KU会 第3回学習会  あぶない日本!?警察・検察はどこへ行く 関西地区生コン支部事件とは何か 2006年4月24日 於、三井アーバンホテル 武建一(全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部 執行委員長)  KU会のみなさん。みなさんが結成されたときに私は獄中にいましたので、今日初めてお目にかかる方も多い。まず、KU会のみなさんがこのように盛大な勉強会を開催されましたことを、心よりお喜び申し上げたい。  本日は、先ほど大谷昭宏様より貴重なお話をいただきました。色々とお話の中で、日本の国がとんでもない方向にいっていると言われていました。しかし、日常我々生活している者にとってみたら、本当にそんなとんでもない方向にいっているだろうかと思う人の方が多いですね。それはやっぱりマスディアの報道が、権力とか多国籍企業、アメリカにとって都合のいいような情報しか流さない。国民にとって、何が本質なのか、どういうスタンスで臨むべきなのかという本質を知る情報をマスコミが流してくれない。残念ながら多くの国民、色んな調査によりますと、新聞を中心としたマスコミの報道に対して70%を超える国民の方は真実を報道していると思われているようです。  例えば私の逮捕事件などについても、背任事件、あるいは横領でもあったんじゃないかということで、すごく新聞で報道されるわけですね。ところが実際には、背任とか横領というのは全く存在せず、調べることも全くせず、もちろん立件もできなかったんですね。ところが新聞報道は、実際に数の多い中小企業が個社では弱いから団結して、大企業とできるだけ対等に近い取引をしていき、そして、そのことによって経営を安定させよう、あるいは、そこに働いている労働者の雇用を安定させよう、という当然過ぎるような社会運動であり、また、産労(連合・交通労連生コン産業労組)とか全港湾(全港湾労組関西地方大阪支部)とか我々の労働組合が一緒になり且、中小企業の経営者も団結して立ち向かっていこう、というまともな運動には全く触れない。物事の本質をそらすような報道をするわけですね。この事件の報道で端的に新聞社を始めマスコミというものが完全に権力の側に立っている、完全にアメリカの資本と日本の多国籍企業の利益のために役割を果たしているということが、はっきりしたんじゃないでしょうか。  ですから、先ほどのジャーナリストの大谷さんなどは非常に良心的なジャーナリストですから、真実をしっかり述べることができる。今の日本社会というのは、真実を述べるジャーナリストというのは少ないですよね。むしろ権力側についた方が、多国籍(企業)側とかアメリカ側についた方が、お金儲けになるとか、あるいは自分の社会的名声・地位を確保できるとか、そういうかたちで相手側の方に寄ってしまっているわけですよね。こういう状況ですから、マスメディアの中でも良心的な人の話によって、ことの真実を知るという、大変意義のある話ではなかったかと思います。  また私は、大谷さんに初めてお会いしたんですが、テレビではよく存じ上げておりますが、こういう方が、私の顔は知らなくても、あるいは関生(関西地区生コン支部)の運動を詳細には判らなくてもですね、この関生の弾圧事件は日本社会が変な方向に進んでいる流れの中の一つの事件である。ですから民主主義にとって危機だ、このような動きを認めることは大変なことになりかねないと、早期釈放の署名運動などにも積極的に参加をいただき、色々と支援をいただきました。また、中央本部の小谷野書記次長の提案にありましたように今後の署名活動についてもご協力を約束いただいております。重ねて大谷さんに対して感謝の気持ちを表明したいと思います。ありがとうございます。  さて、このKU会は結成して早1年が経過いたしました。私は1年前の2月28日は大阪拘置所に勾留されておりましたが、KU会に対する次のような期待のメッセージを送らせていただきました。  その一つは、このKU会が非常に明確に、わが生コン支部を支援するということを謳っている。我が組織ができて、今年で丸40年の歴史を刻んでおります。この40年の歴史の中では、中小企業とも色々揉め事もありましたし、大企業とも大いに闘いました。闘っておりますと組合潰しとか組合懐柔政策とか、言葉に言い尽くせないような不当労働行為などを受けて、それに反撃する闘いを果敢に展開してきました。そういう中でやくざに殺されかけたり、色々と弾圧も受けました。  しかし、KU会のみなさんのように経営者でありながら公然と天下に向かって、闘う我が組織を支援するということを打ち出したのは初めてではないか。しかも、弾圧の真っ只中にKU会が結成されたのは、非常に象徴的ではないか。中小企業が中心で結集されておりますけれども、ほとんどの中小企業というのは立場が弱いですよね。情報力が集まるわけでもないし、資金力がそれほどあるわけでもないし、そして優秀な人もなかなか条件が良くないものですから集まりにくい。色んな制約が中小企業にはあります。ですから、どうしても中小企業は、一方では大企業から踏み台にされるという面と、一方では労働者を雇っている―経済用語で言えば労働者を搾取(さくしゅ)しているという―こういう2面性がある。ですから中小企業の置かれている立場は、絶えず強い立場を気にしなければ経営が成り立たないという面がある。言わば置かれている状態が非常に動揺しやすい。動揺しやすい状況に置かれていながら、非常に厳しい中でKU会を結成したみなさんの勇気、そしてみなさんの志というものに対して、我が組織を代表して心より敬意を表したいと思います。  まさにKU会も、闘いの中でスタートし、闘いによってこの1年を迎えた。そして益々KU会のみなさんに対する結集力が高まってきている。中小企業経営の今後のあり方として非常に期待が高いと思います。  そして「ステークホルダーエコノミー」、全ての利害関係人が協調し調整していくということですが、要するに会社というのは、アメリカ流に株主だけが全てということではないんです。アメリカは全て株主だ、という言い方をします。しかし、日本はそうじゃないですよね。もちろん株主も必要ですが、そこに働いている労働者、経営者、管理職、地域社会も結びつきがあります。つまり、利害関係人と等しく調整できるようなスタンスが必要だ、一方的に株主だけが良かったらいいということではだめだ、ということです。取引というのは出入りしている業者に至るまで、一方的な取引というのは成立しません。お互いに持続できるような取引、つまりお互いに尊重しあう立場、というのが経営にとっての基本的な、いわゆる道徳ではないでしょうか。そういった志を持っているのがKU会に結集したみなさまではないか。これこそ、21世紀の労使関係のモデルになるであろうと私は期待しています。  そして、このように勉強が重ねられるのは大変素晴らしいです。元々、生コンとか運輸関係の労働者も経営者も、「私は元々勉強したくなくてこういう産業に従事したのに今更勉強なんて」という意識を持っておられる方もおります。そういう点から見ますと、問題意識を持っておられる。つまり、"知的レベルアップこそが力"である。「人が財産だ」とよく言われます。人が企業を構成し、人が世の中の中心になっていかなければならない。そこにおける「人」というのは他の動物と違って知性とか理性があり、勉強しなかったら身に付いてこないわけですね。勝手に自動的に身に付いてくるわけではないんです。そういうことを意識してKU会が勉強を重ねられているというのは、大変これは意義のある機会だと思うんですね。こういう機会を作る、勉強する企画をされるということも大変エネルギーのいることですが、そういう問題意識を持つということ自体に、このKU会のレベルの高さを示しているのではないかと思います。そういう意味で、このKU会が今後益々発展することを最初に祈念いたします。  さて、私の話は「生コン支部弾圧の背景」ということになっております。そこで、私は2つのところから検証したいと思います。1つは時代状況から。我々の弾圧をしてくる側の今の時代状況。もう1つは、そういった時代状況に対して我々はどんな政策と方針を持って闘ってきたのか。こういう、我々が主導的に闘ったという2つの面で検証したいという風に思います。  結論から言っておきますと、生コン支部にこれだけ弾圧がかけられているというのは生コン支部結成40年の歴史の中で2回目なんですね。1回目の弾圧は1980年代。これは当時、日経連(日本経営者団体連盟)という組織がありました。今は日経連が無くて日本経団連(日本経済団体連合会)に集約されております。日経連というのは、労働組合を全国的に見て、労働組合対策のために大きな(企業の)経営者が中心となった団体だったんですね。26年前の日経連というのは、総評(日本労働組合総評議会)という組織が当時ありましたから、闘う労働組合に対して経営者の闘う集団としてあったんですね。ですから日経連というのは労働組合対策の総本山なんです。その日経連の当時の会長をされていた大槻文平(おおつきぶんぺい)という方が、三菱鉱業セメントの当時の会長だったんです。今で言えば、三菱マテリアルという会社ですね。その会長が、26年前から24年前にかけて、我が生コン支部―まだその当時は1300人から一番多いときで3500人しかいなかった―を大弾圧してきたわけですね。その大弾圧のときに、攻撃がどこから来たかというと法務省と最高検察庁です。これは日経連の要請によってきたんです。それで、彼らはこう言った。「関生型の運動は資本主義の根幹に触れる運動である」、「関生型の運動は箱根の山を越えさせない」。こういう位置付けです。  つまり、多いときで3500人、まだ80年のときは1300人そこそこだった、そのくらいの労働組合が日本の資本主義を揺るがす、日本の資本主義をひっくり返すと、相手に言わば"高く評価された"わけです。このときの弾圧は、今以上のものがありました。私は、そのときは23日間で保釈になりましたけれど、それは裁判所がまだましだったということでしょうね。26年前から24年前の2年から3年にわたってやられた弾圧の仕方は、東淀川警察に公安のプロを50人ほど常駐させて、そして労使で決めることについてお金が関わることについては「脅迫」、「強要」あるいは「恐喝」という事件に全部にしてしまう。そして労使紛争が発生したら暴力事件、つまり「暴力行為等処罰に関する法律違反」や、今回みたいに「強要未遂」あるいは「名誉毀損」にする。あらゆる法律を使って徹底的に弾圧されたんですね。  しかし、その弾圧でなかなかへこたれなかったんです。むしろ組織はどんどん成長していったんです。組織がどんどん成長したもんですから今度は共産党まで巻き込んでいきました。敵(権力)と闘っているときに後ろから鉄砲を撃たれたものですから、我々は大打撃を受けました。しかし、それでもなお粘り強く闘ってきて盛り返して、そして今度は第2次弾圧です。  つまり、第2次弾圧と第1次弾圧の特徴は、弾圧されるというのは生コン支部の力が成長しているということの証(あかし)なんですね。弾圧するに値しない組織だったら、相手はそれほど大掛かりな弾圧をしません。弾圧するというのは、はっきり言って生コン支部というのが権力にとっても大企業にとっても非常に存在感が大きいということです。まだ、我が生コン支部は1500人ちょっとなんです。それが、第1次の弾圧と同じくらいの態勢をとって今回、弾圧してきているわけです。非常に彼らの危機感の表れです。  つまり我々は、少数の大企業とか権力に対して断固として闘う。まともな政策と方針で闘う。それを怖がっての攻撃だと私は理解しております。そういう意味では、結論から言っておきますと、敵というのは巨大に見えるんだけれど大したことではない。敵というのはただ形としては巨大に見えているだけで少数である。  さて、次に時代状況につきまして説明したい。まず、今の世界は190ヶ国以上ありますね。65億人地球上には住んでいると言われております。じゃあ今の世界で、世界をリードしているのはどこですか?アメリカ帝国主義でしょう。そして、そのアメリカ帝国主義というのは、冷戦構造が終わったとたんに自分が世界の一極として自分の言いなりの国際秩序を作ろう、またそれができると思って今でもやっているんじゃないですか。全て世界はアメリカの言いなりになる。アメリカは何の為にそういうことを言っているのか。アメリカの大企業の利益のために言っているんです。別に日本の多国籍企業とか、日本の国民の利益、そんなものは考えていない。アメリカ自身の貪欲な、大企業の利益を追求するためにやっているわけですね。  さて、この間アメリカはどういうことをやっているのか。先制攻撃と内政干渉を特徴としている。これがいわゆる「ブッシュ・ドクトリン」と言われています。ブッシュ政権の外交の原則は、言うことを聞かなかったら有無を言わさず、国連の決議なんか関係なく攻撃するということです。アフガニスタンとかイラクでやっていることはそういうこと。そして内政干渉というのは、アメリカ型の民主主義を作ろうということでしょう。それぞれの国は民族・宗教など色んな違いがあるから、何もアメリカの言いなりや、アメリカ型の民主主義を押し付けられるということについて、抵抗するのは当たり前の話でしょう。  このアメリカの政策というのは、至るところで行き詰っているというのは誰が見ても明らか。イラクなんて(開戦から)3年が過ぎてもどうにもできないでしょう。イラク人民自身が自分の好きな国を作ろうと言ったって、アメリカはそれを許さない。石油・天然資源を思いのままにしようとするアメリカの思惑と、イラクの人たちの違いははっきりしています。これは中東においては、イスラエル型の国を全部に作ろうということです。ところが、これもうまくいかないわけですね。アメリカのやり方は至るところでどん詰まりになっている。ですから、「アメリカは民主主義の国として素晴しい」といってマスメディアは宣伝するんですが、実際には外交的にもうまくいっていない。 では、経済的にはどうですか。05年度(会計年度)の予算だけでも、日本の金にして34兆円以上の財政赤字。貿易収支の赤字はもうずっと続いているわけです。  1971年。今から35年前。ニクソンというアメリカの大統領がいました。このニクソン大統領が、ドルを世界にばらまきすぎて、「これからドルと金を交換するのを禁止します」と言った。これがニクソンショックなんです。それからどんなことがあったんですか。すでにそのときには、朝鮮戦争(1950〜53年)でも金を使い果たしていたわけですが、ベトナム戦争(1954〜75年)でたくさん金を使い果たして、それから今でもあちこちに軍事基地を置いているから、大量のドルを世界にばらまいている。本当はそのドルに対して、「じゃあアメリカさん金と換えて下さい」と言えば換えなきゃいけないのに、それをしないということを35年前に発表しました。今は、あのドルというのは紙切れと一緒なんです。要するに、まき散らしすぎているわけです。貿易赤字と財政赤字を繰り返しているアメリカは、国として会社で言えば破産状態なんです。破産状態だけど、今やっている経済はばくち経済ですから、銭儲けになるのでアメリカに寄っていって、ばくち経済をする。そして日本は、せっかく国民が汗を流して貿易収支の黒字をどんどん作って、ドルが日本に寄るようになったら、そのドルでアメリカの国債を買ったり株を買ったりして、アメリカにほとんどドルを持っていっているわけです。それで辛うじて存在しているのがアメリカなんです。もう経済的にも破産なんです。ですから、湾岸戦争のときに金が足りないからドイツとか日本からたくさん金を巻き上げていったわけでしょう。一国では戦う能力と資力が無いわけです。それが今のアメリカの実態じゃないですか。アメリカの国内におけるひどい格差社会というのは、ニューオリンズにおけるあの大災害を見たらはっきりしたんじゃないですか。アメリカというのは、貧乏人はとことん貧乏人のどん底で、金持ちは途方も無い金持ちという格差社会です。そのアメリカの尻馬に乗っているのが小泉さんじゃないですか。  そして、大谷さんの先ほどの話にありましたように、今の一連の反動法案を通す背景というのは、アメリカの企業と日本の多国籍企業のために多くの国民を競争させて、そして強者が中心となった政治を作る。強者が中心となった政治の為には、一方では貧乏人をどんどん作り上げるということでしょう。日本で今起こっていることは、5000万(円)超の所得者、これは平成16年度では約4万6000人です。それをそのまま4万6000世帯とし、4人家族と仮定すると18万4000人くらいですよね。日本の人口の1億2500万人のうち約0.15%だけが裕福になるという計算です。  ところがどうですか。一方では年間200万(円)の所得の人たちがどんどん増えている。要するに非正規労働者がどんどん増えているわけでしょう。不安定労働者、そして収入が低い労働者が増えている。そこにはちゃんとユニクロとか吉野家とかマクドナルドだとかを段取りしている。要するに消費の貧困。そういう層もちゃんとできる仕組みを作るわけですね。いつまで経っても貧乏人は貧乏人で固定化してしまう。こういう格差社会が広がっているのが、今の小泉政権の政策じゃないですか。当然我々は、国民は反発します。  しかも、小泉さんなり自民党と公明党がやっている政策はそういう弱い者を痛めるんですが、弱い者を痛めるためにもっと収奪する方法としては消費税を上げようとしております。今の小泉さんの任期期間中は消費税を上げないと言いながら、同じようなことをやっている。社会保障の費用をどんどん上げて年金などは切り下げているわけですから、実際上は消費税が上がるのと同じような効果が出ている。そして今度、消費税を上げますよ。徹底的に弱者を痛めつけるような政策を実行している。  我々は、そういう格差社会をやめさせようとしています。どうすれば格差社会をやめさせられるのか。多数の者が団結しなければ格差社会をやめさせることはできない。我々の運動の基本は、一切の格差社会を無くすにはどうしたらいいのか。それは「競争を抑制する」ということなんです。つまり、政権を握っている特権階級というのは、少数の者です。1億2500万人のごく少数の者の為に多数を踏み台にするわけでしょう。その少数の者が多数を支配する原理は何ですか。それは「分断」です。そして、限りなく競争させるわけです。  ですから、事業協同組合に中小企業が―バラセメントの場合も圧送の場合も生コンの場合も、あるいはトラックの場合も―団結する。そういう団結をするというのは、競走を抑制するということでしょう。協同組合に加入するということは、お互いが競争をやめましょうということです。逆に競争していいことあるんですよ、例えばこういう勉強会することについて各事業主がどんどん競争する。あるいは工場をきれいにするとか、労働者のモラルを高めていく、管理職のモラルを高めていく、これは大いに競争すればいい。ところが、運賃とか売り価格とか、そういうものをお互い中小企業同士が競争したらどうなりますか。強者に対して競争したら、餌食になるだけの話でしょう。ですから、競争しないために協同組合に入るんです。そして、協同組合に入ると数が多いですから、そのスケールメリット(規模が大きくなることによって得られる利益)を生かして共同事業をやる。共同購入したりする。そうしたら、良い製品をつくり、安定供給し、そして適正価格を維持することが可能であるということです。  団結しなければそのことはできない。だから今の事業協同組合について、我々3つの労働組合(生コン支部、産労、全港湾)が力を入れて一緒にやっているわけです。つまり、大企業が好む「分断」と「競争」をしない。分断じゃなくて団結する。競争ではなくて、適正化を目指す1つの運動体をつくり、協同によって得られる利益というものを追求する。これを彼ら(大資本・権力の側)は、目の上のたんこぶに思っている。我々の運動というのは、そのことをまず基本にしております。  さて、これは、生コンとかバラセメントとか圧送だけじゃなくて、中小企業は全て共通していると思うんですが、とにかく大企業の狭間に存在している。大企業の狭間にあるということは、団結しなければ、個社型の経営は限界に来ているということです。なぜなのか。今までもそうですが、これから(大資本・権力の側は)中小企業を徹底的に痛めつけます。そして、農業を破壊していきます。労働者の雇用を破壊し、賃金を破壊します。これもこれから政権が変わったらいくらか違いが出てくるでしょうけれど、そうじゃない限り今の政権が続いている限りは一番弱者のところ、数は多いんだけれどそこに攻撃を集中していきます。  ですから、中小企業の方々も置かれている立場は、決して自分の力で対等な取引なんかできる状態じゃないということを理解していただいて、中小企業は大企業の狭間に存在している、個社で取引すると必ず大企業の餌食になる。だから団結する以外に無いという基本的な考え方を共有することが大事ではないかと思います。  特に大阪の生コンの業界で言えば、今年で53年の歴史を数えているわけですが、元々生コンというのはセメントの販売手段の一部門としてスタートしました。ですから、始めはセメントメーカーの直系企業がほとんどだったんです。ですが、その後の日本の高度経済成長政策の中で、どんどん竹の子のように生まれてきたのが生コン工場(中小企業)なんです。そして今では、これは全国で共通しているんですけれども、この業界では生コン専業の中小企業は80%以上です。つまりセメントメーカー(大企業)の直系企業は20%以内です。影響力は非常に弱い。にもかかわらず、影響力の少ない少数の直系企業が主導権を握るんですね。工業組合とか協同組合の主導権をこの少数の直系企業が握る。なぜでしょうかね。特に、私が逮捕されていたこの1年間というのは、セメントメーカーが乗っ取ったような感じです。大阪では18%くらいしか影響力が無いですよ。圧倒的に80数%は中小企業ですよ。  何で中小企業は数が多いのに、ごく少数のものに主導権を握られるのか。中小企業はどうしても「目先の利益」に影響されるんですね。ですから分断されるんです。だから乗っ取られるんです。しかも、「お前のところだけは特別だ」みたいに言われる。「セメントも安く入れてあげましょう」あるいは、「お得意先を紹介しましょう」、こんなことをうそも含めて平気で言いますからね。あるいは、中小企業は人員をそれほど余裕持っていないものですから、「理事長は直系企業の人がやりますよ。ちゃんと公平に運営しますよ」と言われて、中小企業は人のいい人が多いものですから、ころっと騙されてしまう。それに、(中小企業は)ちょっとした動きに非常に敏感に影響されるものですから、そこを巧みにつついて結局、乗っ取られてしまっていたんですね。ですから今、流れを変えようというんです。流れを。  どんな流れか。つまりゼネコン、大手建設会社ですね、それから大手商社、それからセメントメーカー、こういうところの言いなりになったら地獄ですよ。こういうところの言いなりにならないようにするにはどうすればいいのか。今の大阪で流れを変える方法として、1つは「新設」。私が(拘置所に)入っている間に新しくプラントが、残念ながら6つもできているんです。この6つのプラントにセメントを入れるところはけしからんということで、認めない。なぜかと言いますとね、広域協組ができたのが12年前(94年11月)ですよ。この12年間、33工場、工場数が多すぎると言って間引きしたんです。150億も金を使ったんですよ。我々の血と汗の結晶である150億の金を、積み立てとして閉鎖した工場の営業損失金として出したんです。33工場というのは1000人以上の労働者が失業を余儀なくされたんです。こういう多大な犠牲を払いながら、この12年間、広域協組を守ってきたわけでしょう。そこに新設を認めるということはどうですか。まるでどぶに捨てたしたようなことになるでしょう。だから、この新設に対してセメントを"一滴"も入れたらいかんというのです。  今、建設業界は不況です。トラック業界も厳しい。そうしますとね、土地を持っているところは、今でも生コンを建てたいと相談に来るわけです。生コンというのは、土地を持っていますと本当に安く建てられるんです。半年据え置きで中古のプラントだったら本当にわずかな金で建つんですね。だからそこへ参入したがるんです。他の厳しいところよりは、まだましだと思っている。ですから、今の新設をきちっと抑制するということが1つ。  それからもう1つは、卸協同組合という売り手の側の協同組合を立ち上げなさい、ばらばらにやっているから買い叩かれているので一本にしなさい、これを生コン協組が支えてちゃんとした販売協同組合を作りなさい、ということを言っている。  それからもう1つは、アウトとインの違いは何なのかと言うと、品質の管理監査と保証システムなんです。インだからこそ、この2つのことはできるんです。なぜか。この5月からですね、「瑕疵(かし)担保証償制度」というのをスタートしようという動きがあるんです。つまり、生コンに欠陥が発生してそこに損害を与えた場合にはそれは保証しますよという制度なんです。これは大阪広域協の場合には1?当たり9円ほどのお金を出せばそういう保証システムができる。ところが、アウトというのは1社1社の会社でしょう。アウトがもし瑕疵担保保証をしようと思ったら、何十円もかかってしまって、あるいは何百円もかかってしまって、それはできないんですよ。インしかできない。姉歯事件とか、今、品質に対して非常に市民的な関心が高い。そういうときに、「保証もします、管理監査システムも徹底しております」、これをインがセールスポイントに使う必要があります。  そしてもう1つは、アウトとの大同団結をはかっていく。 そしてもう1つは、新技術開発。コンクリートの保水性の高い、あるいは透水性の高いコンクリートを開発する。そのことによって需要が伸びるということです。 そしてみなさんがやっているようなこういう学習を系統的にやる。こういうことなどを今、求めている。一気に今、流れが変わりつつあるんです。 そして、その流れを変える、簡単に言えば中小企業主導型の方向に流れを変えることによって―これは、生コンもバラセメントも圧送も全て共通している―正当な社会的地位を確保する。中小企業は多数ですから「多数の民主主義」です。その多数にふさわしい経済・産業システムを作り上げていこう、というのが我々の政策の基本であります。  さて次に、この運動を追求する観点というのは、やっぱり「多数者が多数者の利益」の為の政策を追求する。つまり、少数者に対して対抗できる力は多数者の団結。そして、団結して行動するということです。これによって世の中の歪み、経済の歪み、産業の歪みを変えていく。元々、人間というのは社交的な動物であると同時に協同的な動物である。一人一人では弱いから、群れを成して生きているというのが人間でしょう。いくらこんなに科学技術が進歩したとしても、全部が協力しなければ、この世の中は成り立たない。人間の共同体によって世の中全て成り立っているわけでしょう。ですから、共同体の運動を追求するということは人間のこれからの発展にとって法則的な運動だと思うんです。ですから、一時的に権力弾圧があったりして、いくらかしぼんだように見えても、法則にかなった運動というのは大きく発展する要素を持っているんです。ですから、そういうことを基本に置いて、これからもみなさんとしっかり団結して闘い抜いていきたいということを申し上げて、私の話を終わります。