平成15年 (ネ) 第2569号

損害賠償請求事件

1 審 原 告 戸 田  久 和

1 審 被 告   門  真  市

準 備 書 面 2

大阪高等裁判所 第13 民事部 御中

 上記当事者間の御庁・表記事件について、1審被告門真市は下記のとおり控訴理由を補充して陳述する。

平成15年11月6日

1審被告門真市訴訟代理人 弁護士  安 田   孝

   同         弁護士 上 野 富 司

第 1

 門真市情報公開条例第4条には、(利用者の責務)として、「この条例の定めるところにより公文書の開示を求めるものは、この条例の目的に則してその権利を正当に行使するとともに、公文書の開示により知り得た情報を適正に使用しなければならない。」と規定しており、第1条の(目的)として「この条例は、市民が市の保有する公文書の開示を請求する権利を保障することにより、市民の市政への参加と開かれた市政の一層の推進を図り、もって市の諸活動を市民に説明する責務が全うされるようにし、地方自治の本旨に則した市政の発展に寄与することを目的とする。」と規定されている。

 この目的規定からすれば、市は、市民の情報公開請求権に対してはこれを尊重し、できる限りその請求に応じなければならないことは明らかである。

 しかし、その反面、情報の公開を得た利用者は、知り得た情報を適正に使用しなければならないのであって、個人を誹謗中傷するような使用方法は、明らかに利用者の責務に反している。

 1審原告は、公開請求により知り得た情報を個人攻撃に用いていることは、1審被告が、1審の答弁書の第2の7〜10号で述べたとおりであり、また、乙1号証のビラ記載のとおりであり、決して、先の目的規定による「開かれた市政の一層の推進を図り」「市の説明責任が全うされるようにし」「地方自治の本旨に則した市政の発展に寄与する。」ために利用されているとは言えないこと明らかである。

 1審被告は、当審における準備書面1(平成15年10月9日)において、1審原告の権利濫用を主張したが、そのことは、上記の通り条例の規定自体からもいえる事である。

 更に、原判決後の1審原告のホームページにも、同様の個人を非難中傷する内容の掲示をしている(乙第15号証、乙第16号証)。

 1審被告の訴訟代理人であり、当審における訴訟代理人でもある当職らに相対する1審被告が当職らに批判的な言動をとることはやむを得ないことではあるし、当職らもこれらのホーム頁上の批判文に一々反論する気はないが、それにしても、当職ら作成の準備書面に対する「10/9愚劣2枚舌書面」(乙第15号証)、1審被告である東市長に対し「違法行為の税金泥棒、東市長は恥をしれ!」(乙第16号証)などの掲載文は限度を越えた侮蔑表現であると言わざるを得ず、これがインターネット上で流されている故にその影響には計り知れないものがあるのであって、昨今インターネットの利用方法について種々議論がなされていることが想起されなければならない。

 因みに、ネット中傷に実刑判決を言い渡した大阪地裁の名誉毀損事件の事例が直近にあったので、参考までにその新聞記事を乙第17号証として提出する。

 さらに、原判決を「極悪判決」(乙第14号証)と批判したことは、1審被告がよく用いるネーミングによる表現ではあるが、明らかに限度を越えた批判文の掲載であると言うほかない。

 なお、1審原告が自己作成の「10/31第1準備書面」をネット上で自画自賛しているので、これも参考までに乙第18号証として提出する。

 

第 2

 社団法人大阪府公衆衛生協力会門真支部、社団法人門真市社会福祉協議会、守口門真商工会議所の役員氏名を開示するべきであるとした原判決の誤りについて

 

 原判決は、社団法人大阪府公衆衛生協力会門真支部、社団法人門真市社会福祉協議会のについては代表者氏名のみならず、役員氏名についても条例6条1号ただし書アに定める個人情報の除外事由に該当すると認めるに足りる証拠はないから、それが個人情報の除外事由に当たると言うことはできないとして、1審被告の不開示処分を違法と判断した(原判決14頁、15頁)。

 そして、その理由としてこれらは公益法人であり、平成8年9月20日の閣議決定である「公益法人の設立許可及指導監督基準」によれば開示するのが相当である旨判示する。

 しかしながら、1審においても主張したとおり、元来閣議決定とは、内閣の権限事項を閣議で定めることを言うのであるが、上記閣議決定ないし見解は、公益法人に対する国の指導基準であり、門真市に対する指導基準ではないから、門真市が保有する情報については門真市の情報公開条例に基づいて判断されなければならない。

 つまり、独自に条例を定めている門真市が特別に閣議決定に従わなければならない訳ではない。

 この原判決の論理は、1審原告の主張に従っていることは言うまでもないが、1審原告の主張には、国の指導基準と門真市が制定している条例とを区別しない議論の混同があると言わなければならないのであって、この点を看過した原判決のこの部分の判断は誤っていると言うほかない。

 次に、「守口門真商工会議所」の役員氏名について、原判決は、自らのホームページ等によって役員氏名を公表しているから、これを不開示とした1審被告の処分は違法であると言う。

 しかしながら、これも1審において主張したとおり、守口門真商工会議所が自らの判断において、自己の情報を開示することと、1審被告が他者である守口門真商工会議所の役員氏名を開示することは別の事柄であり、1審被告は門真市情報公開条例の規定に従って独自に不開示の決定を行なったものであるから、1審原告の主張をそのまま認容した原判決のこの部分の判断も誤っている。

 また、他者が、自ら行う情報の公開ないしは開示と門真市が保有する情報を条例に従って開示することとは別の事柄であることは、上記大阪府公衆衛生協会門真支部、社団法人門真市社会福祉協議会の代表者氏名、役員氏名の開示についてもそのまま該当する。

 これら3団体についても上記第1について述べたことが、そのまま該当することも付記して主張する。

 

以上