国賠訴訟;地裁 第1準備書面(4)

4:市が情報公開条例および刑法に違反していることの説明

T;市の中本企画部長らの行為が、刑法第156条(虚偽公文書作成等)、「公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したとき」に該当する事、および刑法の233条(信用毀損及び業務妨害)で言う、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した」ことに該当するものであることについては、訴状の<7;市は虚偽公文書作成を行なう違法を犯している。>と<8;市は偽計  業務妨害を行なう違法を犯している。>の記述、および上に疎明資料説明とともに述べた事実経  過からして明かである。

U;本件市の行為が、情報公開条例の手続きに完全に違反していることについては、訴状の「請求の原因 5;6.11不開示決定の違法性〜情報公開条例の手続きに完全に違反」の(1)から(3)について、その記述の中に疎明資料の紹介と解説を挟み込んで、以下により詳細に述べていく。

(1)情報公開条例では、第11条(開示請求に対する決定等)で「実施機関は、開示請求があったときは、当該開示請求書を受理した日から15日以内に開示をするかどうかの決定をしなければならない。」、と定められており、それ以上に時間がかかることが認められるのは、その2項、「実施機関は、事務処理上の困難その他正当な理由により前項に規定する期間内に同項に規定する決定をすることができない場合においては、30日を限度としてその期間を延長することができる。」、だけであって、その「正当な理由」とは、「第三者情報を含むなどして期限内の「決定が困難」とか「請求情報が膨大」、「天災等不測の災害」、「年末年始休暇時」などに限定されている(手引書24、25ページ)。
 本件がそのどれにも該当しないことは明白である。

     ◎甲第1号証;門真市情報公開条例

    ◎甲第4証;「門真市情報公開条例 門真市個人情報保護条例 手引書」の本件
            関連部分
     @ 表紙と1〜38ページまでの本件関連部分

  ★手引書24、25ページの【解釈】抜粋を以下に紹介する。

   1 第1項関係
    (1)・・・・・・この15日の期間は、情報の検索等に要する期間を考慮して定められた
       ものであり、実施機関はこの期間にかかわらず、できるだけ速やかに決定を行う
       よう努めなければならない。・・・・

   2 第2項関係
    (1)・・・・・(延長に関し)・・この場合においても実施機関に対し請求者への延長通知
       を行うことを義務づけたものである。
    (2)決定できない「正当な理由」とは、おおむね次のような場合をいう。・・・・

   3 第3項関係
      本項は、開示の請求に対する可否の決定をしたときは、請求者に対してその内容を
      速やかに通知することを義務づけたものである。

  (2)そもそも一度行なった開示決定を、請求者に不利益になる方向に、実施機関が勝手に変更してよいということは、条例でも、手引書でも、施行規則や事務取扱要領のどこにも書かれていないことである。従って当然、そうした場合の手続きも、それらのどこにも書かれていないことである。

    ◎甲第2号証;門真市情報公開条例施行規則と各様式書類

    ◎甲第3号証;「門真市情報公開条例」の職員研修用のレジメ

    ◎甲第4証;「門真市情報公開条例 門真市個人情報保護条例 手引書」の本件
            関連部分
     @ 表紙と1〜38ページまでの本件関連部分
     B 「門真市情報公開事務取扱要領」の本件関連部分(71〜81ページ)

(3)従って、このような恣意的な不利益決定は、条例第1条(目的)、第3条(実施機関の責務)、第11条(開示請求に対する決定等)、第14条(開示の実施)、に明白に違反しており無効である。

V;本件市の行為が、情報公開条例の「不開示情報の適用除外事項基準」に完全に違反していることについては、訴状の「請求の原因 6;6.11不開示決定の違法性〜不開示情報の適用除外事項基準に完全に違反」について、その記述の中に疎明資料の紹介と解説を挟み込んで、以下により詳細に述べていく。

(1)、については省略。

(2)条例第6条(不開示情報)においては、不開示情報として「(1) 個人に関する情報」を挙げたあとで、「ただし、次に掲げる情報を除く」として、
   ア  法令若しくは条例(以下「法令等」という。)の規定により又は慣行として 公にされ、
     又は公にすることが予定されている情報
   イ 公務員の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員の職に関する情報
     を挙げ、手引書11・12ページにおいてその【解釈】 を行ない、
 「4 ただし書ア関係  法令の規定により公示されている情報や慣行として公にされている情報は、一般に公表されている情報であり、これを開示することにより、場合により個人のプライバシーを害するおそれがあるとしても、受認すべき範囲内にとどまると考えられる。・・」、
 「5 ただし書イ関係 公務員の職務の遂行に係る情報には、・・・公務員の範囲を限定せず、仮に特定の公務員を識別させることとなっても、開示することとするものである。」と述べている。

     ◎甲第1号証;門真市情報公開条例

(3)そしてその具体例として「適用除外事項基準(不開示情報の判断指標)」を手引書39〜49ページに述べている。

    ◎甲第4証;「門真市情報公開条例 門真市個人情報保護条例 手引書」の本件
            関連部分
     A 「適用除外基準(「不開示情報の判断基準)」の本件関連部分
                           (40・42・43ページ)

  ★その中の40ページ、「第6条第1号 個人情報(ただし書き)《開示できるもの》」の表の中には、
「(1)  公表することを前提として本人から任意に提供された情報の、(ウ)議会に対する請願」、と言う項目がある。  本件で問題となっているのは「市・議会に対する要望」であるが、これは「門真市がよそと合併して欲しい」という自治体に対して自らが消滅変化する「究極の重大決断」を求めるものであり、全住民に甚大な変化を与えるものであり、それを各種団体の意志として、団体名と代表者名を市・議会に表明したものであるから、その代表者氏名は最低限この(ウ)に沿って開示されるのが当然である。

(4)そのうえ、門真市消防団の団員は、全て非常勤の地方公務員であり、消防団条例の第13条、旅費規定によってその団長・副団長は市職員の部長級として、分団長・副分団長は、課長代理級として定められているから、今回議員であるから開示された団長のみならず、少なくとも副団長、分団長・副分団長は開示対象である。

     ◎甲第35号証;門真市消防団条例

 非常勤とはいえ、幹部級の公務員の氏名が市民に対して隠されるとしたら、それは「ヤミ雇用」の誹りを免れ得ないし、また、当の消防団幹部に対して無用の誤解を与える非礼な行為であると言わなければならない。

(5)また、「手引書」の40ページ、「第6条第1号 個人情報(ただし書き)《開示できるもの》」の表の中には、「1 法令(=法令若しくは条例)の規定により又は慣行として公にされ、又は公にされることが予定されている情報」に対する「情報の具体的内容の例示」として、「その他何人でも閲覧することができるとされている情報」が挙げられているから、平成8年9月20日閣議決定された「公益法人の設立許可及び指導監督基準」の「(基準)7. 情報公開(1) 公益法人は、次の業務及び財務等に関する資料を主たる事務所に備えて置き、原則として、一般の閲覧に供すること。
   1) 定款又は寄附行為
   2) 役員名簿
   3) (社団法人の場合)社員名簿・・・・」
 として、役員名簿公開が義務づけられている公益法人の場合は、無条件に開示対象となる。

 ★なおかつ、「(基準)7. 情報公開」の(2)には、「所管官庁においては、(1)に規定する資料を備えて置き、これらについて閲覧の要求があった場合には、原則として、これを閲覧させるものとする。」と規定されているのだから、公益法人を所管する総務省や都道府県が一般市民に閲覧=情報公開しているものを、門真市のみが不開示にすることなど、社会常識から言っても、法理論から言っても、門真市情報公開条例から言っても、許されるはずがないのである。

    ◎甲第41号証;「公益法人の設立許可及び指導監督基準」(平成8年閣議決定)
              の4ページめ。

   本件の場合で言えば、(社)大阪府公衆衛生協力会門真支部、(社)門真市社会福祉協議会がこれに当たる。

 ★現に今年6月に原告は、(社)門真市社会福祉協議会を訪問した折りに、理事及び評議員名簿を求めて入手できているのであり、

    ◎甲第25号証;「(社)門真市社会福祉協議会」
      @理事及び評議員名簿 (同協議会で入手できるもの)

  同じものを保有している門真市がこれを開示しないのは、許されるものではない。
 ちなみに、月刊誌『公益法人』98年4月号から計5回にわたって掲載された「改正公益法人指導監督基準Q&A」において総理府は、「A−23 「一般」ということは、どのような人からもという趣旨であり、特定の人に対して、拒否できるというものではありません。」とし、役員名簿への必要的記載事項について「民法第46条第1項で氏名と住所が登記事項とされていますが、これが役員名簿の必要的記載事項となります。」とし、社員に対してさえも「必要的記載事項は、氏名及び住所です」、「社会的責任を負っている・・社員の氏名及び住所に係る事項を公開することは、プライバシーの侵害には当たらない」と述べているのである。

    ◎甲第42号証;「改正公益法人指導監督基準Q&A」(総理府回答)の本件該当
              部分の 2ページめ下段。

(6)また、「手引書」42ページ、43ページに記載されている「第6条第2号 法人等事業情報《開示できるもの》」の中の43ページに、「2 公表することを目的として作成し、又は取得した情報」項目の「(1)任意提供 法人等から提供され、不開示の条件がついていない情報」、「(2)PR用で作成 社史、PR用パンフレット等に記載された情報」、「(3)既に公表済み 市、他の公共団体その他の団体告示、公示、官報への掲載等がなされた情報」、が挙げられている。

 「法人等」の「等」とは、手引書13ページの「その他の団体」を指し、法人格を持たない各種市民団体などであり、本件要望団体のうち、法人をのぞく全ての団体がこれに該当する。
 そしてそれら団体が市に代表者名やリストを提供する時に、従来の慣行からして「不開示の条件を付けずに」提供していることは明かであるから(もしそうでないというのならば、それは市に立証責任がある)、これも開示情報に該当する。
 守口門真商工会議所のように、自らのHPで役員氏名を公表しているものが開示情報に該当するのも論を待たない。

 ★守口門真商工会議所の役員氏名は、同会議所が自ら進んでホームページやニュースなどで公開し、図書館で閲覧できる資料においても公開しているのであるから、門真市の不開示対応が、情報公開条例の「不開示情報の適用除外事項基準」に完全に違反していることは、ここでも明白である。

    ◎甲第23号証;広く公開されている守口門真商工会議所の役員氏名情報
     @守口門真商工会議所ニュースでの役員紹介(第415号表紙)
     A守口門真商工会議所ホームページでの役員氏名紹介
     B門真市図書館で閲覧できる守口門真商工会議所の決算書での役員氏名

(7)さらに、市が補助金、助成金を出している団体に関してその代表者氏名住所や役員氏名、最低限でも市に提出する申請書や決算報告に氏名を出す会計や監査が開示されなければ、議員のみならず市民一般に対する説明責任を果たさないことになるから、この点でもこれらは開示されるべき情報である。 (8)以上検討したように、本件諸団体は2重3重4重に、代表者氏名住所、役員氏名が開示されるべきものであり、絶対に「不開示とされるべき個人情報」にはあたらない。唯一の例外は病者差別などのおそれへの配慮による不開示であるが、その場合でも代表者氏名は絶対開示されなければならない。

 

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