成金の交付を申請し、それを認められている団体については、住
   民自治の原則から、原則として、その活動内容や使途等を市民に説明する責任を負っ
   ているといわなければならない。そうすると、申請に基づいて、公金から補助金・助成金
   が交付されている団体については、当該団体がその構成員の人権を実現するために
   組織されたものであり、開示することによって人権が侵害されるおそれがある等の特段
   の事情の存する場合を除き、その団体を市民が具体的に特定し得るためには、団体名
   のみならず、その代表者の氏名も公開されなければならないといわなければならず、ま
   たこのような解釈は条例の趣旨に沿ったものであると解される。
    他方、代表者の住所については、当該団体の活動と関係のない事柄であるから、条
   例に規定する不開示情報に該当することは明らかである。

    また、日本国憲法がその第21条で結社の自由を、第19条で思想信条の自由を保障し
   ている趣旨に鑑みれば、たとえ補助金・助成金の交付を受けている団体であっても、役
   員を含めたその構成員の氏名は原則として公開されてはならず、ただ代表者についての
   み、その説明責任を全うする必要性から、例外的に、その氏名を開示されることによる不
   利益を受忍する義務があると解すべきである。

    以上の見地に立って本件を見ると、別紙団体名目録記載の団体については、その代表
   者の氏名は開示されるべきであるといわなければならない。

 

 なお、付言すれば、異議申立人は、本件開示請求に対し、市長が平成14年6月6日及び7日にした処分を取り消した上、本件処分を行ったことの違法性を主張するが、当初の処分は法定期間内に行われている以上、条例第11条第1項の違反はなく、所論は独自の見解に過ぎない。


【別 紙】

団体名目録

門真市たばこ販売店組合

門真市自治連合会

上野口校区

浜町校区

門真校区

五月田校区

門真市生活学校

門真市消費生活研究会

守口門真商工会議所

大阪府門真地区国民年金委員協議会

人権啓発推進協議会

門真市遺族会

門真市社会福祉協議会

門真エイフボランタリーネットワーク

大阪府公衆衛生協力会門真支部

門真市老人クラブ連合会


※上記答申書を踏まえて門真市より出された「異議申立に対する決定留保」の文書

門企情第 298 号

平成15年9月12日

異議申立人

門真市北巣本町17−7
     戸 田  久 和 様

門真市長 東 潤

異議申立に対する決定の保留について

異議申立人が平成14年8月12日付けで提起した下記の事案については、次のとおり決定を保留します。

 今年5月8日に市長・議長あてに「合併推進要望書」を出した38団体について、2001年度及び2002年度の@代表者の連絡先(住所)A定款B役員(理事)リストC総会・役員会(理事会)資料、議事録D市から補助金や人員派遣の実態がわかる資料(又はその現物)に係る不開示決定に対する異議申立てについては、平成15年8月29日付けで、門真市情報公開審査会より答申(別添写しのとおり)が出されました。

 しかし、この不開示決定については大阪地方裁判所平成14年(ワ)第8041号損害賠償請求事件として争われ、平成15年7月14日に判決が下されましたが、双方が判決を不服として大阪高等裁判所に控訴したところであり、不開示決定に対する判断が未だ確定していない段階であるので、異議申立てに対する決定を留保します。