▼ 単なる失言ではない、非核三原則問題 ▼

同じく「アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名運動」のメールニュースより抜粋紹介。詳しくは、
http://www.jca.apc.org/stopUSwar/index.html http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Our_actions/accuse_cabinet.htm


単なる「失言」ではない。有事法制の最重要論点−−核ミサイルによる先制攻撃論に踏み込もうとした福田・安倍コンビ。

 言うまでもなく「非核三原則」は、政府よって変化する単なる「政策」ではありません。憲法に次ぐ「国是」であり、国際的には核兵器不拡散条約(NPT)と相まって核武装も他国の核持ち込みもしないという対外公約そのものでもあります。当然、閣僚にとっては遵守すべき最重要の根本原則です。この根本原則を内閣の中枢、ナンバー2である官房長官が見直しを公言するなど許されないことです。小泉首相は直ちに福田官房長官を罷免すべきです。

 新聞やTVではほとんど触れられていないのですが、重要なことは、一連の日本核武装発言が単なる「失言」や「軽口」ではないことです。単なる「非核三原則見直し」発言でもありません。小泉首相は「私が変えないと言っているのだから問題ないだろう」と責任逃れをしますが、とんでもありません。発言を取り消せばそれで済む問題ではないのです。

 なぜか。一連の発言が有事法制と密接不可分だからです。福田・安倍両氏が連携して、有事法制の最大論点の一つ、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のノドン・テポドンというミサイルに対して、それを攻撃し壊滅させること、ミサイル危機台頭の際に有事法制を発動することを念頭に置いて、法的整備を目論んでいたことです。
 つまり有事法制を成立させた後に、「非核三原則の見直し」「核ミサイル保有」の法的フリーハンドを持っておこうということなのです。

北朝鮮への核先制攻撃を正当化する新しい侵略の論理。

 安倍氏の早稲田大学での5月13日の講演は、@ミサイル注入段階で攻撃しても専守防衛、A攻撃は兵士が行くと派兵になるが、ミサイルを撃ち込むのは問題ない。日本はそのためにICBMを持てるし、憲法上問題はない。B小型核兵器なら核保有はもちろん核使用も憲法上認められている。都市攻撃はダメだがミサイル基地の核兵器による先制攻撃は専守防衛だというものです。明らかに「先制攻撃論」を「核による先制攻撃論」に拡張したものです。しかも、従来の「ICBMは攻撃兵器だから持てない」という政府見解を勝手に正反対に偽造し、日本の核武装を否定した「非核三原則」を投げ捨てるようなことを言ったのです。

 福田氏の問題発言は、この安倍氏の発言について聞かれて「非核三原則見直しもありうる」と答えたのですから、確かに議論は一貫しています。両者が結託して核による先制攻撃論に法理論的な道を開こうとしていることは明らかです。
 現に、安倍氏の早稲田での講演の数日前、5月9日の有事法制特別委員会の審議で福田官房長官は「ミサイルに燃料を注入したら、攻撃に着手したとみなし基地を先制攻撃しても専守防衛の範囲」と答弁し専守防衛を先制攻撃論へと大拡張しているのです。「失言」や「放言」でないことは明らかです。

ブッシュ政権の対北朝鮮戦争政策に備える法理論的準備か?

 福田−安倍ラインは、日本独自核武装を念頭に置いているのでしょうか?国内外世論から、それはそう簡単ではありません。では、なぜそんな危険なことをあえて議論の俎上に上げているのでしょうか?彼らの真意はあきらかではありません。
 しかしアメリカによる対北朝鮮戦争の2つのシナリオ(あるいはそれらの同時進行)を想定し、その法理論上の準備をしているとは考えられないでしょうか。従来の法的枠組みの中でアメリカが北朝鮮を攻撃する場合には、「周辺事態」(後方支援にとどまる)、あるいは「安保条約6条事態」(基地の提供のみ)で日米が共同軍事行動に踏み切ることはできませんでした。
 ところがノドンにしろテポドンにしろ「北朝鮮のミサイルは平和目的はあり得ない。日本への攻撃以外にはあり得ない」と一方的に決めつけたとしたらどうでしょうか。
 福田−安倍ラインによれば、「燃料注入段階」で先制攻撃はOKです。「安保条約5条事態」(日本防衛)だと勝手に解釈して日米共同軍事行動が可能だという論理になるのです。そしてこれに有事法制をかませると、共同軍事行動だけではなく、国家総動員体制を発動することが出来るのです。

 【シナリオT】

 アメリカの新しい核戦略との関係です。北朝鮮のミサイル基地を米日両軍で先制攻撃することを念頭に置いているとしか考えられません。先制攻撃には空爆と通常戦力によるものがこれまで構想されてきたものです。しかしブッシュ政権は、今年に入って、北朝鮮の地下の核製造施設を破壊するという口実で新たな小型核兵器の開発、新たな核戦略を打ち出しました。「抑止力の核」から「使える核」への核そのものの位置づけの根本的な転換です。
 アメリカが核先制攻撃したとき(あるいは先制核攻撃の脅迫をしたとき)、日本が有事法制を発動できるよう備えると政府や自民党国防族が考えても不思議ではないのです。

 【シナリオU】

 それともアメリカの戦略ミサイル防衛(MD)の一環としての戦域ミサイル防衛(TMD)への参加を念頭に置いているのでしょうか?
 この構想は先制攻撃でも破壊できなかった北朝鮮のミサイルを、日本海や日本周辺で緊急態勢を敷き、上昇初期段階で迎撃するシステムです。この時に有事法制発動を考えても不思議ではありません。
 しかしこうした朝鮮半島有事は、アメリカの戦争挑発によって作り出されるものなのです。1993−94年の「第二次朝鮮戦争危機」の真実が語っているように、アメリカ側が国連を使って戦争挑発的な「核開発疑惑」をでっち上げ、欧米と日本の政府とマス・メディアを総動員して北朝鮮を追い詰める形で意図的に引き起こすことなのです。
 しかしこれ自体がアメリカの侵略戦争への加担=集団自衛権行使に他なりません。文字通り、日本をアメリカの侵略戦争に巻き込む重大事態なのです。