【国立市長の政府に対する質問書】

国立上原市長は、政府に対し有事法制についての質問書を5月17日に提出しました。
 これを参考にして各自治体でも、政府に対して質問書を出していこうという動きあり。


 政府への質問書

1 有事法制と日本国憲法の関係

? 有事法案を制定することの根拠は、憲法条文のどこにあるのか具体的に示して頂きたい 。
 憲法9条は、軍事力による紛争解決という考え方を否定していると思われるがどうか。

? 憲法は、「軍事的公共性」による基本的人権の制限という考え方を排除していると思われる。従って、「憲法の枠内」での有事法制による人権制限という考え方は成立することが困難と考えられるが、どうか。

2 「武力攻撃事態」について

? 「武力攻撃事態」とはいかなる時か。

? 現在、日本を直接武力攻撃する危険性をもつ国があるのか。あるとすれば、具体的に根拠をあげて示して頂きたい。

? ないとしたら、議論が十分されないままなぜ急いで法制化するのか。 

? 「武力攻撃のおそれのある場合」と「武力攻撃が予測される場合」とはどうちがうのか。その違いを示して頂きたい。また、具体的に、どういう場合を想定しているのか。
 想定している場合を例示して頂きたい。

? 防衛庁は、北朝鮮が発射したテポドンは、ミサイルであったとしているが、有事法が当時成立していたら、発射前は「武力攻撃事態」だったのか。

? 武力攻撃事態法案2条6号によれば、武力攻撃事態に際しては(ということは、「武力攻撃のおそれがある場合」や「武力攻撃が予測される場合」にも)、日本政府は「武力攻撃事態」を終結させるために「武力の行使」ができるような規定になっている。
 これは明らかに政府がとってきた自衛権の行使の要件をも逸脱するのではないか。

? 「武力攻撃事態」と「周辺事態」とは「併存する」ことがありうると、政府は述べているが、具体的にどのような場合に「併存する」のか。具体的な場合を例示して頂きたい。 

? 「周辺事態」で米軍の後方支援をしている自衛隊が武力攻撃を受けた場合には、武力攻撃事態法案に基づいて自衛隊は武力行使をするのか。そのような武力行使は、憲法が禁止する集団的自衛権に該当するのではないか。 

? 武力攻撃事態における「対処基本方針」を国会の事後承認としているのは、なぜか。
 これは、シビリアン・コントロールの観点から問題がないのか。

? 武力攻撃事態法案の3条4項に国民の自由と権利を制限するのは必要最低限にするとしているが必要最低限とはどこまでを言うのか。

? 河川、山等を崩して自然災害が起こった場合は、だれが補償するのか。

? 避難訓練をするという答弁があったが、(福田官房長官)強制力はあるのか。

? 強制移転先は、同市内なのか。他市へ移転させられた場合は、手続きはどのようになるのか。

3 「指定公共機関」について

? 「独立行政法人」の中には、「国立大学法人」も含まれるのか。

? 日本放送協会は、関連機関(NHK学園)も含むのか。

? 「指定公共機関」の中に日本赤十字社ものっているのは、戦時における中立をうたった、国際赤十字の原則に反するのではないのか。

? 政令で定める「公共的機関」「公益的事業」として、どのようなものを想定しているのか。民間の放送会社や新聞社も含まれるのか。

? 「指定公共機関」が行う「対処措置」として、具体的に想定しているのは、どういう措置なのか。「公共的機関」及び「公共事業」のそれぞれについて、具体的に例示 して頂きい。

4 「地方公共団体の責務」等について

? 武力攻撃事態法案5条に基づいて地方自治体が実施する責務を有する「武力攻撃事態への対処に関し、必要な措置」とは、どのような措置を想定しているのか。都道府県レベルと市町村レベルに分けて具体的に例示して頂きたい。

? 同法法案14条1項が規定する、対策本部長による「総合調整」とは、具体的にはどのような手続きで行われるのか。また、その具体的な内容はなにか。

? 同法案14条2項が規定する「意見を申し述べる」とは異議申し立てをも含むのか。

? 同法案15条1項で規定する「指示」とは、具体的になにをどのようにすることを意味するのか。「国民の生命、身体若しくは財産の保護または武力攻撃の排除に支障がある」と内閣総理大臣が考えたとしても、地方公共団体の長がそうは考えなかった場合には、地方公共団体の長の判断に従うことが、憲法で保障した地方自治の本旨にかなうのではないか。

? 首長が市民の生命、財産を守るために戦争協力拒否をした場合は、当該自治体及び首長に対して、どのようなことが起こると想定されるか。

? 自治体が協力拒否をした場合、首長、または拒否した職員の罰則も今後作られるのか。

? 同法案15条1項及び2項が「別に法律で定めるところにより」と規定しているのは、地方自治法などの現行法律を指しているのか。それとも、新法の制定を想定しているのか。もし前者であれば、具体的に法律名と該当条文を、また後者であれば、具体的にどういう法律の制定を考えているのか。

? 同法案15条2項で内閣総理大臣が自らまたは大臣を指揮して「対処措置」を「実施し、または実施させる」とあるのは、住民の生命、身体などを守るのは第一次的には地方公共団体の責務であり、かつ権限であるという地方自治の本旨に反するのではないか。

? 同法案15条にある「武力攻撃の排除に支障があり」とは具体的にどのようなことか。
 それは、自治体の非協力を含むのか。

? 同法案22条1号に規定されている措置の中で、都道府県、市町村が行うことが要請される措置は、それぞれ具体的にどのようなものか。措置の具体的な内容を例示して頂きたい。

5 「事態対処法制の整備」について

? 武力攻撃事態法案21条2項が規定する「国際人道法」とは具体的にどのような条約あるいは慣習国際法を指しているのか。

? 武力事態法第21条の2項の国際人道法に該当すると思われる、ジュネーブ4条約に対 する二つの追加議定書に日本は加入していないが、これを機に加入するのか.加入するとしたらいつか。

? 二つの追加議定書のうち、「国際的武力紛争における犠牲者の保護」を定めた第一追加議定書の第59条に「無防備地域」の規定がある。同地域への軍事攻撃を絶対的に禁止している。宣言する主体は、「紛争当事国の適当な当局」である。
 地方自治体が「無防備地域」宣言をして戦争協力を拒否した場合は、どのようなことが想定されるか。

? 同法案22条1号のイからヘまでに掲げられている措置に関する法制の具体的な内容を示して頂きたい。また、これらの措置は、国民に対して強制力をもつのか。
 国民がこれら措置に従わなかった場合には、罰則が科されるのか。

? 同法案22条2号の各措置に関する法制の具体的な内容を示して頂きたい。

? 同法案22条3号が規定する、米軍の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置とは、具体的にどのようなものを想定しているのか。武力攻撃事態における米軍と自衛隊の指揮命令関係はどうなるのか。

6 自衛隊法改正案について

? 同改正案77条の2で規定する「展開予定地域」とは、具体的にはどの程度の地理的な範囲を想定しているのか。 また、「防衛施設」として、「陣地」以外のどのような「施設」を想定しているのか。

? 同法改正案15条の4ないし21のように広範な適用除外ないし特例を認めることは、自衛隊の部隊などについてのみ例外を認めることになり、憲法の平等原則に抵触するのではないか。自衛隊の存在そのものについても、違憲の疑いがある場合には 、なおさ ら平等原則は厳格に適用すべきではないのか。

? 自衛隊車両の通行のために道路拡張などで、民間の土地、家屋の徴用、破壊することは憲法29条に違反しないか。(土地収用法(1951年)が制定される際、「国防目的」の事業のための土地の強制収用、使用は憲法に抵触する疑いが強いとして規定されなかった経緯がある。)

? 徴用、破壊に対する補償は誰がするのか。

? 同改正案124条ないし126条が規定している罰則は、憲法が保障する財産権及び住所の不可侵に抵触すると思われるが、このような罰則が認められるとすると、その憲法上の具体的な根拠はなにか。

? 良心的戦争協力拒否を理由に、保管業務や立ち入り検査を拒否した場合罰せられる、とあるが、そのような場合にも罰せられるとすると、憲法19条の思想・良心の自由に違反しないか。

? 業務従事命令は、強制労働を禁じた憲法18条に抵触するのではないか。
 また、職業選択の自由を保障する22条に抵触しないか。
 外国へ赴くような業務命令も出るのか。
 通勤が不可能なようになる、業務従事命令も出るのか。

? 自衛隊法103条が規定する業務従事命令に対する罰則は、将来ともに制定する予定はないか。