ILOへの申立書

 

 

 

 

ILO(国際労働機関)事務局
事務総長
ホワン・ソマヴァイア 様

2006年9月8日

 

    組合活動の自由に対する侵害の申し立て

 

  私たちの組合は、日本の建設産業及びセメント・生コン産業に働く労働者を組織しています(組合員4500名 )。2005年中に、私たちの関西地区生コン支 部の組合役員8名が警察に逮捕され、 そのうち1名は1年2ヶ月、3名は11ケ 月、2名は9ヶ月、1名は3ヶ月間勾留されました。現在は、全員が釈放されま したが、検事は各組合役員に対して実刑を裁判で求めています。

 これらの逮捕・拘留は、威力業務妨害罪、強要未遂罪、政治資金規正法違反を 口実とするものです。一審の判決は、既に一審判決がでた政治資金規正法を除い て、2006年末から2007年の初めに行われると予想されます。また、警察 は現在もー連の事件の捜査を終結しておらず、新たな弾圧事件が引き起こされる 懸念が強くあります。

 これらの逮捕、長期の勾留、実刑求刑は、組合活動の弾圧のための口実以外の 何物でもありません。このことを示すために、事件の内容と私たちの見解をこの 手紙に添付しています。

 私たちの労働組合は中小企業と協力しながら中小企業協同組合の強化発展と労 働者の利益を実現してきました。これら中小企業の労働者の雇用と労働条件を守 るためには、中小企業の協同組合化を通じて経営の安定を図ることが必要だから です。そして、このような活動は正当な労働運動であると考えています。このこ とは1998年にILOが採択した「中小企業における雇用拡大に関する勧告」 の第12項の(f)、また16項の(2)、(3)にも示されています。さらに「協同組合 の推進に関する勧告 2002年」の14項ならびに16項にも示されています。 しかしながら警察と検察は、 私たちの活動を組合活動とは認めていません。

 また、警察と検察は、私たちの活動を強要未遂および威力業務妨害罪として、 刑事処罰を求めています。しかし、組合は暴行や脅迫、あるいは実力による業務 の妨害をしてはいません。中小企業の経営を安定させ、労働者の雇用と労働条件 を守るという、あまりに当然の労働組合活動が、警察や検察の恣意的な判断で強 要未遂罪あるいは威力業務妨害という名目で刑事罰の対象とされるならば、労働者・労働組合・組合活動の保護というILOの目的を否定し、歴史を逆転させるこ とになるでしょう。このような政府の行為は、ILO条約第87号第3条1項及 び2項の重大な侵害だと考えます。

 判決が今年末、あるいは来年早々に予想されることから、ILOとして日本政 府に対し、事実関係についての早急な説明を求められるように要請します。日本 の憲法では、条約は法律よりも上位の法的な効力を有すると解されており、結社 の自由委員会ならびにILO理事会の意見・勧告は、これらの裁判に重大な影響 を与えるべきものだと考えています。

 私は、ILOが日本政府に対し次のように勧告を下されるよう求めます。

1.ILO第87号条約の趣旨を尊重し、日本政府(警察と検察)が、私たち の労働組合に対する不当な弾圧を直ちに中止すること。

2.中小企業協同組合の強化発展と労働者の雇用を守るための私たちの労働組合活動に対し、日本政府(警察と検察)が、法令を濫用して不当な干渉を加えたり、予断と偏見をもって捜査対象としてはならない。

ILOの発展と、ILO事務総長の健康と活躍を祈念しています。

                   全日本建設運輸連帯労働組合

                中央執行委員長 長谷川武久

 追伸:本手紙のコピー並びに付属資料を以下の組織に送付します。

  1.日本労働組合総連合会

  2.ICFTU(国際自由労連)

  3.ITF(国際運輸労連)

 

申立に係わる事実関係

1.申立人組合

(1)申立人組合、全日本建設運輸連帯労働組合(SUCT=Solidarity Union of Japan Construction and Transport Workers)は、主に建設産業、及びセメント、生コン、骨材などの建設資材輸送産業の労働者を組織する労働組合で ある。

  連帯労組は、日本の17都府県に支部を持っており、300カ所余りの  事業所に働くおよそ4,500人の労働者が加入している。

  連帯労組は日本の労働組合としては例外的な産業別労働組合である。 日本の労働組合は大多数が企業別に組織されているので企業に対する帰属意識が強いが、連帯労組は企業のワクをこえた労働者の連帯が強い点に組織的特徴がある。

  連帯労組は、いずれのナショナルセンターにも所属しない独立組合である。ただし、産業別協議会組織である交運労協(Japanese Council of Transport  workers' Unions)に加盟しており、交運労協を通じて国際運輸労連(ITF)に加盟している。

(2)連帯労組の下部組織のひとつに全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(KANSAlBranch ready−mixed concreteworkers union of SUCT=SUCT kanSai)がある。

  関西地区生コン支部は、日本第2の都市、大阪市を中心にした関西地方 の生コン労働者を主に組織する支部で、1,500人余りが所属す る連帯労組最大の支部である。

2.申立人組合の団結権を侵害する日本政府の弾圧の実態

(1)2005年1月いらい、日本政府は関西地区生コン支部の潰滅を意図し  て、次のような弾圧を立て続けに加えた。

  第1事件は、2005年1月13日におきた。大阪府警察が関西地区生コン支部の武建一委員長をはじめ組合役員4人を逮捕したもので、同年2  月2日、大阪地方検察庁は全員を起訴した。被疑事実は、関西地区生コン  支部が大阪府下の生コン会社に対し、業者団体である協同組合への加入を  働きかけた活動が強要未遂と威力業務妨害にあたるとしたものである。

  第2事件は、同年3月9日におきた。大阪府警察が、前記事件で勾留中  だった武建一委員長ほか1人を再逮捕したうえ、新たに2人の組合役員を  逮捕し、同年3月29日、大阪地方検察庁は4人全員を起訴した。被疑事実は、第1事件と同様の構図で、関西地区生コン支部が第1事件とは別の 大阪府下の生コン会社に対し、業者団体である協同組合への加入を働きか けた活動が強要未遂と威力業務妨害にあたるとしたものであった。

 第3事件は、同年12月におきた。12月8日、大阪府警察が、関西地 区生コン支部の組合員である戸田ひさ よし市議を、さらに13日には武建 ・一委員長を相次いで逮捕した。被疑事実は、組合員有志が戸田ひさよしに 対し任意の選挙カンパを集めて渡したことが政治資金規正法違反にあたる としたもので、同月28日、大阪地方検察庁は2人とも起訴した。

 第4事件は、第1事件と同じ1月13日以降現在まで大阪府警が捜査を 続行中の事件である。武建一委員長が組合資金を中小企業に貸し付けたこ とが背任容疑にあたるとしたもの。組合事務所などが幾度も強制捜索され たが、逮捕者はまだ出ていない。

 これら全ての事件で組合が警察や検察から事前に任意の事情聴取を受け たことは一度もなく、全て抜き打ち逮捕だった。

 4つの事件で逮捕、起訴された組合役員及び職員は合計8人にものぼり、 逮捕された役員らの自宅や組合事務所など、のべ100カ所以上がくりか えし家宅捜索を受けた。

(2)警察と検察は、一連の事件が社会的な凶悪犯罪であるかのように演出するために、メスメディアに事前情報を与えて利用した。

 武委員長の逮捕は早朝6時前だったが、警察はTVや新聞を多数同行し、  わざわざ自宅玄関を出る瞬間の武委員長の顔を写し撮らせ、午前中のTV にニュース速報として報道させた。新聞紙上にも、「生コン組合、恐怖で支 配」、「生コン界のドン、逮捕」などと大見出しをつけた記事を武委員長の  顔写真入りで立て続けに掲載させた。

  戸田 ひさよし市議の場合も、市職員から議会提出議案の説明を受けてい る時間帯を見計らって議員控室を襲い、わざわざ多数の市民が見ている前 でさらし者にして逮捕したのである。

(3)武委員長ら6人の組合役員は不当逮捕に抗議して黙秘権を行使したため、 保釈されず勾留が続いた。

 第1事件は4月7日に第1回公判が始まり、第2事件も5月23日に第 1回公判が始まった。武委員長らは無罪を主張し、事件全体が関西地区生  コン支部の正当な組合活動を妨害するために仕組まれた政府の弾圧だと反  論した。  

  その結果、検察は武委員長ら6人の保釈を認めず、勾留を続けた。

 そればかりか、6人を政治犯として取扱った。拘置所の狭い独房に閉じ こめて、弁護士以外の者との面会を同年10月まで完全に禁止する措置を とったのである。(家族との面会も2005年10月までは1カ月に1回特 別に認められただけだった。)

 同年12月15日、武委員長を除く5人の組合役員がようやく保釈され た。第1事件で逮掃された組合役員は11カ月、第2事件の逮捕者は9カ 月もの長期間にわたり勾留されたことになる。

 この日、武委員長も5人の組合役員と一緒に保釈される予定だった。 し かし、警察と検察は保釈目前の12月13日、第3事件を理由にして三度 逮捕した。保釈されたのは翌年の2006年3月8日になってであり、不 当な勾留期間は実に1年2カ月にも及んだ。

 第3事件で逮捕された戸田市議が保釈されたのも同じく2006年3月 8日で、勾留期間は3カ月に及んだ。

(4)逮捕された組合役員らに対し、警察と検察は弾圧の目的をきわめて率直に語っていた。

 たとえば、大阪地方検察庁の大口康郎検事は武建一委員長に対し、「委員 長、60才も過ぎたことだし、そろそろ引退してはいかがですか?」と退  任を迫った。

 宮本健志検事も武谷新書執行委員に対し、「今回の事件で武委員長には引 退してもらう。誰が跡を継ぐのか知らないが、武委員長の方針は現在では 通用しない」と豪語した。(2005年1月20日14日から大阪地方検察庁の検事室で行った第2回検察官調べで)

 大阪府警の奥西警部補も福島聡執行委員に対し、「これから裁判になるだろうけれど、無罪だろうが有罪だろうが自分たちには関係ない。君らを1 年ぐらい社会から切り離しておけたら、(警察は)いいんだ」と発言した。 (同年1月14日、裁判所の勾留理由開示公判に向かう車中で)

 これらの発言は、一連の弾圧事件が、指導者である武委員長の社会的信  用を貶めて政治生命を奪うこと、武委員長ら主要な組合役員を長期間勾留することによって、関西地区生コン支部がとりくんでいた正当な労働組合活動を妨げ、ついには組織そのものを潰滅させること意図して仕組まれたことを示している。

(5)第1事件と第2事件は裁判手続において併合され、本年6月22日に検 察が論告求刑を行い、9月25日弁護側の最終弁論を経て、今年末もしく は来年初めに判決が下される見込みである。

 

 第3事件は、今年8月24日に大阪地方裁判所で有罪判決(罰金刑)が  下された。日本では最近、政権与党の大物政治家らが歯科医師団体から1億円単位のヤミ献金を受け取っても逮捕も起訴もされず、市民の批判が集まったが、これとは対照的に、わずかな選挙カンパを組合員有志が集めて  渡した事件が有罪とされたのである。

3.弾圧事件の背景事情と警察・検察の団結権侵害行為

(1)日本の生コン産業は1950年代前半に生まれた。セメントメーカーが  販路拡張の手段と位置づけて育成し、日本が経験した高度経済成長ととも  に急速に膨張した。

 しかし、時代が変わり低成長期に移行しても、セメントメーカーは市場 シェア維持のために生コン工場を削減しようとしなかったので、生コン産  業は現在でも全国各地に4,700工場が乱立する慢性的な供給過剰に悩  まされている。しかも、生コン産業は資本金1億円未満、労働者数100人以下の零細企業が95%以上を占める中小企業産業である。

 こうした脆弱な経営基盤と過当競争構造のために、生コン業者は買い手の建設会社からダンピング販売など絶えず不平等な取引を強いられている。

 その結果、生コン業者の経営と労働者の雇用は絶えず不安定な状態に置かれている。また、過当競争構造は生コンの品質管理の手抜きを生む原因と  もなっており、近年、地震大国日本の市民の安全を脅かす社会問題にもなっている。

(2)生コン産業が日本で誕生した当時の労働者の労働条件は劣悪だった。

 1960年代に入って、労働者が労働組合が結成するようになると、産  業を実質的に支配するセメントメーカーが労働組合つぶしをしばしば直接に指導し、懐柔・脱退工作や組織分裂、暴力団を雇った組織破壊攻撃がく  りかえされ、解雇や不当労働行為に反対する労働争議に警察が介入して組  合役員が逮捕される弾圧事件もくりかえされた。

  関西地区生コン支部の活動に対し、セメントメーカーと日本政府は様々  な弾圧攻撃をかけた。これまでに、2人の組合員が企業が雇ったヤクザに  殺害されたし、武建一委員長自身、過去5回にわたり殺されかけた。また、1980年代初頭には、日本の独占資本の労務対策機関、日経連の大槻文  平会長の指令に基づいて10数件の刑事弾圧事件が加えられたことがある。

  しかし、関西地区生コン支部は不屈にたたかい、弾圧をはねかえした。

  関西地区生コン支部は、こうした弾圧に屈することなく、労働条件をめざましく改善し、組織を発展させることに成功した。前項で示した生コン 産業の構造的特質をみれば、日本では一般的方式である企業別労働組合や 個別の事業主との労働協約が有効でないことは明白である。関西地区生コ ン支部が発展したのは、企業のワクをこえた産業別労働協約の締結を発足 当初からめざし、業者団体との団体交渉権の確立に成功したからであった。 現在、関西地区生コン支部の組合員の標準的労働条件は、1日7時間労働、 完全週休2日制年収は700万円台(公務員水準)、65才定年制で、地 域の業者団体との間で、労働組合活動の保障、組合員の優先雇用協定、倒 産・廃業に伴う雇用協定などを締結している。

(3)関西地区生コン支部は同時に、生コン産業の過当競争構造を是正するた  めの産業政策活動を早くからリードしてきた。

 生コン産業の過当競争構造を改善するために、日本政府の通商産業省は 1970年代に「協同組合の組織化」を奨励したことがある。中小企業協 同組合は、経済的には社会的弱者である中小企業が団結し、共同受注、共 同販売、共同購入などの共同事業を行うことを目的にしており、これら活 動は法的保護を受けている。建設会社による買い叩きに対抗するために、 独占禁止法の適用除外指定を受けて価格カルテルを結成することもできる。

 しかし、安値で生コンを購入したい建設会社や、生コン工場を販路拡張の手段として利用したいセメントメーカーは、中小企業の団結と協同組合の組織化を徹底して嫌った。そして、協同組合の活動を形がい化させたり、産業全体が供給過剰であるにもかかわらず、協同組合に加盟しないアウトサイダー業者を新設させたりした。その結果、生コン産業では形式的な協  同組合は多数存在しているが、実質的機能をもつ協同組合は稀である。

(4)関西地区生コン支部は、日本でも有数の需要地である大阪地方で、こう  した現状を打開すべく、協同組合の組織強化を自らの課題と位置づけて活動してきたのである

 1990年代初頭、大阪地方は深刻な不況に直面した。当時の協同組合  の組織率は低く、価格形成機能を持てずにいた。建設会社は協同組合に加  入しない業者(アウトサイダー)を利用して買い叩いたので、生コンの販売価格は標準製品で1立方b当たり9,000円台にまで下落し、原価水準(約12,000円)も割り込んでいた。このため50社近い生コン工  場が倒産、閉鎖、廃業に追い込まれ、多くの労働者が失業した。品質管理を手抜きした欠陥生コンも多数流通し、社会問題となった。

  この事態に直面した協同組合と関西地区生コン支部は協同組合の組織化  と機能強化を共通の課題としてとりくむことで合意した。1996年、大 阪地方に4つ存在した協同組合が合併し、地域全体をカバーする大阪広域 生コン協同組合が新たに発足した。以後、関西地区生コン支部のリーダー シップと活動によって協同組合未加入のアウトサイダーが続々と協同組合 に加入した。その結果、1998年頃には、生コン販売価格は適正水準の 14,300円に改善することに成功したほか、建設会社との取引条件も 順次改善された。弾圧が始まった当時、生コン産業に携わる経営者のモラ ルを向上させると同時に、生コン労働者の技能向上を図ることを目的とし た職業訓練学校も、設立目前だった。

 中小企業と労働組合の協力関係によって成功した大阪の試みは、200 0年代にはいると「大阪方式」として各地の生コン業界に広がった。さら に、生コン業界と同じ中小企業産業で、同様の過当競争構造に悩むセメン ト輸送業界やコンクリート圧送業界にも「大阪方式」は広がっていった。

(5)一連の事件のうち、第1事件と第2事件は、関西地区生コン支部が以上 のような産業政策活動の一環として、大阪広域生コン協同組合に加入して いないアウトサイダー業者に加入を働きかけたことを強要未遂や威力業務  妨害としたものである。

 産業別労働組合が、中小企業の経営安定と雇用の安定、さらには欠陥生 コンを根絶して市民に安定した生コンを供給するために活動するのは当然 である。しかも、二つの事件で強要を受けたと主張した生コン業者らは、 関西地区生コン支部に対して協同組合加盟を約束し、関西地区生コン支部 が両社の保証人となって推薦状を提出していたという経緯も存在している。

 それにもかかわらず、警察と検察は関西地区生コン支部の正当な労働組 合活動を無理矢理に刑事事件に仕立て上げ、成功裏に前進してきた運動をとん挫させた。同時に、指導者である武委員長の政治生命の抹殺と組織潰滅を企図して長期勾留を続けたのである。

 警察と検察の行動は、生コン業界の健全化を嫌う建設会社とセメントメーカーの利害を代弁したものであるといわざるをえない。

(6)警察は、一連の逮捕劇に着手する直前に、 「関西地区生コン支部の組織実態について」 と題する調書を作成し、の ちに これを裁判所に証拠資料として提出した。 警察はその書面において、関西地区生コン支部を指して「一 般的な労働組合とは一線を画した、悪質な労働組合である」と非難してい る。(証拠目録請求番号甲79号大阪府警本部警備部公安第一課 司法警 察員櫻井俊伸作成の2004年11月18日付「関西地区生コン支部の組 織実態について」)。

 また、検察も第1事件と第2次事件の冒頭陳述で、「被告人武は、独裁体 制により組織を運営してきた」と決めつけている。さらに、これら事件の 本質は、「広域協組を支配することにより、実質的に大阪府下における生コ ン流通のすべてを支配する(それにより広域協組にもたらされる利益を貪る)ことを目指していた」ことにあると口汚く非難している。(大阪地方検 察庁 検察官検事 北川健太郎外3人による2005年4月7日付冒頭陳 述書)

 しかし、これらは何ら事実に基づかない的はずれな非難にすぎない。

 大多数の日本の労働組合の現状を指して、企業別労働組合であるがため に企業に従順で抵抗力を持たず加盟労働者の権利すら守れない、しかも企 業犯罪を監視、規制する能力も持っていない、もはや社会的存在意義が失 われているとまで、各界の識者や言論機関から厳しく批判されているのは 周知の事実である。そういった労働組合を「一般的」だとし、反対に、そ ういった警察の一般的労働組合のイメージから外れる関西地区生コン支部 は「悪質」だと決めつけることは到底許されない。

 また、関西地区生コン支部は、適法な手続を経て召集された定期大会に おいて、日本の労働組合法に合致すると認証を得た組合規約に基づいて、 適法かつ民主主義的手続による役員選挙を行って武建一委員長をはじめと した執行部を選出している。その事実を無視して独裁体制などと非難する 権利が国家権力機関にあるはずもない。

 さらに、何ら具体的事実に基づかずに、中小企業と労働組合の血の滲む ような努力で築いてきた運動を指して、あたかも私的利益の追求のための 活動だなどと評論するに至っては、生コン産業に携わる全ての中小企業と 労働者に対する、権力を笠に着た冒涜行為だと言わねばならない。  これら警察と検察の暴言は、まさしく一連の事件が自由な結社と団結権 を侵害する弾圧に他ならないことを物語る証拠なのである。

以 上

 

 

 

<参考>

  結社の自由及び団結権の保護に関する条約(ILO第87号条約)
                        (日本は1965年6月14日批准)


 国際労働機関の総会は、 理事会によりサン・フランシスコに招集されて、1948年6月17日にその第31回 会期として会合し、
この会期の議事日程の第七議題である結社の自由及び団結権の保護に関する提案を条約 の形式により採択することを決定し、国際労働機関憲章の前文が、「結社の自由の原則の承認」は労働条件を改善し、かつ、 平和を確立する手段であると宣言していることを考慮し、フィラデルフィア宣言が、「表現及び結社の自由は不断の進歩のために欠くことができ ない」ことを再確認していることを考慮し、国際労働総会が、その第30回会期において、国際的規制の基礎となる原則を全会一致 で採択したことを考慮し、  国際連合総会が、その第2回会期において、この原則を承認し、かつ、一文はニ以上の 国際条約を採択することができるようにあらゆる努力を続けることを国際労働機関に要請 したことを考慮して、  次の条約(引用に際しては、1948年の結社の自由及び団結権保護条約と称すること ができる)

第一部 結社の自由

第1条

 この条約の適用を受ける国際労働機関の各加盟国は、次の諸規定を実施することを約束 する。

第2条

 労働者及び使用者は、事前の許可を受けることなしに、自ら選択する団体を設立し、及 びその団体の規約に従うことのみを条件としてこれに加入する権利をいかなる差別もなし に有する。

第3条

1 労働者団体及び使用者団体は、その規約及び規則を作成し、自由にその代表者を選び、その管理及び活動について定め、並びにその計画を策定する権利を有する。

2 公の機関は、この権利を制限し又はこの権利の合法的な行使を妨げるようないかなる  干渉をも差し控えなければならない。 第4条  労働者団体及び使用者団体は、行政的権限によって解散させられ又はその活動を停止さ せられてはならない。

(以下、略)