訴   状

 

損害賠償等請求事件


二○○○(平成十二)年五月三十一日

                 右原告訴訟代理人弁護士  永 嶋 靖 久

                    同      遠 藤 比 呂 通

 大阪地方裁判所   御中

 

 

   当事者の表示


             原   告     戸 田 久 和

             (送達場所)

               右原告訴訟代理人弁護士  永 嶋 靖 久

                     同       遠 藤 比 呂 通

 

 

            被   告

 

 門 真 市 議 会   議   長           大 本 郁 夫


             議会運営委員会委員長      吉 水 丈 晴


              総務水道常任委員会委員長    村 田 文 雄


   
          民生常任委員会委員長    平 岡 久 美 子


   
          建設常任委員会委員長     田 伏 幹 夫


              文教常任委員会委員長     今 田 哲 哉


                 合併・行財政改革調査研究特別委員
         
           委 員 長     富 山 悦 昌

 


                代 表 者 市 長      東   潤

 

 



請 求 の 趣 旨

 

一 被告門真市議会議長大本郁夫と同門真市議会議会運営委員会委員長吉水丈晴は、
  原告に対して、一九九八年度及び一九九九年度(平成一〇年度及び十二年度)の
  門真市議会議会運営委員会の委員会記録の閲覧を許可せよ。

二 被告門真市議会議長大本郁夫と同門真市議会総務水道常任委員会委員長村田文雄
  は、原告に対して、一九九八年度及び一九九九年度(平成一〇年度及び十二年
  度)の門真市議会総務水道常任委員会の委員会記録の閲覧を許可せよ。

三 被告門真市議会議長大本郁夫と同門真市議会民生常任委員会委員長平岡久美子
  は、原告に対して、一九九八年度及び一九九九年度(平成一〇年度及び十二年
  度)の門真市議会民生常任委員会の委員会記録の閲覧を許可せよ。

四 被告門真市議会議長大本郁夫と同門真市議会建設常任委員会委員長田伏幹夫は、
  原告に対して、一九九八年度及び一九九九年度(平成一〇年度及び十二年度)
  の門真市議会建設常任委員会の委員会記録の閲覧を許可せよ。

五 被告門真市議会議長大本郁夫と同門真市議会文教常任委員会委員長今田哲哉は、
  原告に対して、一九九八年度及び一九九九年度(平成一〇年度及び十二年度)
  の門真市議会文教常任委員会の委員会記録の閲覧を許可せよ。

六 被告門真市議会議長大本郁夫と同門真市議会合併・行財政改革調査研究特別委
  員会委員長富山悦昌は、原告に対して、一九九九年度(平成十一年度)の門真
  市議会合併・行財政改革調査研究特別委員会の委員会記録の閲覧を許可せよ

七 被告門真市は、原告に対して、金一〇〇万円並びに右金員に対する本訴状送達
  の日の翌日から支払い済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

八 訴訟費用は被告らの負担とする。との判決並びに仮執行の宣言を求める

 



請 求 の 原 因

一 原告

 

 原告は、一九九九(平成十一)年四月二十五日行われた、門真市市議会議員選挙で当選し、現在まで、門真市議会議員の地位にある。

 

二 委員会記録閲覧に許可を要する旨の議運決定

 

 二〇〇〇(平成十二)年二月三日、門真市議会議会運営委員会は、門真市議会の各委員会記録につき、記録全文の公開禁止と閲覧する時は議長・委員長の許可を要する旨を決定した(以下「本件議運決定」という)。

 

三 原告による閲覧許可の申請

 

1 原告は、二〇〇〇(平成十二)年二月八日、被告門真市議会議長(当時早川孝久)と同門真市議会議会運営委員会委員長(当時大本郁夫)と同門真市議会文教常任委委員会委員長(当時吉水丈晴)に対して、一九九九(平成十一)年五月から、二〇〇〇(平成十二)年二月三日までの間の、すべての議会運営委員会と文教常任委員会記録の閲覧を申請した。なお、原告は、右閲覧申請に対する回答期限を二月一〇日夕刻までとした。

 

2 原告は、同年五月九日、被告門真市議会議長(当時早川孝久)と同門真市議会議会運営委員会委員長(当時大本郁夫)、同門真市議会総務水道常任委員会委員長(当時上杉嘉信)、同門真市議会民生常任委員会委員長(当時稲田実)、同門真市議会建設常任委員会委員長(当時林芙美子)、同門真市議会文教常任委員会委員長(当時吉水丈晴)に対して、一九九八年度及び一九九九年度(平成一〇年度及び十二年度)の議会運営委員会、総務水道常任委員会、民生常任委員会、建設常任委員会、文教常任委員会の各委員会記録の閲覧を申請した。なお、原告は、右閲覧申請に対する回答期限を五月十一日夕刻までとした。

 

3 二〇〇〇(平成十二)年五月に開催された、門真市議会五月臨時議会において、議長及び各委員長が改選された。

 

4 原告は、同年五月一九日、被告門真市議会議長大本郁夫と同門真市議会議会運営委員会委員長吉水丈晴、同門真市議会総務水道常任委員会委員長村田文雄、同門真市議会民生常任委員会委員長平岡久美子、同門真市議会建設常任委員会委員長田伏幹夫、同門真市議会文教常任委員会委員長今田哲哉、同門真市議会合併・行財政改革調査研究特別委員会委員長富山悦昌に対して、一九九八年度及び一九九九年度(平成一〇年度及び十二年度)の議会運営委員会、総務水道常任委員会、民生常任委員会、建設常任委員会、文教常任委員会、合併・行財政改革調査研究特別委員会の各委員会記録(但し、合併・行財政改革調査研究特別委員会については一九九九年度分のみ)の閲覧を申請した。なお、原告は、閲覧申請に対する回答期限を五月二十九日正午までとした。

 

 

 

四 被告らによる閲覧の不許可

 

 原告の右閲覧の各申請に対して、被告(被告門真市を除く)らは、右申請の各回答期限を過ぎても、現在まで全く何らの回答もしない。許可・不許可の別も、また、なぜ回答しないかの理由も現在まで明らかにされていない。原告の右閲覧申請に対して被告ら(被告門真市を除く)がこれを許可しないため、原告は今に至るも、右各閲覧申請に係る委員会記録の一切を閲覧することができない。

 

 

 五 閲覧不許可の違法と被告らの不法行為

 1 憲法の定めにより、地方公共団体には、その議事機関として議会が設置され(憲法九
   三条)、議会は、条例の制定・改廃、予算の議決等の権限を有し、義務を負う(地方自
   治法
九六条等)。議会が地方公共団体の意思決定機関であることは、憲法上保障さ
   れた重要な権限である。

   憲法の定めにより、議会は、地方公共団体の住民が直接これを選挙する議員によっ
   て、構成される(憲法九三条)。議員は、議会がその権限と義務を行うための意思形
   成に参加する権利を有し、義務を負う。

   委員会は、議会の本会議のみでは、詳細かつ十分な調査・審議を期待することが困
   難であるため、本会議の審議の前段階として、予備審査を行うために、議会に従属す
   る、議会の内部機関として設置されている(地方自治法一〇九条以下)。

 

 2 議会における委員会設置の右趣旨に照らせば、議員が、すべての委員会記録につい
   て、
これを閲覧精査して、委員会でどのような審査が行われたかを知ることは、議員が
   議員としての権限を行使し、義務を果たすために、不可欠の権利である。
   現に、門真市議会においても、本件議運決定の以前には、議員は、誰の、何らの許可
   もなく、委員会記録を閲覧することができた。

   従って、議員が行う委員会記録の閲覧に議長・委員長の許可を要件とした、本件議運
   決定は、憲法上保障されている議員の権利に対して、合理的な理由なく著しい制約を
   加えるものであって、憲法九三条に違反している。

 

 3 本件議運決定それ自体は憲法違反でないとしても、被告ら(被告門真市を除く)が原告
   に対して、前記各閲覧を許可しなかったことには、何らの合理的な理由がない。
   被告ら(被告門真市を除く)が、閲覧を許可しなかったことは、原告の議員としての権利
   を制限するものであって憲法九三条に違反している。
 

   右憲法違反の記録閲覧の不許可によって、原告は、議員としての権限の行使について
   甚だしい制約を受けることとなった。また、この制約は一時的なものではなく、議員とし
   ての在任中のすべての間にわたって、このような状態が続く。
   これは、原告から議員たる地位を奪うに等しい。

 

4 被告ら(被告門真市を除く)は前記各閲覧申請以後、現在に至るまで、許可・不許可の別とその理由を一切原告に告げなかった。被告ら(被告門真市を除く)は、憲法上保障された議員の権利を制限するのであるから、閲覧の許否とその理由については、ただちに、原告にこれを告げて、原告が改めて閲覧に必要な行動をとることができるようにすべきであるのに、これをしなかった。そのため、原告は、どのようにすれば委員会記録を閲覧することができるのか知ることができず、委員会記録を閲覧するために必要な行為をとることが今に至るもできない。

 

5 被告ら(被告門真市を除く)が、前記閲覧を許可しなかった不法行為、ないしは閲覧の許可・不許可の別とその理由を一切告げなかった不法行為により、原告は、憲法上保障された、委員会記録を閲覧するという議員としての権利を違法に侵害された上、閲覧を得るために、本来であれば不要な、本件提訴を含む様々な行為を余儀なくされた。これにより原告が被った財産的・精神的損害を金銭に評価すれば、金一〇〇万円を下回ることはない。

 

よって、請求の趣旨記載の裁判を求めて本訴に及ぶ次第である。