意見陳述書

大阪地方裁判所御中


平成16年(ワ)第8499号国費支出差し止め・損害賠償請求事件について、下記の通り意見を述べます。

2004年10月28日
原告戸田久和(ひさよし)

 私は秋田県の共働き教員の長男として生まれ、大阪に出て大学を卒業したあとはトラックの運転手や作業員など一貫して中小零細企業の肉体労働の現場で働き、1999年より大阪 府門真市市議会議員となり、2003年9月よりは「連帯ユニオン」近畿地本の執行委員長に も就任し、現在48歳です。

 私が本件訴訟を起こした理由は、自衛隊のイラク派遣がアメリカの不当な侵略戦争と占領に加担するもので、憲法にも自衛隊法にも明白に違反しているだけでなく、自衛隊の派 遣駐留費用が国費の膨大な無駄遣いである、ということがあります。
私達がこの訴訟を「イラク派兵反対関西ゼニカネ訴訟」と名付けたのも、理念だけでな く現実的なお金の使い方の問題として、裁判官はじめ多くの人々に実感を持って考えても らいたいからです。


 今、各地の自治体では心ある首長や議員、市民によって、従来慣例的に出してきた費用 対効果の釣り合わない支出の削減や見直しが進められています。それは例えば議員の出席手当や視察費用であったり、談合価格が横行する公共工事入札 だったり、全国一律の補助基準に縛られた道路・施設建設だったり、補助金や助成金の出 し方やNPOの活用だったり、広く様々な方面に及びます。ちなみに地方自治法第2条14項には「最小限の経費で最大限の効果を上げるようにしな ければならない」と明記されております。

 然るに、本件自衛隊派兵の場合はどうでありましょうか。
 訴状にあるように、給水活動にかける費用と効果において4000倍の違いがあるというこ とは、NPOなら100円で作れる水が自衛隊の場合は40万円につくということだし、実際 に作業する自衛隊員1人あたりの費用でイラク人280名が雇えます。 
 
これは、不当な軍事占領下に実質的にはあるイラクに、日本から武装した自衛隊を派遣 するが故に不可避的に起こる非効率であり、人道支援だけを真面目に考えるならば、給水 設備などの寄贈と現地の人の雇用のためにお金を支出することに留める方が、何百倍何千 倍も効果があることなのです。

  しかもそれだけはありません。自衛隊派兵は、日本国民・在日外国人をも含めた日本住 民に身の上にふりかかる危険を現実的飛躍的に増大させるという性質を持っています。
  日本国民はイラクだけでなく海外のどこにあっても国際的なレジスタンスやいわゆる 「テロ」や誘拐の標的になる危険性が高まったし、日本国内すらその危険の対象となっていることは政府自らが喧伝していることであります。

  いったいこのような血税の支出が許されて良いものでしょうか。「財政難」にあえぐ自治 体現場の状況を、庶民の苦しい生活状況を知る者として、本当に腸わたが煮えくりかえる思いです。
  裁判官諸氏には、どうかこういった現実をしっかり見据えて審理を進めていただきたい と切望いたします。