国賠訴訟;地裁 第3準備書面(3)

3:「決定期限を過ぎての不利益決定」の違法さは動かない

(1)「情報公開条例の手続に違反」、とりわけ「決定期限を過ぎてからの請求者への
   不利益決定をしたとことの違法性」に対して、被告はようやく「12/24釈明書」にお
   いて、その正当化を次の「混合的2本立て理論」でかろうじて行なっているに過ぎ
   ない。
   すなわち、たとえ条例や施行規則・手引きに全く規定がなくても、
   【1】期限内にした決定の中の一部変更をしたものだから許される。
   【2】期限内にした決定に重大な過ちがあった場合は期限後であっても決定変更が
      許される。
      ということだが、
   【1】に関しては、「本件11日の一部開示決定が、先の決定の取り消しなのか、変更
    なのかという問題であるが、全体として見れば変更であり、開示を不開示にした部
    分に限って言えば 取り消しである。被告は、総合的に見て変更と解しているが、
    決定期限が徒過しているか否かの観点からすれば、とにかく決定そのものは期限
    内に行なっているのであるから、取り消しでも変更でも一連の手続きの中のものと
    解するのが相当であり、そこに期限徒過の違法はない」(同3ページ)とか、「本件
    では先ず期限内に開示決定を行ない、次いで期限後に変更(部分不開示)決定を
    行ない」(同4ページ)とか、珍妙で回りくどい言い方をしているが、事実は(団体役
    員の氏名等が)「開示と決定されたものが期限後になって全く逆に不開示と決定さ
    れた」のだから、「とにかく決定そのものは期限内に行なっているのであるから」と
    かいうのは全くの詭弁でしかない。
     ある案件に対して、ひとつは期限内に条例規定に沿って行ない、もうひとつは全く
    逆の決定を期限後に条例規定にもないのに行なったということが「一連の手続きの
    中のものと解するのが相当」であるはずがないのは自明のことである。

   【2】に関しては、仰々しく昭和31年3月20日の最高裁判決を出しているものの、それ
    こそ「その処分の取り消しによって生ずる不利益と取り消しをしないことによって係
    る処分に基づき既に生じた効果をそのまま維持することの不利益とを比較考量し、
    しかも当該処分を放置することが公共の福祉の要請に照らし、著しく不当であると
    認められる限度において、」どうなのかが厳しく比較考量された形跡は、被告にお
    いては全くない。
     条例にも「手引書」にも明らかに違反するこの重大な「不開示決定」を行なうにあ
    たって、 役所内部で何ら真摯な検討が行われなかったことは、
       ◎甲第33号証;6月18日公開請求(市長あて)
      ◎甲第37号証;公開請求日ごとの市の対応一覧の6ページめ、
                <6> 6月18日の公開請求(市長へ)
    にあるように、「6月11日に当方に不開示説明をした『6月11日決定』に関わる決裁、
    会議文書の全て」を求めても、会議をした痕跡を示す文書は一切なく、唯一ある決
    裁文書では、「5 不開示の理由 門真市情報公開条例第6条第1号に該当(代
    表者の氏名、住所、役員の名簿は個人情報に該当するため)とか(甲第30号証@)、
    「3 変更理由 再度慎重に検討した結果、個人情報に該当すると判明したため。」
    (甲第30号証A)、と簡単に記載されているだけであることからも十分に見て取るこ
    とができる。(原告第1準備書面6ページなど)

     被告がやったことは、
    @「議会に対して公開されている団体の役員氏名や、公金支出先団体の役員氏名
     を開示すること」と、
    A「それら団体の役員氏名を公開したらプライバシー侵害になるかもしれない」
     という2つを秤にかけて、
      「如何に議会に出された情報であろうが、閣議決定で公開が決まっている情報で
    あろうが、公金支出先についての説明責任があろうが、それら団体が行政から便
     宜供与されていようが、それら団体の役員は氏名開示という社会的責任は『これ
     を開示することにより、場合により個人のプライバシーを害するおそれがあるとし
     ても、受忍すべき範囲内にとどまる』(条例手引き12ページ)とは考えられない」と
     いうトンデモナイ判断を、真摯な検討もなく新たな知見もなく、突如密室で安易に
     行なったということであり、とうてい最高裁の判例に見合う代物ではない。

(2)この団体役員情報不開示の不当性と危険性は既に十二分に述べているところである
   が、ひと つ付け加えるならば、こういうデタラメなやり方で条例規定にもない期限後の
   逆転決定が、行 政の裁量で自由にやって良いとされるならば、「期限以内に精査し
   て適正な決定をする意欲と責任感」が行政から無くなってしまうことは間違いないし、
   役所内外からの不当な圧力に抵抗して適正な決定を行なう気概と自負も行政現場か
   らは失われてしまうことも間違いない。
   これは企業ぐるみで不正を行ない誰も内部から告発できなかった雪印や日ハムと
   同様である ばかりか、これほど情報公開の精神と規定に背き、閣議決定にすら背
   反する情報隠しを未だに強化している門真市役所総体の有様は、バレたら改めた
   雪印や日ハムに比べて、それよりもはるかに深い腐敗と不正義の病巣が蔓延して
   いると言わなければならず、このような役所に正しい行政はとうてい期待しえない。
   決定期限後に請求者への決定通知と正反対の不利益決定をしておきながら、そ
   れを開示作業の時まで請求者に隠しておいて突然通告し、請求者に怒りと侮辱と
   不当な労力支出を与えても構わないということは、行政への不信と怒りを請求者に
   植え付け、行政と市民との望ましい信頼関係を自ら壊滅させる所業であり、納税者
   への背信行為である。

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