平成19−(綱)−438 大 阪 弁 護 士 会 平成 19年(綱)第 438号事件 懲戒請求者 戸田 ひさよし 大阪弁護士会は、上記の懲戒請求について次のとおり決定する。 (主文) 対象会員につき懲戒委員会に事案の審査を求めない。 (理由) 本件懲戒請求について綱紀委員会の調査を求めたところ、同委員会が別紙のとおり議決 したので、主文のとおり決定する。 以 上 |
平成 19年(綱)第 438号 議 決 書
主 文 対象会員につき、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。 理 由 第1 前提となる事実 1 当事者 6月8日、請求者は門真市内の会社の門前におけるビラ配りの現場に居り、会社側がセクハラ事件に関し改善してくれれば解決につながるだろうと考え、セクハラ被害者の個人救済と同時に会社側に対する事業主としての配慮義務を要望する内容
のアピールをした。 (2)対象会員(以下「会員」という)は、会社及び代表取締役恩田恵(以下「恩田社長」という)から依頼を受け、会社と、上司からセクハラ被害を受けたという女性社員並びにこれを支援する組合(名古屋ふれあいユニオン)との間の団体交渉などの相談を含めて、セクハラ事件について受任していたものである。 2 争いのない事実 (2)7月31日付内容証明郵便 第2 懲戒を求める事由 会員は、請求者に対する平成19年7月31日付通告書において、請求者の6月8日の行為について会社と恩田社長個人の名誉と信用を著しく毀損し、その内容も事実に反するものと決めつけたうえで、慰謝料として法外な金額である1000万円を要求し、または誠意ある回答がなければ民事・刑事両面にわたる法的措置をとると通告してきた。 上記通告は、会社に対する批判封じをする強要行為であり、また請求者を畏怖させる目的の脅迫であり、弁護士の職務上の非行行為に該当する。 第3 対象会員の弁明 1 懲戒請求事由 @ 「日恵製作所は、総務課長による女性社員へのセクハラに対し、会社の責任を認め謝罪せよ」(冒頭見出し) セクハラの存否について争いがあるにも拘らず、セクハラの事実が存在し、会社が不当にもその責任を認めようとしないと一般人が誤認する内容を含んでいることから、会社に対する信用、名声等の社会的評価を低下させるものである。 A「2006年3月3日、社員旅行参加のため・・・加害者A課長は、Sさんの信頼心を悪用し、『大阪見物』と偽り、天王寺公園裏のラブホテルに連れ込み、一緒に風呂に入ることを強制し、身体にさわるなどの行為に及びました。」(第1段落全体) 総務課長の言い分を無視してセクハラ加害者と決め付け、そのような破廉恥な行為を行う総務課長が社員として存在すると指摘されることで、会社の社会的信用を低下させるものである。 B「そして社員旅行後の3月15日・・・被害者を更に精神的に追いつめた上で退職勧奨を行いました。」(第2段落全体) そのような破廉恥な行為を行う総務課長が社員として存在すると摘示されることで、間接的に会社の社会的評価を低下されるものである。 C「『会社を訴えるのなら、加害者を擁護することになる』日恵製作所恩田社長は助けを求めた被害者に対して、そうメールした!」(見出し) かかる記載は、社長の品性、徳行、名声、信用を低下させ、ひいては会社の信用も低下させるものである。 D「Sさんは恩田恵社長宛に今回のセクハラ事件をうちあけ・・・何らの調査を行っていないにもかかわらず個人的な問題と決めつけるものでした。」(第3段落) 社長がセクハラを訴える女性社員の言い分を聴かず、何の調査もせずにセクハラ事件であることを否定してプライベートの問題と決めつけたと記載するものであり、社長の品性、徳行、名声、信用を低下させ、ひいては会社の信用も低下させるものであ る。 E「交渉が始まると日恵製作所の態度は一変しました。・・・と次々に退職理由を変えています。」「では、どういうものが職場のセクハラになるのか?」という質問に対しては、「わからない」と説明が出来ず、「どうしてこれが職場のセクハラでないと言い切れるのか?」という質問に対しては「会社側が知らない間に起こったことだから。」との回答でした。(第4段落) 本件解決について会社が極めて不誠実な対応をとっていたとの認識を一般人に与えるものであり、会社の信用を低下させるものである。 F「会社の対応は、セカンド・ハラスメントそのもの」(見出し) 会社の対応をして、二次的被害であると論評するものであり、会社の信用を低下させるものである。 G「被害者Sさんは交渉に出て事態の説明に・・・恩田社長は書面でSさんを批判するばかりで出席を拒否しています。」「日恵製作所の対応はユニオンが介入するまで、社内調査を全くせず、・・・被害者に対し、特別な関係があったのではないかという侮辱発言を行うなど、会社自体がセカンド・ハラスメント行為を繰り返し行い、セクハラや退職勧奨の存否に関する主張を止めて和解金の提示をせよ、といった回答を行う等、不誠実極まりない対応で、まともに解決する姿勢が見られません。」(第5段落全体) 上記の如き具体的事実を摘示したうえで、会社の対応は不誠実極まりなく、まともに解決する姿勢が見られないとの論評は、社長と会社の品位、名声、信用を低下させるものである。 H「日恵製作所が法律と企業倫理を守り・・・ように願っている」 会社が法律と企業倫理を守っていないかのような誤解を与えるものであり、会社の信用を低下させるものである。 (2)請求者の関与 (3)慰謝料額 慰謝料額として、一人当たり500万円としてはどうかとの文献を見たこともあり、会社及び恩田社長二人で1000万円を請求したものにすぎない。 誠意ある書面による回答、例えば謝罪のビラを配布するといったような回答書があれば、法的措置をとらないとの余地を残しているものである。 2 まとめ 上記各理由から、会員の行為を職務上の非行行為とする請求者の主張は妥当ではない。 第4 証拠 1 書証
(2)対象会員提出分
2 審尋等 (1)懲戒請求者(平成19年12月27日) 第5 調査の結果 1 懲戒請求事由 (2)争点 イ これに対して、会員は、平成19年6月8日,請求者が名古屋ユニオンの労働組合員とともに、会社及び恩田社長の名誉を毀損する内容のビラを配布し、且つ同じ内容のアピールをしたことから、共同不法行為を構成し、損害賠償請求額としては会社、並びに恩田社長に各500万円を請求したにすぎず、また誠意ある回答があれば解決する余地を残すものであり、何ら違法なものではないと弁解する。 2 内容証明郵便の違法性 (2)会員の判断 この点については、セクハラとする客観的証拠が存在せず、且つセクハラの加害者と指弾された総務課長もセクハラとの点を否認していることから、弁護士がセクハラではないと判断したことについて、相応の理由があるものと思われる。 (※文中文字を赤色にしているのは戸田事務所が行なっています。) イ 会社と労働組合間において、団交も何回かもたれ、その中でセクハラ被害者という女性社員の主張も提出され、他方セクハラ加害者という総務課長の主張も出されたが、結局事実関係の認識において平行線を辿っていた。 会員は、かかる過去の団交の経過、並びにセクハラ加害者・被害者という双方の言い分が全く食い違っていることもあらかじめ認識していた。 ウ そのうえで、会員は、6月8日組合員らが配布したビラについて、上記@〜Hのとおり会社及び恩田社長の名誉を侵害するものであると判断したものである。 会員は、総務課長は女性社員と同意の上での行動であり、セクハラではないとするものであり、また会社は団交の場でセクハラ被害者という女性の言い分も充分聞いていたとの認識であった。 そうであれば、会員が上記@〜Hにおいて弁解するとおり、ビラの内容は、セクハラの事実が存在し、会社が不当にもその責任を認めようとしないと一般人が誤認する内容を含んでいること、社長がセクハラを訴える女性社員の言い分を聴かず、何の調査もせずにセクハラ事件であることを否定してプライベートの問題と決めつけたと記載していること及び本件解決について会社が極めて不誠実な対応をとっていたとの認識を一般人に与えるものであること等から、会社及び恩田社長の名誉を毀損するものであると判断したことについて、相応の理由があるものと思料される。 3 慰謝料等 慰謝料額が、明らかに非常識な額である場合、当該請求をした弁護士は、相応の根拠をもっているのでなければ問題となると思われるが、一人500万円という金額が明らかに非常識ということはできないものと考えられる。 (2)会員は、上記内容証明郵便の中で民事・刑事の法的措置をとることを警告しているが、当日のビラの内容並びにアピールについて、会員が会社及び恩田社長の名誉を毀損するものと判断したことについて相応の理由があることから、慰謝料額を請求するに際し、「支払い又はこれに代わる誠意ある書面による回答がない場合には、民事・刑事両面にわたる法的措置をとることを検討」していると内容証明郵便に記載することが、弁護士としての交渉活動の範囲内にあるこというまでもなく、何ら問題とするべきものではない。 (3)さらに、請求者は、当日、労働組合員と行動をともにしており、また、ビラ配布の現場にもおり、アピールもしており、さらに代表者として他の労働組合員とともに、会社内に入っているものである。
4 上記から、会員作成の平成19年7月31日付「通告書」は、請求者の会社に対する批判封じをする強要行為ではなく、また請求者に対する脅迫行為にも該当しないこと明らかである。 第6 結論 以上から、懲戒請求事由について、対象会員には、弁護士法第56条第1項に定める品 位を失うべき非行があったとは認められない。 平成20年5月13日 大阪弁護士会 綱紀委員会 第二部会 部会長 岩崎 修治 |
平成19−(綱)−438 (懲戒請求者) 大阪弁護士会 会長 上野勝
調 査 結 果 に つ い て (通知) 大阪弁護士会 平成19年(綱)第438号事件 懲戒請求者 戸田 ひさよし 対象会員 新谷 俊彦(登録番号 028575) 上記懲戒請求について本会綱紀委員会において調査の結果、平成20年5月13日下記の通り議決しましたので通知します。 なお懲戒請求者には、この議決について弁護士法第64条の規定により、この通知を受けた日の翌日から起算して60日以内に日本弁護士連合会に意義を申出ることができます。 ※意義の申出は書面によってしなければなりません。記載事項及び必要部数の定めがありますので、意義を申出ようとするときは、あらかじめ、日本弁護士連合会にお問合わせください。 日本弁護士連合会 〒100-0013 東京都千代田区霞ヶ関1-1-3 TEL03-3580-9841 記 主文 対象会員につき懲戒委員会に事案の審査を求めない。 理由 別紙議決書のとおり。 以上 |
各位 名古屋ふれあいユニオン 名古屋市中区正木4-8-8 メゾン金山711 TEL 052-679-3079 FAX 052-679-3080
日惠製作所・争議解決の報告と御礼 日頃からのみなさまのご活躍に心から敬意と連帯の意を表します。 全国の仲間のみなさまには、当名古屋ふれあいユニオンの日惠製作所争議に対し、 会社への抗議FAX、本社への抗議行動への参加等、力強いご支援・ご協力をいた だき、厚く御礼申し上げます。 2006年4月より争われてきた、会社の上司による女性労働者に対するセクハ ラ事件は、本年2月21日、合意書と取り交わすことにより、和解が成立いたしま した。 和解内容については、事件の性格上非公開とすることで合意したので、ご報告で きず申し訳ありませんが、当初セクハラの責任を一切認めようとしなかった会社と の間で一定の合意をみたことにより、当該労働者の受け入れることのできる内容と なりました。 なお、和解に伴い、当労組より発信しているプログから、本件に関する記事を削 除することとなりました。 この間、昨年6月の本社への抗議行動に対しては、会社が組合と労働者に対し名 誉毀損の損害賠償を請求するなど常軌を逸するような対応もありましたが、全国の みなさんの抗議の声や、会社側弁護士との交渉を行っていただいた村田浩治弁護士 のご尽力もあり、今回の和解にたどり着くことができました。 当労組は微力ながら、今後とも労働者の人権、生活を守る闘いを進めていきたい と思います。全国のみなさまのご支援・ご協力に、心からの御礼を申し上げます。 ありがとうございました。 ※別紙に当該労働者の手記を掲載いたしましたので、お読みいただければ幸いです。 |
異 議 申 出 書
日 本 弁 護 士 連 合 会 御中 異議申出人 住所:〒571-0048 大阪府門真市 新橋町12-18-三松マンション207
電話:06-6907-7727 FAX:06-6907-7730 懲戒請求対象弁護士・所属弁護士会 氏名:新谷俊彦(しんたに としひこ) 所属弁護士会:大阪弁護士会 (登録番号028575) 懲戒請求した年月日 2007年10月15日 大阪弁護士会から「決定書」・「調査結果について(通知)」を受け取った年月日 2008年5月29日 大阪弁護士会からの「異議申出ができる旨の記載」:あり。 異議申出の年月日 2008年7月28日 異 議 申 出 の 趣 旨 大阪弁護士会の「決定」の取り消しを求める。 異 議 申 出 の 理 由 大阪弁護士会は、新谷弁護士に対する懲戒請求について、 との「決定」を下したが、この「決定」の「理由」となった「綱紀委員会の議決」(大阪弁護士会綱紀 委員会第二部会《部会長:岩崎修治》による5月13日の「議決」)(以下、単に「議決書」と記す) 自体が、重大な誤りに満ちた不当なものであるから、この「綱紀委員会の議決」を理由とした「決定」 は到底承服することができない。 以下に、この「議決書」の重大な誤りについて、列挙する。 1:「議決書」は、当職からの懲戒請求に対して、「懲戒委員会に事案の審査を求めない」として、言わば門前払いを喰らわせている。 その理由を<第6 結論>として「対象会員には、弁護士法第56条第1項に定める品位を失うべ き非行があったとは認められない。」としている。 要するに、「懲戒委員会にかけるまでもなく、新谷弁護士には何ら非行はなかった」と結論づけたのであるが、これは全く判断の誤りである。 新谷弁護士が当職に対して行なった行為は、明らかに「弁護士職務基本規程」の 第一条(使命の自覚)「その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現にあることを自覚し、その使命の達成に努める。」、 第五条(信義誠実)「真実を尊重し、信義に従い、誠実かつ公正に職務を行うものとする。」、
に違反し、「畏怖させる目的」で以てする脅迫であって、「人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害」しようとする強要罪に抵触する違法行為である。 2:当職が問題としているのは、「会社の上司からセクハラ被害を受けた名古屋の女性に同情し、その会社の本社のある門真市の地元議員として、話し合いによる紛争解決を願って行なった、穏便な申し入れ行動」を理由として、「10日以内に1000万円の慰謝料を払え!」と請求するとは、弁護士としてあまりに酷いではないか、という事である。 3:しかし「議決書」では、新谷弁護士が、従来の会社の当職に対する要求とは全く一変して、 綱紀委員会は、この「事実無視」によって、「10日以内に1000万円支払え」と弁護士から提訴の示唆と共に要求された場合に通常人が抱く恐怖感、つまり畏怖を与えた事実、についても全く考慮せずに結論を出している。 「従来の会社の当職に対する要求」とは、「あなたはうちの会社の事には口出しするな」と求めるものであり、それが07年の「6/13ご連絡」(配達証明郵便)である。(疎明資料5) これに対して当職は、怒り呆れつつも多忙な事もあってそれには対応せず、動向を見守るだけにしたので「7/31脅迫文書」が届く8/1までの間の1ヶ月半以上、当職と日恵製作所は没交渉だった。 これは会社から見れば、「戸田議員は会社の要請を受け入れて、何も口出しも行動もしなくなった」と思って然るべき事である。 ところが、新谷弁護士はあえて当職までも労組との対決に巻き込んで「1000万円脅迫請求」を行なったのであり、そのとてつもない異様さと不当性は明白である。 4:「1000万円」という巨額の賠償請求金額について、それが「脅迫に当たらない」妥当な金額なのかどうか、綱紀委員会は何ら真面目な検討をしていない。 「議決書」で「慰謝料額については、ケースバイケースという外なく、」と書きながら、綱紀委員会は本件についてはどうなのかを何ら検討もせず、単に新谷弁護士が「ある文献を根拠に500万円が妥当と判断し請求したもの」だから妥当だ、と判断するのである。 これは驚くべき怠慢、検討の欠落、新谷弁護士への過剰な追随と言わなければならない。 いったい、「新谷弁護士が見た文献」とは何なのか? 全く不明である。 それなのに、「一人500万円という金額が明らかに非常識ということはできないものと考えられる。」と結論付けて、新度弁護士を免罪するとは、納得できるものではない。 5:さらに、当職は「1000万円」を請求され畏怖を感じさせられたのであるのに、「議決書」ではこ とさらに「(一人)500万円」という数字を使って、畏怖感を薄めようとする小細工を行なっている。 「会社として500万円+社長個人として500万円」だから、と言うのであろうが、この伝で行けば、 「一人50万円の慰謝料は全然巨額ではない」と称して「会社・社長・役員・社員・株主併せて100人の慰謝料合計5000万円を請求しても全然巨額ではない」となってしまうし、もっと人数を増やして2億円・3億円に上っても「全然巨額ではない」となってしまい、しかも弁護士会がそれにお墨付きを与えて、巨額請求による批判封じのやり放題になってしまうだろう。 判断するべきは、あくまでも当職に対して請求した「1000万円」という金額が適正かどうかであって、会社側弁護士が綱紀委員会に釈明した内分けがどうかではない。 またちなみに、7/31請求文書においては、「当社及び当社社長は・・・1000万円を支払うことを要求致します。」と書いているだけで、「一人あたり500万円」とは全く書かれていない。 この点でも、綱紀委員会が新谷弁護士に不必要に追随して判断を誤っている様子が見て取れる。 6:本件セクハラ事件はたしかに存在したし、2007年6月8日行動時点で当職がその存在を信じるに足る相応の理由も存在した。 その後の経過を言えば、今年2月21日に被害女性・労組と日恵製作所との間に金銭和解が成立して問題解決している。事件発生からほぼ3年の長い時間が費やされた上での解決だった。 この和解には新谷弁護士も担当弁護士2人のうちの1人として入っているのであって、綱紀委員会が審尋した今年2月15日はその和解直前の時期であった。 和解の具体内容までは不知だが、もちろん会社側が女性と労組に金銭支払いをしたのであって、 この面から見ても07年7/31文書での「会社が名誉毀損損害を受けたから1000万円支払え」という請求が如何に不当なものであったかが伺える。 被害者労組の訴えビラによって仮に会社の営業に損害が発生したとしても、それは自業自得として反省すべき範囲内の事でしかなかったのである。 そもそも当職(と被害女性労組)への損害賠償請求は、07年7/31文書で「8/10までに1000万円支払え」と要求して以降は、(「支払い期限」が過ぎても)もはや再び行なわれなかった。 この事からしても、この7/31請求が正当な根拠のない、相手を畏怖萎縮させるための攻撃だっ た事が明白である。 7/31請求文書を受けて、当職は強い脅威感を自己の正義感と義憤で克服して、今度は日恵製作所をセクハラ加害者とはっきり断罪もして、HPでの大宣伝をも行なったのであるから、新谷弁護士の言い分に沿うならば一層巨額の損害賠償をしなければいけないはずなのに、同弁護士は逆に全く請求しなくなったし、「民事刑事両面にわたる法的措置」も全く取らなかった。 これは、賠償請求をして「法的措置」を取ろうにも取れないほどに司法的正義性のない請求だったことの証左であり、新谷弁護士(と会社)の卑劣さを浮かび上がらせているものである。 しかしながら、綱紀委員会は新谷弁護士の言い分に追随して、セクハラの不存在や「会社の被害の実在」をも綱紀委員会として認定するかのような立場で「議決書」を出したのである。 7:会社側弁護士は会社の意向に添った主張と行動をするものであり、会社がセクハラは存在しないとの立場を取るのならたとえその主張がウソである場合でも、弁護士もそう主張し行動する事は、 この社会に満ちあふれている職業行為であることは当職も承知しているし、それをいちいち非難するものではない。 しかし綱紀委員会は、被害女性の言い分を聞く機会は全く持たないという本件審尋の限界性を考慮する事なく、それと対立する会社側弁護士たる新谷弁護士の言い分だけを聞いて「法律の専門家である弁護士がセクハラはなかったと判断したのだからそれには相応の理由がある」と「セクハラ無し論」に傾いた判断するのみならず、「だから会社の意を受けて戸田らに慰謝料請求をするのには相応の理由がある」とまで踏み込み、ついには「だから、10日以内に1000万円支払えと請求しても問題はない」との見解を形成し、「それは会社に対する批判封じをする強要行為ではなく、請求者に対する脅迫行為にも該当しないこと明らかである」とまで断じてしまっている。 これは明らかに、弁護士懲戒請求の処理を弁護士会として検討するにあたって、その弁護士を雇っている会社の主張に余りに偏りすぎたもので、失当である。 8:「議決書」はまた、当職が地元議員として独自の立場で穏便な行動をした事を全く無視している。 今仮に万歩譲って、セクハラ問題に関して対立している被害女性・労組の行動に対して会社が損害賠償請求をすることが弁護士業務として許されるとしても、単に地元議員として問題解決によかれと思って、被害女性・労組に同行して独自の立場で会社に訴えただけの議員に対してまで、勝手に「労組と一体」とデッチ上げ、「労組と同罪」と見なして賠償請求をすることが許されるのか、という本件懲戒請求で重大な問題について、綱紀委員会は新谷弁護士の言い分にのみ追随し、極めてずさんでデタラメな判断をしており、失当である。 当職が「名古屋ふれあいユニオン」の一員でなく、一体性もなく、たまたま問題企業の本社のある門真市の議員だという事で、問題解決によかれと思って穏便な行動を行なっただけであることは、 通常の常識を持った人間ならば誰でも判断し得る事である。 それにも拘わらず、新谷弁護士が当職をも被害者労組とあえて一体にして「1000万円請求」を行 なったのは、被害者労組への支援が広がる事を阻止するための見せしめとして攻撃するという、悪しき意図によるものとしか考えようがなく、しかも議員をあえて狙い打ちにする所に、議会制民主主義をも蹂躙して憚らない新谷弁護士の邪悪さが露呈している。 これまさに弁護士としての適格性を疑わせるに十分な事である。 しかるに綱紀委員会はそこを見据える事なく、安易に新谷弁護士の言い分のみを受け入れて、「請求者が労働組合並びに組合員とともに共同不法行為者であると判断したことについて、相応の理由があること明らかである。」と結論づけてしまった。 「労働組合員と行動をともにし」た外形があれば労組と一体同格なのか? 新谷弁護士は「請求者はユニオンと仲がよく、同じ立場で行動をしていた。」とか、「請求者が組合と立場を画しているとは思えなかった。むしろ、組合の中心的な人物と一緒に行動していた。」とかと述べているが、滑稽至極な言い分でしかない。 今まで関係のなかった被害者労組からの要請趣旨を受け入れて行動しているのだから、「仲がよく」見えるのも「組合の中心的な人物と一緒に行動」するのも当たり前の話ではないか。 こういう事を当職と被害者労組の一体同格性の裏付けとして述べる事自体、新谷弁護士のデタラメさを示すものなのに、綱紀委員会はそこに何ら疑問を抱く風もなく、新谷弁護士の主張を鵜呑みにするだけであり、あまりにも認定の仕方がズサンすぎる。 9:上記の事から明らかなように、当職に「10日以内に1000万円の慰謝料を払え!」と請求した07年の7/31内容証明郵便は、「相応の根拠のないままに、弁護士業務遂行上の必要性を超えて」、 10:新谷弁護士による当方への「1000万円請求」は、昨今増加してきた「正当な要求に対して巨額慰謝料請求提訴をぶつけて批判封じをする」類の反社会的行為であり、提訴された場合の労力やリスクを「畏怖させる目的」で以てする脅迫であり、「弁護士職務基本規程」に違反する事は明白である。 なるほど不当な「巨額慰謝料請求提訴」のほとんど全ては弁護士によってなされている以上、弁護士会としてそれらの請求を「懲戒対象」とする事は困難を伴うことかもしれない。 しかし、本件のように会社を批判したビラを作成配布したわけでもなく、係争団体の構成員でもなく、労組の要請に応じて解決によかれと同行して穏便なアピールや申し入れを行なっただけの議員に対してのこのような不当な巨額慰謝料請求は、未だ例がないはずである。 これすらも懲戒しないとしたら、またこれすらも懲戒委員会での審査にすら回さず門前払いするとしたら、弁護士会や日弁連は「弁護士職務基本規程」を自ら空文化するに等しく、自浄能力がない職業団体であると世人に思われてしまうだろう。 せめて懲戒委員会にかけて審査を行ない、精密な検討を経て結論を出すべきである。 以上。 |
平成20年8月1日 戸田ひさよし 殿
日本弁護士連合会 審査開始通知書 貴殿申出の異議(弁護士会の対象弁護士等を懲戒しない旨の決定に対する意義)について、綱紀委員会に審査を求めたので通知します。本件は、綱紀委員会第1部会で審査されます。
本件事案番号: 平成20年網第354号 審査開始日: 平成20年8月1日 対象弁護士: 新谷 俊彦
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