国賠訴訟;地裁 第2準備書面(3

3;違法な判断を自白した被告の「10/2答弁書」主張

 上に整理した「情報公開判断の大原則」から見た時、被告の10/2答弁書における主張は、「確信犯的違法行為の臆面もない自白」に他ならないことは誰の目にも明白である。以下にそれを列挙してゆく。

(1)原告の開示請求動機を勝手に推測して不開示判断に加味

 【被告主張 7】
    そもそも原告は、本件公文書開示請求の前に、議員として門真市市議会において
     甲19第号証の「行政合併に関する要望書」受付名簿(門真市)を入手していて、
     右書面により原告は本件開示請求をしている各団体名、代表者役職名その氏名等
     は十分知悉している事実なのである。
     にも拘わらず、原告が重ねて本件請求をする理由は、市議会議員として入手した
     情報は市 議会議員の立場で私的に乱用することは出来ないため、改めて一市民の
     立場で利用すべく、 本件請求に及んだものと推測される。

     ●問題点批判1; 原告が本件開示請求をしている各団体の役員氏名等を「十分
        知悉している」かどうかは大きなお世話なのであって、実施機関がそのような
        推測を働かせること自体が違法な越権行為である。
         なお、合併推進要望団体のリストには団体名と代表者氏名があるだけで、
        それぞれの団体の役員氏名までは記載されておらず、原告がそれを含めて
        知らないことが多々あったか ら、これを機会にそれら各団体の実態と市との
        関わりを調査しようとしたのが本件端緒の 実態であって、それを勝手に「十分
        知悉しているのに他に意図があって開示請求した」と 推測して、不開示の理由
        を補強するなど2重3重に許されないことである。

     ●問題点批判2;原告は合併推進要望団体のリストを本年5月8日に「議員として
        受け取って」すぐの5月10日からホームページでその団体名と代表者氏名を
        公開し、以降連続的にホ ームページやビラで報道してきたのであって、「市議会
        議員として入手した情報を市議会 議員の立場で私的に乱用することは出来ない
        ため開示請求に及んだ」という被告の動機推 測のウソと支離滅裂さは明白で
        ある。

     ●問題点批判3;議員は市民の代表・代理人として資料を受け取っているのであっ
        て、 あえて「秘密指定資料」でない限り、その資料は市民に公開されているのと
        同然である。
         市や市議会に公に提出された合併推進要望団体のリストを公開して問題点を
        指摘した原告の行動が、「議員として入手した情報の私的乱用」に当たるかの
        ような被告の言い方は、全く笑止な話であるが、はしなくも被告が議会公開の
        大原則を理解せず、「議員には見せても一般市民には見せないのが普通で
        ある」 という、利権と腐敗の温床たる「議員特権」の温存を当然視していること
        がここに露呈されている。

     ●問題点批判4;「改めて一市民の立場で利用すべく、開示請求に及んだもの」と
        いう 推測は、 請求動機の勝手な推測であって、こういうことを情報公開請求
        受けた側 はしてはならない のが大原則である。 「推測の動機」で判断する
        のではなく、 あくまで請求案件そのものが条例・手引に照らし て開示すべき
        かどうか、判断しなければならない。

(2)原告に対する(悪意を持った)個人評価を堂々と表明する被告の異常さ

  【被告主張 8】
   原告は、本件訴状のその他の主張や甲第20号、同21号、同21号証等にその一端を
   現 しているように、従前からインターネット上に個人名を明記して特定個人の非難・中傷
   を繰 り返しており、そうした原告の言動に対して市・市職員並びに市議会・市議会議員の
   間で警 戒感が強く同人には個人名を識別し得る情報を与えることは乱用される危険が
   あるとして、 関係者の間で特に個人情報保護に気を付けるよう警戒心が持たれている
   ようである。

    ●問題点批判5;被告門真市が原告という特定の開示請求者に対して、このように
       悪意に満ちた個人評価を全庁的に行なって、開示請求に対する判断要素にして
       いたとはまさに驚くべ き違法行為の自白である!

        公人たる議員や幹部職員、市議会への要望や意見書提出という公の行動を
       行なった団体  代表者の公の行為を、事実に基づいて批判したり報道したりする
       ことに対して、何の根拠 も上げずに「個人名を明記して特定個人の非難・中傷を
       繰り返す」、として裁判所に出す文 書で現職議員たる原告をそれこそ誹謗中傷
       する被告・門真市長の言動には、空恐ろしいも のを感じざるを得ない。
        被告に対しては、「◆自治連合会にも重大な疑惑!市内115自治会にいつ
       聞いた?◆」 という甲第20号証、「ヒゲ-戸田通信5/28臨時号」の甲第21号証
       のどこが何がどう「誹 謗中傷」だと言うのか、答えて見よ!と問いつめたい気持ち
       である。

   ●問題点批判6:「原告の言動に対して市・市職員並びに市議会・市議会議員の間で
      警戒感が強 く・・・」以下の文章は、その語尾こそ「・・ようである。」と締めくくって
       あるものの、 それはまさに形だけのことであって、「原告に個人を識別し得る情報
       を与えることは乱用 される危険がある」から、「関係者の間で特に個人情報保護
       に気を付けるよう警戒心が持た れていた」などと、およそ行政として決して口に
       してはならない悪意あるレッテル貼りのオンパレードである。
        これは、被告が、現職議員として役所や議会の実態を公開し続ける原告を敵視
       していたことをあからさまに告白したものに他ならなず、情報公開判断の大原則に
      違反して、「請求者が誰であるか?」=「請求者は戸田議員である」=「個人名を
      明記して特定個人の非難・中傷を繰り返してきた者である」=「市職員並びに
       市議会議員の間で警戒感が強い戸田議員である」=「個人名を識別し得る情報を
       与えると乱用される危険がある戸田議員である」と、寄ってたかって原告への勝手
       な個人評価を持って不開示決定の判断材料にした違法性が、まさに「犯人の口
       から語られた」ことに等しい。

(3)「政治的な状況判断」によって開示判断を左右したことを自己バクロ

 【被告主張 9】
   従って、原告が既に知悉している各種団体の代表者氏名を、いまさら不開示にしても
   意味が ないとの意見もあったが、原告の各種団体代表者個人に対する署名権限の
   有無に関する非難・ 中傷が始まっている現状において、市が個人氏名を一般開示する
   ことは妥当ではないとの理由で、先の決定が取消され、改めて一部不開示の決定と
   なったものである。

  ●問題点批判7;「いまさら不開示にしても意味がない」かあるかの論議を庁内で
     行なっていること自体が、被告の判断過程の不純さを示している。

      「原告の各種団体代表者個人に対する署名権限の有無に関する非難・中傷
     が始まってい る現状」とは、原告が「合併推進団体要望の決め方のおかしさ」
     を調査報道していること を誹謗した言い方であるが、まさにこの状況に鑑みて
     「今個人氏名を一般開示することは 妥当ではない」から「先の決定を取消し、
     改めて一部不開示の決定とした」、と被告がアケスケに述べているのだから、
     本来開示不開示の判断に差し挟んではならない「政治的な状況判断」によって、
     不開示の判断をしたことを被告が自己バクロしたのである。

      「合併推進要望 団体のことを調査・批判しているから不開示にした」とは、
     涙が出るほ ど正直違法行為の自白と言わなければならないだろう。

(4)特定の個人・状況を理由とした不開示が違法な無差別無制限な不開示に直結する!

 被告は、「請求者が(要注意人物である)原告=戸田議員だから」、「原告=戸田議員が団体役員を批判しているから」役員氏名を不開示にしたというもので、これ自体とんでもない違法行為だが、それだけにとどまらないことは、「では原告以外の者が同じことを開示請求したらどうなるのか?」を考えてみたらすぐに分かることである。
 被告の主張からすれば、「原告には不開示だが他の人には開示する」としなければならなくなる。

 しかしそういう差別開示をした場合は、あまりに個人差別の違法性が明白すぎて裁判をされたら即決で敗訴してしまうことにもなってしまうし、同時にそれでも「他の請求者が原告の仲間でないという保証がない」とか「他の請求者への開示が原告に情報を与える結果にならない保証がない」とかの危惧が生じることになり、結局、差別開示にも踏み切れないという袋小路に入ってしまうことになる。
 この矛盾をとりあえず糊塗するのには、結局、「一律に不開示」とするしか手がないのである。
 今、原告と無関係な市民が同じ開示請求をしたら被告はどうするつもりなのか?
 開示するならば明らかに個人差別開示で違法だし、不開示ならば被告の10/2答弁書主張で言う原告への不開示理由がデタラメだったことが証明されることになる。

 もちろん「原告と無関係の請求者」の身元調査したり原告への直接間接の情報提供を禁じたり することも違法でなし得ないのである。さあ被告はどうするのか?
 こういう想定からすぐに判明するように、被告の言う「特定の個人・特定の状況への判断による不開示」を一度やってしまえば、それはたちまち「誰に対しても・いつでも不開示にしなければ収まりがつかない」という「無差別無制限な違法な不開示」に直結するということである。

だからこそ「情報開示判断の大原則」として原告が上げた、
 A:開示・不開示の判断は純粋中立に情報公開条例条文(とその手引書)に
   依らなければならない、
 D;開示請求者の動機推測や個人評価を加味して判断してはならない、
 E;その時々の政治的状況判断を加味して判断してはならない、
 の各項目は、こういう事態を招かないための必須要件であることを、この際被告とその弁護人たる安田孝弁護士、上野富司弁護士はよくよく頭に刻んでおくべきだろう。

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