平成15年(ワ)第7583号
損害賠償事件
裁判長裁判官 川 神 裕
裁判官 山 田 明
裁判官 小 泉 満里子
原 告 戸 田 久 和
被 告 門 真 市
代表者市長 東 潤
準 備 書 面 1
平成15年10月1日
大阪地方裁判所
第7民事部 合議3係 御中
被告訴訟代理人 弁護士 安 田 孝
同 弁護士 上 野 富 司
上記当事者間の御庁・表記事件について、被告人は下記のとおり、答弁の理由を陳述する。
記
第1 本件公益法人12団体の役員の氏名・住所不開示処分が適法であることについて
1 原告は、本件不開示処分が平成8年の「公益法人の設立許可及び指導監督基準」
に関する閣議決定及び門真市情報公開条例(以下「条例」という。)に反する違法な
ものであると主張する。 しかしながら、門真市が本件で不開示とした情報は、条例
第6条に則り不開示とするべき個人情報である。
2 先ず、原告が上記「公益法人の設立許可及び指導監督基準」に関する閣議決定が
本件不開示処分の違法性を根拠付けているとの主張について見るに、当該閣議決
定は、公益法人に対する国の指導基準であり、門真市に対する指導基準ではないか
ら、門真市が保有する情報については門真市の情報公開条例に基づいて判断され
なければならない。その意味で原告の主張は失当である。
因みに、閣議決定とは、内閣の権限事項について閣議で定めることを言うのである
から、独自に条例を定めている門真市が特別に閣議決定に従わなければならない訳
ではなく、門真市は市の方針として条例に従った処理をしているのである。
3 そして、門真市情報公開条例第6条の第1号には
「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、
当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別する
ことができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができ
ることとなるものを含む。)又は、特定の個人を識別することはできないが、公にする
ことにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情
報を除く。
ア 法令若しくは条例(以下「法令等と」という。)の規定により又は慣行として公に
され、又は公にすることが予定されている情報
イ 公務員の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員の職に関する情報
ウ 人の生命、身体、健康、財産又は生活を保護するため、開示することがより必
要であると認められる情報
と規定されており、個人を識別できる氏名、生年月日、住所(住所が条例の規定上
「その他の記述等により特定の個人を識別できるもの」に該当することは明かである。
)等は、情報公開請求があっても、開示しないことができるとなっているのである。
従って、これら個人情報は例外として、情報公開の対象としないことになっているので
あるから、原則公開であるから、公開するべきであるとする原告の主張は当たらない。
4 原告は、本件情報公開請求で対象としている12団体の役員の氏名、住所について 、
その請求の目的を「錯乱・暗黒行政の実態調査」であるとしている。
これは、被告門真市の行政が錯乱しており、その行政の実態は、暗黒であるからこ
れを調査し、暴かなければならない、と言うことであると解釈をせざるを得ない。
そして、必然的に対象となっている12団体ないしその役員も原告が言うところの門
真市の「錯乱・暗黒行政」に協力している、或いはその疑いがあるとも解さざるを得な
いことになる。
門真市情報公開条例の目的が、広く市民に行政の実態を知らしめ批判すべきは、
批判を受け、また、市民に取って好ましきは、その評価を受けるべき性格を持ってい
るにも拘わらず、一方的に市が錯乱・暗黒行政を行なっているものと決め付けている
のであり、このような目的を持って情報公開請求をするのは、請求権の濫用であり、
先ず、市はこれに応ずる必要はないと言わなければならない。
原告の請求が、何か、「ためにする」という強い傾向が見られるのは、一市民として
の請求の形をとっているが、現実に原告が門真市議会議員と言う公職にある立場か
らすれば、その影響力は大きく無視できないものがある。
このような請求目的を持 った本件情報公開請求は、議員としての政治活動に名を
借りて、あたかも門真市の行政が全て非民主的であると非難・中傷することになるの
であって、これは如何な公職にある者といえども許されるべきことではない。
これは、門真市の行政が如何に悪いものであるかと言う独自の偏見をもって、マイ
ナスイメージを植え付けようとする原告特有のネーミング戦術である。
5 原告が、この手法を持って、門真市議会議員という公職にありながら、これまでイン
ターネット上やビラにより個人を非難中傷してきたことは、幾多の資料によって明らか
であるが、この点は整理の上追って証拠として提出する。
6 原告が本件訴状で引用している大阪地方裁判所第18民事部平成15年7月14日
付けの判決の事案に即して言えば、この件では、原告は、情報公開請求日である
平成14年5月23日の10日以上前の5月10日にその請求に係る38団体の団体
名、代表者氏名を議員の立場で入手しておきながら(乙第1号証、ただし作成日付
けは5月8日)、請求日の前日である22日に「君、門真を売りたもうことなかれ」「各
種団体による合併要望書で会員無視の不正手続きが次々に発覚」「自治連合会で、
人権啓発推進協議会で、老人クラブ連合会で」「会長らだけの勝手な判断で、理事
会・会長会にもかけないで、会員に全く知らせないで」などと題し、殊更センセイショ
ナルに書きたて、個人を誹謗中傷しているのである。
自らこの件で提出している乙第2号証(平成5月28日作成)にも同内容の記載が
ある。
如何に市会議員であるとは言え、知り得た情報を基にこのような個人攻撃とも取
れる表現の文書を多数人の目に晒すことが、際限なく許されるのであろうか、と疑
問を抱く訳で、否、市会議員であるが故にもっと節度のある議員活動が要請される
のではあるまいか、と考えるしだいである。
情報公開の重要性は、被告もこれを認めるが、これによって得た情報を個人攻撃
に使うなどと言うことは、基本的に許されることではなく、そのような目的を持った情
報公開請求は、権利の濫用であると言わなければならない。
本件請求に係る情報もこれを原告に開示すれば、同様の個人攻撃に使われる蓋
然性が極めて高いものであることは、上記本件情報公開請求の目的について述べ
たことから明かであると思料する。
第2 原告の損害については、不知である。
以上
※赤字部分は戸田、下線部分は原文通り
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